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EP1-7 眠れる…

処理屋とはあらゆる問題もあらゆる事件も合理的に且つ確実に処理することを目的とする仕事のことで、ポピュラーではないものの、数多くの処理屋が世界には存在する。

そのため、ある程度危険な仕事に携わっている者(裏の仕事など)などには処理屋の存在は認知されているだろう

ちなみに田中達の師匠的存在であるマリアは世界的に有名な処理屋で時には政府や国家がらみの重大な仕事などもこなす一流の処理屋。

それに比べ田中達はまだ創設して実質一年にも満たない未熟な処理屋。

香のおかげである程度の仕事は入ってくるが、マリアのように世界的に有名なわけでもない。

三流どころか四流も危うい。

そんなぺーぺー丸出しな処理屋の交渉にこの街一帯を仕切る事務所が乗ってくるばずがないはずだが、事務所は交渉をする事を承諾。理由は香のおかげ。

一昨日からこの事務所のことを調べていてくれていて、この事務所が様々な違法を暴いていったのだ。

昨日は怒っていたものの夜遅くまで事務所について調べてくれたし、資料を渡してくれた時には田中の身を心配してくれたりして、香は本当にいいやつなんだと改めて確認。

そんな彼女のことをあんな風に扱ってしまったことを今更ながら後悔する。


人間は後悔する生き物である。

どっかの本に書かれてたなぁ。あれ?マリアさんが言ってたんだっけ?

何て考えながら朱奈を連れ事務所へ入る。

入り口近くの如何にも極道という男に要件を言って、少し待たされること数分。

三階の茶室のような場所に誘導される。

扉を開くとメガネをかけ、スーツ姿の男が待っていた。

実質上この事務所のトップらしい。入り口近くに居た男のような強さは感じさせないが、その目に宿る光からは危ない匂いがプンプンする。

さすがはトップ。

なんて思って立っていると、

「どうぞお座りください」

なんてメガネ男の座っている椅子のテーブルを挟んだ反対側の三人用のソファに座る様に先導される。

何かこの時点で三流振りをかもしだしている田中だがそんなの問題ではない。

何故なら見かけだけなら中学一年生、下手したら小学生に見える少女を連れてくる時点で仕事なめてんのかって感じだからである。

メガネは名刺を差し出しながら丁寧に挨拶。

「私はこの阿久根事務所に所属している伊東 醍醐と申します。」

少し朱奈を気にしながら話を続ける。

「この度の要件はこちらの老夫婦への脅迫を止める代わりに我々が法を犯していることを黙認してくれるということですか…」

「その通りです。あなた方にとってはデメリットはないはずですし、断っても良いことは何もないですよ」

田中は内心ドキドキしていた。

交渉なんてやったことなんてないし、もし決裂すれば事務所の人間に襲われる危険まであるのだから。

田中一人なら無傷で逃げる事も可能だが、今回は朱奈がいる。

正直、嫌でも置いてくれば良かったと今更ながら後悔する。

「確かにこの情報は全て真実。ええ…認めましょう。ここで嘘をつく理由もないですしね。それより心配なのはあなた方が本当に黙認してくれるのかということですが」

「安心してください。こちらもプロです。契約は守ります。」

「ふむ。なら断る理由はないですね」

といって契約書を持ってくるように部下に命令する伊東。

さらに持ってきた契約書にサインをする。

ここまでは順調。最終確認も終わり、今後あの老夫婦には危害も干渉も一切しないこれで終わるはずだった。

「お前!」

田中が相手方の契約書に穴がないか確認していると突然朱奈が伊東に向かって言い放つ。

「何だい?お嬢ちゃん。何か用かな?」

お前呼ばわりされたことなど意にも介せず、答える伊東。

そんな伊東に朱奈は語る。

「お前はちゃんとこの契約を守る気があるのか?」

「どうゆう意味だい?」

「私は正直、これではお前達が赦せない。無理矢理にでもあの二人に土下座させてやりたいぐらいだ。」

最早田中の牽制でも朱奈は止まらない。変なスイッチが入ってしまったようだ。

「だが、お前達がもう二人に関わらないと言うなら、田中とあの二人の優しさに免じて赦す。しかし!お前達からは嘘しか感じられない!ふざけるのも大概しろ!下衆が!」

「あはは…まったく何を言い出すかと思えば…」

伊東はそれでも笑っている。

けど、笑ってない。

田中は瞬時に理解。

「餓鬼が!」

伊東は突然動き出す。懐に手を入れ、引き抜いた時には既に手には拳銃が握られている。田中は拳銃のことなど知らないが少し見ればその拳銃が高い殺傷力を持っていることは理解できた。

