序文 御姫
春野俊人、普通の高校生が、どうにかして戦国時代に穿越してしまい、井川家の家臣になった。この少年は、乱世で必死に生き残るだけでなく、彼を少し敵視している駿姫姫を侍ることもしなければならない。彼は果たして、血風雨の中でも足場を固めることができ、さらに姫とぎこちない恋愛まですることができるのだろうか……。これは俊人の野望なのか、城主立志伝なのか——
令和X年4月18日 金曜日6時
さきほど、とても奇妙な夢を見た。その奇妙さは、起きてから30分以上経った今も、まだ忘れることができない。細部まで異常に鮮明で、この日記に書くこともできるほどだ。
夢の中には、女の子がいた。彼女は華麗な古装を着ており、十二単衣のようなものだった。俺は詳しくはわからないが、その衣装を着た彼女はとても美しかった。彼女は古典的な黒い垂れ髪を残し、顔は夜空の澄み渡る明月のように清麗で、その気質は典雅で高貴だった。その女の子は、天守閣の軒下に一人で座り、風に舞う梅の花びらを見つめていた。
彼女は、指先の花びらを見つめ、複雑な表情の笑みを浮かべると、すぐに月を振り仰いだ。そのとき、指先の花びらが風にさらわれていった。その花びらは、俺のほうに一直線に飛んできた。そっと手を伸ばし、その花びらをつかもうとしたが、結局は指の間からすべり落ちてしまい、もう探しようがなかった。
女の子は、そのことに気づいたのか、花びらをもう一度よく見ようとしていたが、その花びらがいなくなったことに気づくと、慌てて探し回った。彼女の視線が俺のほうに落ちたとき、彼女はまず驚き、すぐにあごを震わせ、涙を流し、震える声でつぶやいた。
「なぜ……汝はここにいるのか?」
俺は何が起こっているのかわからないまま、彼女に尋ねようとしたが、自分の声が出ないことに気づいた。俺はますます困惑し、その女の子はいまだに信じられないような表情をしていた。
彼女は慌てて俺に近づこうとしたが、衣服に足をひっかけてしまい、転びそうになった。彼女を助けようとしたそのとき、どこからともなく現れた、鎧を着て面甲をかぶった武士が彼女を支えた。
その武士が彼女に何を言ったのか聞こえなかったが、彼女を気遣う言葉だったのだろう。突然、その武士は私と彼女の前に立ち、月光の下で徐々に塵に変わり始めた。彼はそのことに驚くことなく、彼女を抱きしめ、俺に最後の視線を向けながら、残念な表情を浮かべた。
——彼女を頼む……。
耳に、空ろな声が響いた。
もう一度彼のほうを見たとき、彼はもう完全に風に消えていた。
彼女は悲しみにくれて、その武士の最後の影を必死に引き留めようとしていた。
彼女がそのようにしているのを見ていると、私はなぜか胸が痛んだ。それは、彼女をかわいそうに思ってのことかもしれないし、泣いている女の子に慣れていないからかもしれない。
彼女を慰めたくなって、自然と一歩を踏み出そうとしたそのとき、周囲のすべてが突然消えた。そして、私は馬に乗った小柄な武士が、先ほど見たあの無防備な亡霊のような武士を恨みがましく銃を構えているのを見た。
「バン————————」
銃声が空に響き渡り、白い煙がその武士の顔を隠した。胸がギュッと締め付けられるような感覚がして、その奇妙な夢はそこで終わってしまった。
目が覚めてから、その夢をずっと反芻し、夢の中の女の子が誰なのか、俺はどのような役割を演じていたのかを何度も考えた。
最後に、多分最近読んだ小説や漫画が多すぎて、夢の中で何が出てくるかわからないのだろうと考えた。脳がその作品の断片を組み合わせただけで、俺はもともと妄想が好きなので、このような奇妙な夢を見るのも不思議ではない。
しかし、これは生まれて初めて、これほど鮮明に覚えている夢だった。普通は、私が見た夢はすぐに忘れてしまうのに、この夢だけは私の頭に深く刻み込まれてしまった。私はその夢をただの妄想だと考えようとすると、どこかで別の声がそれを否定するかのように感じた。
本当に奇妙な夢だった。