旦那様の気遣いと妻の絶望
「彼女は、子供が好きなのだろうか…」
「はい?どうしました?旦那様」
「ああ、いや…マーガレットが、孤児院支援をしているだろう?」
「はい、大変ご立派な慈善事業です」
「それは勿論なのだが、子供を相手にしている時の顔が全然違うのだ。
私が見たことない笑顔で、楽しげにしていた」
「奥様に直接お聞きすれば、いいのではないでしょうか?」
「彼女に?」
「はい。お二人は会話が、圧倒的に足りてないです」
「そうだな、仕事も繁忙期は過ぎたし、もう少し時間を作ろう」
遅い時間に帰宅して、紅茶を飲みながら家令と話していて、
彼女が子供が好きなら、甥に合わせるのもいいと思い当たった。
将来的に、この領地も譲渡し領主になる子だ。
彼女とも知り合いになれた方がいいだろう。
* * * * * * *
領地のことで相談があると、旦那様に朝食時言うと、
では、せっかくだから、たまに庭の東屋で茶会をしようと、
家令と組んで強引に約束を取り付けられた。
本当は行きたくなかったが、領地の話もしなくてはならない。
時間になり侍女を伴い東屋に向かうと、
旦那様と知らない子供が着席して待っていた。
「申し訳ありません。遅くなりました…」
「ああ、大丈夫だ。こちらが早く来すぎてしまった」
知らない子供は、旦那様の血縁なのだろう。
銀髪の碧眼でよく似ていた。並んでいると、まるで親子のよう。
旦那様は優雅に立ち上がり、その子供はピョンと無邪気に椅子から降りた。
「前に話していただろう?私の甥だ」
「はじめまして、ジュリアス・キール・アーディヴェルテと申します。
叔父様の奥様に、お会いできるのを楽しみにしておりました」
「…はじめまして、マーガレットです」
「僕のことはジュリアスって呼んでください!」
「君は、子供が好きそうだったから連れてきたんだ。
それに、将来的にここの領主にもなる子だから
顔を合わせた方がいいと思ってね」
「そう、ですか…」
この人、
どこまで私を馬鹿にする気なの?
私に子供を持つなと言ったその口で、その原因の甥に会って欲しい?
どういうつもり?
子供を持てない私は、将来の領主に傅けと?
分かっている。
その甥っ子に罪はない。
これは、私たちの問題だ。
震える手と引きつる笑顔で、椅子になんとか着席した。
結果的に茶会は平和に終わった。
甥のジュリアス自身は活発で賢い子だったし、好感も持ったし楽しかった。
隣で満足げに微笑む旦那様以外は。
何とか住居建築の許可も無事もぎ取り、
私は自立計画を早めた。