「!!」

朱奈突然の出来事に身体がついていかない様でまるで動けていない。

そんな朱奈に凶悪な笑みを浮かべ、何の容赦もなく拳銃の引き金を引く。

田中は朱奈を弾丸から盾になる様に飛び付き朱奈を守る。

その背中にさらに弾丸がいくつもぶち込まれる。

その衝撃で部屋の中央から端まで吹き飛ばされる。

朱奈は飛ばされた田中を目で追い、そして血だらけで倒れている田中に駆け寄り、泣きながら田中の名前を叫ぶ。

それを見ながら更に凶悪な笑みを深める伊東。

「まったく餓鬼がしゃしゃり出るからそうなるんだよ。可哀想な青年…彼一人ならこんなことにはならなかったろうに」

銃声を聞き、部下が四人扉を開け、入ってくる。

この状況を見ても一切驚かない。こんな状況は慣れっこなのだろう。

「死体は燃やせ。女は生きたまま監禁。容姿は中々だし、変態は沢山いるし、幾らでも高く売れるだろう。」

「りょーかい」

めんどくさそうに返事をしながら、田中達に近く四人。

朱奈は田中の名前を叫んでいる。

泣き叫ぶ朱奈を黙らそうと一人が朱奈に手を伸ばす。

しかし、その手は勢いよく弾かれる。

手をみると、手は不自然な方向に曲がっている。

少し遅れて痛覚が反応。

激しい痛みにのたうち回る。

他の三人が床を転がり回る男から目を離し、朱奈のほうを見る。

朱奈は涙を流しながら一人の人物を見上げている。

立っているのは先程十何発もの銃弾を背中に受けた田中。

本来なら即死レベル。しかし、田中は立っていた。

超能力だと、他の三人はすぐに理解。

武器を取り出し、更に自慢の超能力を発動しようとする。


だが田中のほうが速かった。

瞬時に三人の懐に入り、屈強な男達を吹き飛ばしていく。

田中の体型からは想像できない力だ。

田中はチラリと朱奈のほうを見る。

思わず朱奈はゾクッとする。

田中の目には不気味な光が宿り、顔は朱奈が見たこともないほど残虐な笑みで顔を歪ませている。

田中ではない別人を朱奈は感じた。

田中は最初に腕を折り、痛みにのたうち回る男を気絶させ、伊東に迫る。

その時間四秒にも満たない。

「くっ!」

伊東は近づく田中に銃弾を撃ち込む。

しかし、銃弾は田中の身体にめり込みはするものの皮膚すら傷つけずに床に落ちる。

「ダメだな…その程度の殺意じゃ俺は殺せない…じゃあね。」

まるで子供のような無邪気な、しかし、残酷な笑顔で伊東の首に手をかける田中。

「悪かった。本当にあの老夫婦には何もしないから!ひっ!」

だんだんと手に力が込められてくる。

圧倒的な殺気に伊東は動けなくなる。

こんなはずではなかった…適当に契約したあとに老夫婦を殺し、あの土地を手に入れ新しい事務所を作って、更に勢力を広げて…

こんなはずではなかった。

伊東はもはや涙を流し、鼻水を流し顔には最初のクールな面影などどこにも残ってない。

そんな伊東を見て更に残酷な笑みを深める田中。

止めを刺そうとする田中の裾を朱奈が掴む。

「駄目だ!田中。やめてくれ!田中!」

朱奈の顔も涙でぐしゃぐしゃになっている。そんな朱奈の姿を少し振り返りながら田中は確認。

その目には不気味な光がまだ宿っているが伊東の首から手を離す。

伊東は倒れながら、余りの恐怖に漏らしてしまう。

それを見て、田中はまるで何かを抑え込むように頭を抱えながら、伊東に忠告。

「あの老夫婦に手を出せば、次は殺す!」

単なる脅しには聞こえないマジな声に伊東はさらに縮み上がる。

「行くよ。朱奈。」

なりべく平静にそれでもってなるべく優しく朱奈に喋りかける。








事務所を出ると、まず持ってきといたハンカチで朱奈の顔の涙を拭う。


また、やっちまったな…

何て思いながら朱奈の無事を確認し終えると、近くにあったベンチに座る。

銃弾を受けた背中は痛いが、まずは心を落ち着ける。


一通り落ち着くと、改めて朱奈の無事を確認する。

「だから付いてくんなっていったんだよ。怖かったろ?」

「ごっ…ご免なさい。」

朱奈は素直に謝る。

少し震えている。

まぁ無理もない…嫌なモノを見せてしまった。

また朱奈を連れてきたことを後悔する。

「ま、ケガがなくて良かったよ。ホント」

田中は朱奈を安心させようと朱奈の頭を撫でる。

最初はびくっとしたが、安心したのか田中に抱きつく。

すると朱奈は手に付いた温かいモノに気づく。

それを確認。

それは決して少なくはない血だった。

「田中!血が出ているぞ!」

「ああ…そんだな」

田中はまだ苦しそうに頭を抱えている。

「速く病院に行かなくては!死んでしまうぞ!速く!」

必死で促す朱奈を見て、田中の目にはまた不気味な光がちらついた。



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