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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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ハロウィン

作者: 月下の覇王樹

その男はハロウィンの日が大好きだった。「お菓子くれなきゃイタズラしちゃうぞ!」その日だけは、本来は道徳的に許されないその横暴に、普段は口喧しく教育を施そうとする全ての大人たちが従う。鏡で確認しなければわからないが、自分はさぞかし恐ろしい化け物に扮している事だろう。その恐怖は、力だ。快感は、子供心に深く刻み込まれた。

男が大人になる頃には、世の中は戦乱の世になっていた。男達は徒党を組み、腕力と銃器を自慢にして、奪えるものがあるところへと押し入る。「金を出せ!さもなきゃお前の娘を目の前で犯して殺すぞ!」そう叫んでは、子供の時のハロウィンの日を、男は思い出していた。

仲間と共にその女児にも等しい娘の腹の中をずたずたにして一家皆殺しにし、金目の物も根こそぎ奪ってその家を後にする。夜、一人になった時に、男はふとその昼間の行為を省みてしまうのだった。「俺はお菓子も貰い、イタズラもしている」。そう考える。そこにはルールが無い。子供時代には確かにあった筈のルールが。ルールに束縛される事が不自由なのだと、子供時代には感じられた。しかしルールが何処にも無くなった今、男には、自由とは何であると思っていたのかが、もはや分からない。

そんな事を考えていると、闇の中に顔のないカボチャ頭の子供が浮かぶ気がする。

「お菓子くれなきゃイタズラしちゃうぞ」

酒や薬物の酩酊の効果なのか分からないが、非現実の筈の影は自分に向かって声を掛ける。いつか自分が言った言葉だった。

「でもおれはお菓子を持っていないんだ。そしてイタズラも怖くないよ。お前の姿も」ぼんやりとした頭で、闇の中の影にそう答える。

「そうだな、お前は何も持っていないようだ。お前からは何も引き出せない。お前は何も与えられない。だからもう、誰もお前の扉は叩かない」

カボチャ頭は男にそう告げた後、闇に掻き消えた。男はカレンダーを見、今日が10月31日である事に気付いた。


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