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【50万PV感謝】鈴蘭の魔女の代替り  作者: 拝詩ルルー


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はじめての冒険

 今日は冒険者としての初めての依頼だ。

 ギルドの依頼ボードの前に、レイたちは来ている。


 ライは元々持っていたミスリル製の胸当てや小手を装備し、幅広の剣を腰から下げていて、見事な黄金の髪は、邪魔にならないように後ろで一つにまとめていた。

 ブランクが長いとはいえ、大柄で男らしい精悍な顔つきをしているためか、Aランク冒険者に相応しい貫禄がある。


 レヴィは昨日買ってレイに魔術付与してもらった革鎧と剣を装備し、丸盾を背負っている。冒険者になるのは初めてのはずなのだが、なぜだか既に冒険者の剣士の装備が板についている。


 レイは、リリスの形見分けでもらったグローブと森織りのローブを身につけている。腰からは、昨日買って魔術付与したショートソードを下げ、履き慣れた編み上げのブーツを履いている。

 長い黒髪はポニーテールにしていて、冒険の準備は万端だ。


 ローブのフードの中では、子猫サイズの琥珀が丸くなっていて、時々フードから顔を覗かせている。まだ慣れない冒険者ギルドに、少し警戒しているようだ。


「初めての依頼だからな、まずはここら辺の薬草採集と低ランク魔物の討伐だな」


 ライは無骨な指でEランクの薬草採集の依頼票と、Dランクの魔物討伐の依頼票を指差した。


「両方受けるんですか?」


 レイが小首を傾げた。


「魔物討伐の方がメインで、薬草があれば一緒に採集しておく。どちらも常時依頼のものだから、成果物さえギルドに持って行けば、その場で換金してもらえる。常時依頼だから、ギルドへあらかじめ『この依頼を受けたい』というような申請はいらない。で、依頼票に書かれてるランクは目安だな。A〜Eランクまである。基本的に、自分の冒険者ランクと同じかそれより低いランクの依頼が受けられるんだ」


「自分のランクより高いランクの依頼は受けられないんですか?」

「受けることもできるが、ギルドの受付で止められることが多い。ただ、自分より高いランクの冒険者とパーティーを組めば、依頼を受けることはできる。無理は禁物だがな」

「なるほど」

「じゃあ、早速、森に行くか」


 ライに促されて、レイたちはギルドを後にした。



***



 ライ、レイ、レヴィ、琥珀は、セルバの門を出て、森の中に入って行った。

 人の気配のない場所に着くと、早速、琥珀がレイのローブのフードから飛び降りて、元のライオンサイズに戻った。


「グルル……」

「琥珀、よろしくね」


 レイが琥珀の顔周りを撫でると、琥珀はゴロゴロと喉を鳴らした。


「レイたちは、ユグドラの森には入ったことがあるのか?」

「あります。琥珀がいつも警戒役で、レヴィが前衛で、私が後衛でした」

「何か仕留めたことはあるか?」

「レイと一緒に仕留めた中で一番大きな獲物は、レッドベアです。あとは一角うさぎや三ツ目ラクーンが多いですね」

「なんだ、しっかり狩りをしたことがあるのか。まあ、新しい武器を買ったばかりだからな、今日の獲物は試運転にはちょうどいいだろ」


 本日の獲物はマッドボアというDランク魔物だ。

 動物のイノシシよりも大型で気性が荒く、中には魔術を使う個体もいる。畑を荒らしたり、旅人が怪我をするなどの被害が時々報告される、人里近くによく現れる魔物だ。


「ここら辺の草に泥がついてるだろ? マッドボアは泥浴びをするからな。泥も割と新しいし、最近ここを通ったようだな。こっちの木の幹にも、体を擦り付けたみたいだな。泥のつく位置から、マッドボアにしてはやや大型だな。もしかしたら、地や泥系の魔術を使う可能性がある……こっちの獣道には、地面を掘り返した跡があるな。マッドボアはよくこういう跡を残すんだ」

「へ〜、こういう痕跡が残るんですね」


 ライが指差した野草や木の幹には、何か動物が泥を擦り付けたような跡がついていた。泥は生乾きだ。木の幹についている泥の位置は、レイの腰よりも高かった。


(この大きさのマッドボアが突っ込んできたら、避けるのが大変そう……しかも魔術を使うかもだなんて……)


