#3 昼休みの進路会議
昼休み。
教室の後ろの方にある空いている机を囲んで、
陸、駿、理央の3人はお弁当を広げていた。
「てか、さぁ」
駿が、唐揚げを口に入れながら口を開く。
「もう進路調査とか、マジ早くない?」
「そうかな」
理央は、箸を止めて、少しだけ考えるように言った。
「私は、もう決めてるよ。国公立、第一志望。できれば文学部がいいかな」
「うわ〜理央ちゃんってそういうとこしっかりしてるんだよな。まぶしいわぁ」
「また軽いこと言って...」と呆れる理央に、
駿はふっと笑ってウインクを飛ばす。
陸は黙っていた。
「進路」それは、ここ最近ずっと頭の片隅にある
テーマだった。
「陸は?」
理央が静かに問いかけてくる。
「...俺は、まだ正直わかんない。行けるところに行く、じゃダメかなって思ってるけど、じゃあ
"行きたいところ"って言われても...」
陸の言葉に、2人とも一瞬だけ静かになる。
「でもさ、わかんないまま動くよりは、少しずつ探していくのもありじゃね?」
駿が言うと、理央も小さくうなずいた。
「うん。焦る必要はないけど、自分のペースでね」
昼休みのざわめきの中で、3人の言葉は
どこか現実的で、けれど温かかった。
教室の窓の外では、まだ咲き残っていた桜が、
風に揺れていた。それを見ながら陸はふと思った。
...きっと、みんな迷いながら進んでいくんだろう。
自分も、少しずつでいいから前に進もう。と。
(#4に続く)