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EP1-5 雨の日に

夢を見ていた。

降りしきる雨の中

その人は言った。

私は雨が好きなの。

ぽたっ、ぽたっって

静かで。

でもそれは気持ちがよくて

だから私は雨が好き。その人は私に笑ってそう言った。

私は雨が嫌いだった。太陽が見れなくなるし

遠矢やえりと外で遊べない。


あの人は私に言った。俺は雨が好きだ。

静かで、静かで

雨音が心地よくて

それに耳をすましてる間だけ、自分が何者か一時忘れさせてくれる。

だから俺は雨が好きだ。


だけど私は雨が嫌いだった。


その人もあの人も雨の日に殺された。

だから雨の日が嫌いだった…



ガバッっと勢いよく体を起こす。

夢か…

朱奈は時計に目をやる。

まだ朝の5時前。

他の三人はまだ寝てる。

田中の存在を確認すると何故かホッとした。

「ウヒヒヒ…」

和気が気のない笑いを漏らす。

「寝言か…夢の中でもバカなことをしているのか…まったく」

朱奈がこの部屋に来てから一週間が経った。あっという間だった。世界は知らないことだらけで楽しいことだらけで、自分が普通の女の子に産まれたら、どれほど幸せだっただろう。

朱奈はここに来てから何度もそんなことを考えている。

毎朝皆で朝食を食べ、皆を見送り、皆が帰ってきたらどこか出かけたり、テレビを見たり、光から借りたゲームをしたり、談笑したり、皆で笑って毎日を終われる。

この一週間幸せだった。

いつまで続くのだろうかこの関係は。できるならこのまま…


一週間も経つといろいろわかってくるものがある。

徳子や光はまだ良く解らないが、良い人間であることは疑いようがない。

香は変な趣味は置いといて、面白い。

最初はホワイトボードの会話もめんどくさかったが今はもう慣れた。

阿部は無口だが優しく、良いヤツだ。


和気は最初、バカなヤツだなと思っていたが、いつも笑っていて不気味な感じを出している。


田中は正直わからない。この男はあの人に似ている。

だからわからない。


解るのは、三人が三人とも何か私に隠していることは解る。

三人で一つのことを隠そうとしているのではない。

三人が三人それぞれ私に何かを隠している。

まぁ、私もコイツ等に隠し事をしているからどっこいどっこいだがな…

そんな事を思いながら、ふと外を見る。

雨が降っていた。

寒気を朱奈は感じた。10月中頃の朝は冬ほどではないが、寒い。だが、この寒気はその寒さだけではなかった。

震えが止まらない。ベッドにまた入るが一向に震えが止まる気配はない。

震えを止める方法はないかと模索していると一つ明暗を思い付いた。少し不謹慎だが仕方ないだろう。






夢を見えていた。

とてもとても幸せな夢。

こんな夢みるのは初めてだな。

とか夢の中で言ってみる。




田中は目覚ましの音で目を覚ます。

他の三人も覚まし始める。

そして異変に気づく。田中の布団の中にはなんと田中と抱きつく状態で朱奈が寝ているのだ。

「なっ!?」

驚く田中。

しかし他の二人は冷静な反応。

「おいおい、いくら年頃の男女が同じ屋根の下暮らしているからって、一週間はちょっと早すぎるんじゃないか?」

和気は眠そうな顔で、だがどこか楽しそうな顔をする。

「俺はそろそろそうなるんじゃないかと思っていた」

阿部はまるで理解ある父親のような顔をしている。

「ちょっと待て、お前等!これは違うぞ!俺は何もしてないぞ!」

田中は二人に反論。

朱奈は田中の隣でスヤスヤと寝ている。

「おーおー。ここまできて言い逃れたぁ、器が小さいぞ。ロリコン。」

「お前に言われたくねぇよ!変態!」

「責任とれよ。ロリコン…」

「あっ、阿部まで!?」

「ぅ〜ん。何だ朝から五月蝿いぞ。」

ここで朱奈がやっと起床。

「てめえ何で俺のフトンの中眠ってやがる!どうゆうことだ!」

「む?」

朱奈は眠たそうに目をこすっている。

「おいおい、未来のお妃をてめえなんてよぶなよな。仲良くなれよロリコン。」

「仲睦まじくな、ロリコン…」

和気と阿部は遠くから遠い目をしながら二人を観察している。