 レイは泥の跡を見つつ、内心ひやりとした。


「狩りをするなら、どういう魔物がどういう痕跡を残すか知っておいた方がいい。獲物を見つけやすくなるし、痕跡からいろいろ分かるからな。今回みたいに、獲物の大きさや、魔術を使う可能性もこの時点で分かるから、準備ができる。痕跡の中には、危険な魔物の縄張りの印だったり、魔物が子育て期で気が立っているとか、身の安全に直結するものもあるからな。そういうものは先に覚えた方がいい」


 ライが真面目な顔で講義している。

 レイもレヴィも、神妙な顔で頷いた。


『少し先に、何かいる。ボアっぽい』


 琥珀が髭をピンッと張って伝えてきた。


「琥珀が、この先にボアっぽいのがいるって……」

「よし、気配を消して近づくぞ」

「「はい!」」


 ライの指示に、レイとレヴィはピシリと返事をした。



***



 しばらく歩くと、マッドボアが少し開けた場所で、鼻先で地面を掘っていた。


「ああやって、餌の昆虫や植物の根っこを見つけているんだ。作戦通りに行くぞ」


 ライが小声で合図を送ってきた。


 レイとレヴィは、静かに目線のみで頷いた。



 レイは獲物のマッドボアを逃さないように、広場に結界を張った。


 マッドボアが異変に気づいて、地面から顔を上げた。


「グルル」


 マッドボアが見上げた先には、琥珀が背中の毛を逆立てて威嚇しながらじりじりと近づいて来ている。


 マッドボアが魔力を練り始めた。光って浮かび上がった魔術陣から、琥珀に向けて勢い良く泥玉がいくつも発射される。

 その泥と共に、マッドボア本体が、勢いよく琥珀めがけてドドドッと突っ込んできた。


「プギィ!!」


 不意にマッドボアが水の壁にぶつかって、バシンッと弾き飛ばされた——レイが、琥珀の前に瞬時に展開したのだ。


 勢いよく水の壁にぶつかってよろけたマッドボアの横腹に、レイはさらに何発か大きなウォーターボールをおみまいした。ドゴドゴドゴッと重い音と水飛沫が散る。


 体勢を崩したマッドボアのもとに、すかさずレヴィが滑り込んで、素早く心臓を一突きした。


 レヴィが警戒して後ろに飛び退けると、マッドボアは横転したまま、動かなくなった。


「……討伐完了ですね」


 しばらくして、レヴィがマッドボアに近づき、確認してから言った。


 レイたちが、ふぅっと肩の力を抜くと、


「良くやった! なんだ、お前たち結構いいチームワークしてるな。これなら討伐依頼は問題なさそうだな」


 ライが茂みから出てきて賛辞の拍手を送った。



***



 マッドボアの血抜きをしている間、レイたちは広場周辺に薬草がないか探した。


「レイはきのこは採るな! なんでよりによって毒きのこばかり採ってくるんだ!?」


 レイが採集してきた物を見て、ライが叱った。


「レイは、ウィルフレッドからきのこの採集を禁止されてます」

「あっ! レヴィ、そんなこと言わなくてもいいのに!」


 レイは慌ててレヴィの口を手で塞ごうとした。レヴィはひょいっと軽く避ける。


「銀の不死鳥でもレイのきのこ採集は禁止だ! 事故が起こってからじゃ遅い!」


 ライはきっぱりと言い切った。現教皇様からの禁止令は、威厳がありすぎた。

 レイの背筋が、反射的にピンッと伸びる。


「そんな〜! 練習できると思ったのに!」


 レイはここでもきのこ禁止令が出て、うるうると涙目になった。



***



 討伐したマッドボアをギルドに持って帰ると、最近ここら辺で畑を荒らしていた個体だと発覚した。通常よりもサイズも大きかったため、少しだけ買取価格に色をつけてもらった。

 レイが採集した毒きのこは、ライによって捨てられてしまったが、その他に採れた薬草は買い取ってもらえた。


 ライも「初めてにしては上出来だ」と褒めていた。


(この調子で、目指せBランク!)


 レイは、冒険者証に少し溜まった功績ポイントを見て、にんまりと笑顔になった。




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