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【完結済】伯爵令嬢は初夜で偽装結婚宣言される ~旦那様あなたなんて大嫌いです~  作者: 米野雪子


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15/20

噂の調査と真相




「旦那様、奥様が本当にそんな事をすると、思っておられるのですか?」


「分かっている。彼女がするはずがない。

 だが、告訴されたものは、どんな案件だろうと平等に検証する必要がある」


「せめて、信じていると一言でもおっしゃっていれば、

 当人の心持ちも違うと思いますが…あの言い方は少々冷たいというか…

 奥様は疑われていると、感じたと思います」


「…大丈夫だ。彼女は賢い。

 私が仕事でやっているのは理解しているだろう」


「ですが…奥様が冤罪だとしても、この噂は広がり過ぎています。

 もし、公爵令嬢の目的が奥様の評判を落とすのが目的なら、

 もう充分影響が出ています。

 挽回するにしても…公爵家相手に出来るのですか?」


「分かっている…私の責任だ。

 公爵令嬢の怨恨を知っていたのに放置して、

 その矛先がマーガレットに向かってしまったのだろう。

 調査で証拠を集めて冤罪を証明する。心配するな」


家令にまた、注意を受けてしまった。

私はそんなに冷たい対応だっただろうか…

とりあえず彼女の無実を1日でも早く証明しなくては。




* * * * * * *




私が私室で謹慎していると、

商会長が訪ねてきて近況を報告してくれた。


「宿舎と邸の建築も、中断されているそうですね。

 私事で、ご迷惑をおかけして申し訳ありません」


「侯爵夫人は何も悪くありません。

 取引しているレースアクセサリーも変わらず売れていますし、

 大した影響は出ていませんよ。

 今回の件は悪意を持っている者の仕業ですし…お気の毒としか思えません」


「いえ、もう少し周りに気を配るべきでした。

 貴族は、こういう下らない嫌がらせは良くあるのです。

 社交を疎かにして、領地経営に集中しすぎて油断してしまった…

 私の落ち度です」


「ラディアナ公爵令嬢の件は、逆恨みでしょう?

 それに、侯爵夫人が関わり会う前のことです」


「そう、なんですが…」


「私の商会の皆も侯爵夫人の味方です。トービの栽培もうまく行きましたし、

 これから可能性が広がっているのですよ?

 でも、それは侯爵夫人がいなくては実現できません。

 大丈夫です。冤罪なのですから堂々としていてください」


「…ありがとう、ございます…そうですね。

 終わったら領地開発がまだまだありますのもの…色々考察しながら

 少し長い休暇と割り切って、今しかできない事をします」


「そうですよ、やれる事は沢山あります。どうぞ我々にも手伝わせてください」


私は、紙とペンを引っ張り出し、

領地の開発計画を書き出すことにした。




* * * * * * *




「はあ…」


トントンと机上の書類を指で叩きながら、ため息を吐く。


どう調査しても、公爵令嬢と被害者の娘の証言以外の

証拠や疑わしい事実は、出てこなかった。


身内の調査だから平等を要する為、他の文官にも調査をお願いしているが、

そちらも同じだった。


マーガレットのスケジュールを見ても、

どう考察しても、そんな斡旋をしているような時間があるように思えないし、

怪しげな人物との接触もない。

常に侍女と護衛騎士が同行しており、その二人からも冤罪だと強く抗議された。


噂を広げたのは被害者の娘キャリー。証拠は証言のみ。

助けて保護したラディアナ公爵令嬢が、娘に何かをさせているのは間違いない。

大体、平民の子供を保護するなど、あの公爵令嬢の性格からしてあり得ない。


気になる点は、娘の母親は重い病にかかっており、

最近家で見かけなくなったと、近所の住民の聞き込みで分かっている。

これは、母親の行方を探した方がいいな…。




* * * * * * *




「司祭様、私…いつまで、ここにいればいいんでしょう?」


「大事な証人だからね。保護してるんだよ。

 君と公爵令嬢が告発した件が調査中だから、

 結果が出るまで一週間くらいだね」


「そ、そんなに…」


「ところで、本当にアーディヴェルテ侯爵夫人が…

 いや、君たちにとってはマーガレット先生だな。

 彼女が本当に、そんな事を君に強要したのかい?」


「は、はいっ!…怖くて困っていたら、ラディアナ公爵令嬢が、

 助けてくださったんです」


「いつ、どこで?」


「え…と…働いている市場の裏の道で、斡旋場所に行こうとしている時に…」

 

「おかしいね。ラディアナ公爵令嬢は、

 そんな場所に来るような人じゃないんだけど。

 公爵邸からも随分離れているし。何しに来ていたんだろう?

