表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その部屋に棲舞うモノ  作者: 稲葉 鈴
たち別れ いなばの山の 峰に生ふる

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/19

7.308号室の財前さん

 レバータイプのドアノブは、下に押し下げて引っ張るところまでは、鍵がかかっていようがいまいがスムーズである。鍵がかかっていればガツン! と大きな反動があって、開かない。ただそれだけのことだ。

 308号室のドアはとてもスムーズに開いた。


「119番!」

「看護師です!!」


 ドアを開けたらそこには、うつぶせに倒れる男性がいた。背中は上下しているように見えるから、おそらく息はある。

 そろそろ出勤の時間なのか、エレベータホールから声がするからなのか、数人の男女が出てきていた。その中の一人が、真っすぐやってきたので、紺は場所を譲った。プロが対応してくれるというのであれば、それはとてもありがたい。

 誰が呼んでくれたのかは紺から見て定かではないが、救急車がやってきて。財前さんを見てくれた看護師さんと大家さんが同乗した。

 キジトラ猫のソラは気が付いたら草太がしっかりと確保していたので、そのまま紺が部屋に連れて帰る。


「それでねえ」


 昼過ぎ。あちらこちらへの連絡などを一通り終えた大家の石井さんが、紺と草太の部屋を訪れていた。帰宅途中に紺の分もお弁当を買って、それを持って。


「しばらく入院、ということになってね」

「ああご無事だったんですね」

「ええ。なんとか」


 しばらくは安静にするための措置入院だという。検査入院なども兼ねているのだろう、と、石井さんは言う。石井さんは大家さんだというだけで、詳しい事は聞けていないからだ。

 紺もまた、そこまで興味があるわけではない。無事に生きて病院に搬送されて、入院している。その事実が分かれば、それでいい。


「それでねえ。しばらくソラちゃんを預かって貰えるととてもありがたいんですよ」


 このマンションでは、あまり長期ではない出張の時などは、大家の石井さんがペットたちを預かっている。今回はどれだけの入院になるか分からないが、急な事でもあるので預かりを行うことにしたい。のだが。


「今、出張に行かれている方のハムスターちゃんを預かっていてね」

「ああ、フローラちゃんは手出ししなさそうですけど」

「フローラちゃんは慣れてるからね」


 石井さんが預かりをしていることは、草太がフローラちゃんから聞いて知っていた。大体の動物とフローラちゃんは仲良くできるため問題もこれまではなかったのだが。

 だがほかの生き物になれていない子猫のソラとの同居は、ハムスターの方にストレスがかかるだろう、という判断である。

 紺は草太を見た。ソラは今、草太から借りた猫ベッドの一つでお昼寝中だ。


にゃん(まあ、ええよ)


 紺に見つめられた草太は、一つ鳴いた。草太がいいなら、いいか。


「いいですけど」


 けど、と、紺は言いよどむ。

 ソラは元々草太と知り合いだったようで特に問題なくこの部屋にもなじんだ。紺はソラと意思の疎通が出来るし、草太がちゃんと説明はするだろう。けれど。


「けど?」

「財前さんの部屋から、ソラのおもちゃとか、ベッドとか、毛布とか。後は財前さんのにおいのする何かを持ってきていただけますか」


 それらを部屋の主から許可を貰って、部屋に入って、ということを、紺は出来ない。知り合いでもないのだし。連絡先も当然知らない。

 石井さんであれば、まあ今日はもう無理でも、明日にまた財前さんに確認することも出来るだろう。


「ああ、そうね。そうよねぇ」


 ベッドでぐぅぐぅと眠るソラを、そっと、石井さんは撫でた。

短いお話ですので、ここでおしまい。

完結表記はつけません。一応続く予定はあるので。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