第4章 プレゼント
先輩にお詫びをしてから数日後。僕は翔と一緒にオカ研の部室にいた。先輩はちょっと用事があるみたいで、後で部室に来ることになっている。
「あっ、忘れてた。そういえばお前に渡したいものがあるんだった。」
論文を読んでいた翔は、そう言って自分の鞄から小さな袋を取り出す。何だろう?袋の大きさ的に小物だろうか。
「僕に渡したい……ってなにこれ?小物みたいだけど、もしかしてプレゼント?」
「別にプレゼントじゃないけど、いいから開けてみ。」
翔がプレゼントをくれるなんて珍しい。というか初めてじゃないかな?一体なんだろうと思いつつ袋を開けると、そこには大きすぎず小さすぎない黒いシンプルな眼帯が入っていた。
「ほら、お前のその右目。先輩に油跳ねの怪我って説明したんだろ?だから、お前と先輩が好きそうなデザインの眼帯が“たまたま”あったから買ったんだよ。いつまでもアイパッチだと格好がつかないだろうし、それを付けてたらお前の話とも整合性が取れるだろ?」
「うわ〜、メッチャ嬉しい!カッコイイ!早速付けてみる!」
そう言って部室の鏡の前に移動し、眼帯を付けてみた。僕の予想どおり翔のくれた眼帯はちょうどいい大きさで、今までどおり右目を前髪で覆うようにしていたら付けているとは分からないだろうし、紐も全部髪で隠れるくらい細い。何より、シンプルなデザインが完全に僕好みの眼帯だ。
「最高だよ!翔、ありがとうな!」
「……別に。お前をフォローするって決めたのは俺だし、改めての復活祝いみたいなもんだよ。」
そう言ってそっぽを向いた翔の耳は、照れているのか少し赤くなっていた。素直じゃないな〜、まったく。
「ごめ〜ん、二人ともお待たせ〜……って、うわぁぁぁ!陽ちゃんがカッコよくなってるー!!」
ちょうど遅れてきた先輩も、部室の扉を開けた瞬間にリアクションを返してくれた。そういう先輩もかわいいですね。
「先輩、これ翔が僕のために買ってくれたんですよ。いいでしょ〜。」
「へ〜、カケルっちが買ってくれたんだ〜。へ〜、ほ〜、ふぅ〜ん。」
僕と先輩はニヤニヤと翔の方を見る。さすがに耐えきれなくなったのか翔がプルプルと震えだし、顔を赤くしながら声を荒らげた。
「あーっ!もううっさいなぁ!」
「あっははははは!カケルっちが怒った〜!」
「ごめん、ごめん。そんな怒んなって〜。」
いつも通りの、僕たちの日常が流れていく。確かに僕自身は、前よりも不便になったかもしれないけど、こうして変わらず笑い合える仲間がいる。それが僕にとってはたまらなく嬉しく、そして幸せだった。誰にも……たとえ悪魔にも、この幸せだけは奪われたくない、そう思った。




