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楳ノ谷汀、床に臥す

〈零余子入荷八百屋貼紙秋也哉・むかごにふかやほやはりがみあきなりや 涙次〉



【ⅰ】


金尾が無期謹慎処分と云ふ(前回參照)事で、彼の仕事を一味の皆で分担し合はう、と決まつた。そんな譯で、杵塚、先日の「楳ノ谷汀アワー」、カンテラが見事偽ケルベロス-Xを射拔いたシーンに取材した回、の取材料を楳ノ谷から「集金」(一味は何でもキャッシュ決濟)するアポイントメントを取り付けた。金500萬圓也。一味は既に「魔界壊滅プロジェクト」から、この回の報奨金として300萬圓受け取つてゐる。が、決して守錢奴の行ひと同一視しないで慾しい。何せ命を賭けての仕事である。然も、カネにならない不毛な仕事も、一味相当にこなしてゐるのは、この物語を讀めば、分かる筈だ。杵塚、「愛馬」ヒョースンGV125ロードスターに跨つて、楳ノ谷のマンションへと向かつた。



【ⅱ】


「丁度良かつたわ。わたし杵くんに相談したい事があるのよ」-「何?」-「わたし、【魔】に取り憑かれてゐるわ」-杵塚ならずとも、こゝはずつこける場面である。「ち、ちよつと待つて。【魔】の自覺症狀なんて、聞いた事ないぞ。一體どうしたつての?」-「闇雲に不安。心が不安定。物に当たりたくなる。大事にしてたマイセンのティーセット、滅茶苦茶に割つてしまつたわ」-「それつて心療内科の領域ぢやない?」-「勿論、クリニックには通つてゐます。だけど先生も、この際知らぬ仲でなし、カンテラ氏に頼つてみては? つて云ふのよ。その先生、超心理學にも詳しくて」-「ふーむ」



【ⅲ】


「醫者に勧められて、依頼して來る、と云ふ依頼人は、今までゐなかつた譯ぢやあない。いゝよ、楳ノ谷女史に付き合つてあげる」-とカンテラ。「カンさん濟みません。『ゲーマー』と勝負してゐる最中に」-「いや、だからと云つて、一般の依頼を疎かには出來ないよ。こゝは、女史に御足勞願はう。タロウもアップデートした事だし」さう、タロウは前回の如き失敗を繰り返さぬやう、ヴァージョンアップされた。ロボットとは云へ、元となつてゐるのは犬である。安保さん苦心の工夫で、【魔】の發する「臭ひ」を嗅ぎ取れる嗅覺が、タロウに齎された。



※※※※


〈心中者生き殘りたれば非人とす江戸の刑罰尤もなりき 平手みき〉



【ⅳ】


タロウは吠えた。やはり楳ノ谷、【魔】の臭ひを發散してゐた。憑依した【魔】が拒絶叛應を起こしてゐるのか、結界の中では楳ノ谷、ぐつたりとしてゐる。「だうやら憑いてゐるやうだ。俺がこゝで祓へば濟むんぢやないかな?」-*「聖水」、エクソシスト・薩田祥夫から定期的に頒けて貰つてゐる- を楳ノ谷の頭に振り掛ける。だが... 無叛應。「あれ、こりやあ...?」

「杵、『開發センター』行くぞ。バイク出してくれ」-「ラジャー」今度は、車格の大きなアプリリア・SR-GT200。專らタンデム用に使つてゐる、スポーツスクーター。



* 当該シリーズ第97話參照。



【ⅴ】


カンテラ、「方丈」で水晶玉を覗いてみた。無論、「ゲーマー」の只今の行狀を視る為に、である。恐れてゐた事が、二度的中した。いつか「聖水」の効かない【魔】が現れる事、そして「ゲーマー」が煙幕を張り、水晶玉の魔術が効かなくなる事。「糞! 折角『方丈』に迄來たが、【魔】の正體が摑めん-」-「杵、帰つて女史をベッドに寢かし付けてくれ。俺は『ゲーマー』と直談判して來る!」-「ラジャー」



【ⅵ】


(これはきつと「ポイント對象」の【魔】に違いない。普通の【魔】と手應へが違ふ)-さて、楳ノ谷に憑依した【魔】、一體何なのか... 最初は、所謂「雑魚【魔】」だらうと思つたが、早計だつた。意外に複雜なキャラクターを持つた【魔】なやうだ。楳ノ谷女史に、惡い影響を殘さねばよいが-



※※※※


〈髭剃りて褒められたるは秋淋し 涙次〉



果てさて、何ポイント付くのか、これは意外にもポイント數が多い一件ぢやないかな。カンテラ、さう思ひつ、次回に續く。ぢやまた。


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