 知っているかい?」


「い、いえ。そこまでは…偶然だったので…」


「他に、その現場を見た人は?」


「いません…私と公爵令嬢だけでした…」


「ふーん。あんな、いつも人がごった返している所で?

 お付きの侍女や従者と護衛騎士は?」


「え、あ…多分、離れた所に居たと思います…」



一目でわかる。彼女は嘘をついている。

まだこの子は子供だ。

姿を消した母親の行方が気になる。

追い詰めるみたいで可哀想だが、少し揺さぶってみるか。



「ところでキャリー、お母さんは元気かい?

 君がこんなことになって、さぞ心配してるだろう」


「あ、えと…今は遠い病院にいます」


「病院?よくそんな余裕があったね。臨時収入でもあったかな?」


「はい、あの、ラディアナ公爵令嬢が、

 私の事情を知って手を差し伸べてくれました」


「それは売春斡旋の前?後?」


「前……あっ、違います。間違えました。あ、後です!」


「どうして?いくら同情したからと言って、君のお母さんの病気の治癒を

 申し出てくれたの?そんな義理はないだろう?」


「売春斡旋を受けようとするほど、困っているならとっ…それでっ…」


「そうか。優しいんだね。

 お母さんは、随分前から家に居ないって、近所の人たちが言っていたけど、

 どこの病院に行ったんだい?」


「…えっ、あの………え…と…その………」



なるほど、良く考えられたシナリオだ。

質疑応答も覚えさせられたのだろう。

だが、流石にこれだけ詰められればボロが出てくる。



「ねえ、キャリー。

 マーガレット先生は否認しているが、今罪に問われて追い詰められている。

 公爵家は高位貴族で、王家の為政にも参加できる権力者だ。

 このままでは、あの優しい人が罪人に仕立て挙げられてしまうかもしれない」


「罪人?」


「うん。売春斡旋は非常に重い罪だ。

 しかも、孤児院を隠蓑にして児童売春斡旋など、

 児童福祉法違反も含まれ、最悪死罪になる」


「え……」


「でも、君が言う通り、本当だから仕方ないんだよね?」


「死…罪…?」


「そう。民衆の前で、縛り首の公開処刑になる」


「っ、……そ…んなっ……」


ガタガタと両手を祈るように握り締め、

目に涙を浮かべながら、キャリーは震え出した。

そして、すがるような瞳をこちらに向ける。



「…し、司祭さまっ!…あ、あ、あのっ…私っ、懺悔します!」



そして、被害者の娘キャリーは、

祈りの時間で訪れた司祭に嘘の証言を懺悔した。

良心の呵責に耐えられず、泣き出して謝り、真相を語り始めた。


言う通りにすれば、重病の母親を高度な医療設備の病院に入院させて、

完治させてやる。指示通りの証言をするだけでいい。

そう持ちかけられたそうだ。


公爵令嬢の侍女が伝達係として、何度も接触して指示があった。


母親の病気の完治だけに、気を取られていたキャリーは、

無料教室で、いつも笑顔で優しくしてくれた、

マーガレット先生を陥れる計画に加担した現実をやっと実感して、

その罪深さに恐れ慄いていた。


次の日、公爵家に捜査が入った。


公爵令嬢は最後まで知らぬ存ぜぬで押し通したが、

協力者の侍女が耐えられずに全て白状した。


そして、母親は町外れの病院に預けてあると証言。

無事発見されたが、まだ治癒はされておらず、

息も絶え絶えの危ない状態だったそうだ。



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