#6 気になる通知
その日の夜、陸はベッドの上でスマホをいじっていた。
画面には、「既読」の文字が光っている。
《今日は教えてくれてありがとう!助かった!》
送信者は、さくらだった。
(...なんて返そう)
たった一行なのに、何度も入力しては決して、
また打ち直す。
《いえいえ〜またなんでも聞いて》は、
なんか物足りないような気がするし、
《大丈夫だった?》もなんか変な感じ。
枕に顔をうずめて、ため息をひとつ。
けれど、その手は自然ともう1度スマホを握っていた。
やっとの思いで打ち込んだ一言は、
《よかった。また何かあったら言ってね》だった。
送信ボタンを押して、すぐに画面を伏せた。
なんとなく、自分の鼓動が少し早くなっている気がした。
翌朝。教室に入ると、
さくらがいつものように手を振ってきた。
「おはよう、陸くん」
「お、おはよう...」
なんとなく、昨日のLINEが頭によぎって、
目を合わせるのが照れくさかった。
「昨日の問題、テストに出そうだよね、
ちゃんと復習しとかなきゃ」
「う、うん。俺もあとでもう1回見ておこうかなって
思ってた」
さくらはにっこりと笑って、席についた。
これだけの会話なのに、陸の胸の奥は、
じんわりと熱かった。
(こういうやりとりだけで、気持ちが動くなんてな...)
ほんの少しずつ、でも確かに、
陸の中での「気になる」が、「好きかもしれない」に
近づいているような気がした。
でも、それをまだ言葉にするには、
すこしだけ勇気が足りなかった。
(#7に続く)