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#1 新しい1年
春の朝、まだ少し肌寒さが残る校門の前で、
西野陸は深呼吸をした。
高校3年生として迎えるこの一年が、
自分にとってどんな一年になるのか...
正直、まだ想像がつかなかった。
「おはよう、陸!」
隣にいたのは、明るく笑う橘さくら。
彼女の声に、陸は少しだけ顔を赤らめる。
「おはよう、さくら...今日もいい天気だね」
さくらはその言葉ににっこりとほほえみ、
胸のあたりに手を当てていた。
春のやわらかな光が彼女の髪を照らした。それが、
陸にとっていつも少しだけ心地よいものだった。
教室に入ると、藤川理央が友達と楽しそうに
話している姿が見えた。
理央はいつも勉強に真剣で、陸も尊敬していた。
「おはよう、陸。今日からまた頑張ろうね」
理央が陸に声をかける。彼女の真面目な目は、
陸の心の中の不安を少しだけ和らげてくれた。
席に着くと、加瀬駿が後ろの席から手を振った。
彼は明るい性格で、陸とは昔からの友人だった。
「よっ、陸!今年も一緒にがんばろうぜ!」
駿の声に、陸は少しだけ笑顔を返した。
彼ら四人が過ごすこのクラスでの一年間が、
きっと何か特別なものになる予感がした。
(#2に続く)