「俺をロリコンって呼ぶな!」

「ロリコンとは何なのだ。」

朱奈はまだどこか眠そうだ。

「ロリコンってのはなお前みたいな幼児体型が…」

「わ―!わ―わ―わ―!!」

田中は大声を出し説明しようとする和気を遮る。

「てゆうか、お前!何でここで寝てるんだぁ!びっくりしたじゃねぇか!」

「本当は嬉しかったんだろ、ロリコン」

いつまでも突っかかってくる和気を田中は黙らせる。

「昨日は寒かったからな。温かい田中の所で寝ようと思ったのだ。邪魔だったか?」

うっと田中は黙る。

邪魔どころか逆に心地良かったのである。初めて気持ちの良い夢を見れた気がするし、答に詰まる田中。

そんな田中に追い討ち。

「ロリコンロリコンロリコンロリコンロリコンロリコンロリコンロリコンロリコンロリコンロリコン」

和気と阿部のロリコンコール。

「ブッコロス!」

「待て!お前が言うとマジにしか聞こえ…ぎゃゃゃゃゃ…!!」

二人を黙らし、朱奈の所に戻る田中。

「邪魔ってわけじゃねぇけど、やっぱり俺も男だろ…なぁ…こうゆうのはなぁ」

「うむ!さすがに不謹慎だとは思ったのだがな…邪魔にならずに済んでよかった。」

「いや…あ…うん…そうだな。あ、あははははは。」

田中はあの日から妙に朱奈になつかれている。まるで親に甘えるように田中に甘えてくるのだ。


やりにくい…

田中は誰かからこんなにもなつかれた経験がないため朱奈への対応がまるでわからない。

そんな二人を見て和気と阿部が田中につけたあだ名がロリコン。


朱奈はあくまで田中達と同年代。

しかし、その背丈と容姿があまりにも幼くみえるのだ。

それを言って和気は朱奈にぼこぼこにされていたので田中も阿部もそれには触れない。

代わりに田中にその矛先が移ったわけだが…。



この一週間で朱奈は変わった。

田中との買い物には良く付いてくるようになったし、朝食や夕飯などの手伝いもするようになった。

周りにも馴染めてきたようで良く笑うようになった。

「どうだ?私の焼いたベーコンは旨いか?」

朝食時に朱奈の明るい声が響く。

住吉荘の皆は答の代わりにベーコンをすぐに箸を伸ばし、むしゃむしゃと食べ、あっという間にベーコンは皿の上から姿を消す。

「少ししょっぱいけど旨いよ。」

徳子は笑顔を向けながら朱奈に答えた。

朱奈は顔を輝かせ、田中にも同じ質問をする。

「あ、ああ。旨いぞ。」

朱奈はさらに顔を輝かせ、ご飯を食べ始める。

朱奈が焼いたベーコンは正直言って味が濃すぎる。

それでも皆我慢して残さず食べるのは朱奈をがっかりさせないため。

だから今日も異常な塩味と喉の渇きと戦いながら朱奈に笑顔を向ける。

朱奈は何も知らずに笑っている。






住吉荘をでて、四人で登校。

いつもと変わらぬ風景。

しかし、以前の四人とはどこか違っていた。

「ひぃ〜。今日は一段と凄かったな〜。おい」

和気は何時もとかわらず半分笑いながら、他の三人にしゃべりかける。

「ム…」

阿部はただ黙り、香は俯く。

「つーか、お前がどうにかしろよ。ロリコン」

「ロリコンじゃねぇよ」

朝から無理をしたせいで田中を含む四人は余り元気がない。


「いいのかぁ?このまま行ったら毎日あれ食うことになるんだぜ。お前は一生な…お婿さん。」

「勝手に変なあだ名つけんなよ。後で殺すぞ。」

「お婿さんってどうゆうことですか?田中さんっ♪」

いきなり後ろから元気な声が聞こえてくる。

四人とも突然の気配に驚く。

その声の主は桐島 美鈴二年生。

四人の先輩であると同時に田中にとっては師匠のようなもの、他の三人にとってはお姉さん的存在。

その姿は見るからに大和撫子。

黒髪の長髪は綺麗にまっすぐで、透き通るような白い肌で、マリアとは違う意味で思わず振り返ってしまうような美貌。

そんな顔に笑みを浮かべて、優しく質問する。

「お婿さんとはどういう事なのですか?田中さん。」

付き合いの長い田中には解る。

この空気はヤバいということに。


何て答えればいいものか…

田中はそんな事を考えながら、空を見上げる。

少し肌寒い、朝の出来事だった。


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