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鈴蘭の魔女の代替り  作者: 拝詩ルルー


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ユークラストの水災と知恵の英雄

※今回のお話は作中作のため、本日20時半ごろに次話(本編)をアップ予定です。

 昔々、旅人の男がユークラスト地方にやって来た。


 男は森の中に迷い込み、それはそれは美しい湖畔へとたどり着いた。湖の水面は、空の青を鏡のように反映し、どこまでも抜けるような青い色をしていた。


 男は歩き疲れていたので、湖畔のそばで休憩を取ることにした。


 男が湖の水を持っていた水筒で汲むと、急に空が暗くなり、風が吹き荒れ始めた。


「一雨降りそうだな」


 そうこうしているうちに雨の匂いが強くなり、ポツリポツリと雨が降り出した。


 男は雨宿りできる場所を探しに、湖を後にすることにした。



 男が雨宿り場所を探して森へ分け入ると、小さな山小屋にたどり着いた。


 山小屋に入ると男は雨露を払い、腰を据えた。

 雨が降り止むまではここで待つつもりだった。


 男はふと、懐から護符を取り出した。

 この護符は、旅の間に困ったことがあったら使いなさいと、男の故郷の家族から渡されていたものだった。



 しばらくして雨が本降りになり、どこかでゴゴゴと地鳴りのような音が聞こえ始めた。


 男が念のため確認しに外に出てみると、水がすぐそこまで迫って来ていた。


 男は護符と荷物を掴んで、もっと安全な場所に避難することにした。



 男が準備を終えて外に出ると、バキバキと木が折れる音がした。

 男が音のした方を振り向くと、そこには鎌首をもたげた立派な大蛇の頭が、森の木々の上に見えた。


「ひぃぃ」と男が思わず悲鳴を上げると、大蛇が男の方を振り向き、その目が合った。


 蛇が笑うとは思えないが、大蛇は男を見てニヤリとするように口を歪めて、舌をチロチロと出すと、男の方へ向かって来た。


 どうやら狙いを定めたようだ。



 男は慌てて逃げ出した。


 途中、洪水から逃げる鹿とすれ違い、護符を貼った。

 鹿は男の姿になり、そのまま逃げて行った。


 男は鹿とは別の方向に逃げ、岩の影に隠れた。こっそり岩影から覗き見ると、大蛇は男に化けた鹿の方へと向かって行った。


 しばらくすると、大蛇が向かった方角から「ぐおおお! 騙したな!!」と、それはそれは低く恐ろしい唸り声が聞こえてきた。



 男は逃げ出した。


 男は今度は、打ち捨てられたボロ小屋を見つけた。


 男は小屋の扉の内側に護符を貼ると、そこから離れて森の中へ逃げ込んで、大木の影に隠れた。

 小屋の中からは、男の声で「ひぃっ! お助け!」という震える叫び声が聞こえてきた。


「ま〜て〜」


 小屋の向こうの森の中から、バキバキと木を踏み折る音と、大蛇の恐ろしげな声が聞こえてきた。


「この中か」


 大蛇はそう言うと、小屋の周りをぐるぐるととぐろを巻いていき、少しずつ小屋を絞め上げていった。


 男は、バキバキバキッという音と共に、大蛇が小屋を潰し上げたのを大木の影から見ていた。


「また違う」


 大蛇の目が、男がいる方の森を見据えた。



 男はまた逃げ出した。

 今度こそ大蛇が男を追いかけて来る。


 男は深い谷の前に出た。谷底は深すぎて、暗くて見えない程だ。


「もう逃げられないぞ〜」


 後ろからは大蛇がバキバキと木々を折り、森を揺らして迫って来ている。


 男は護符を握りしめて、谷に向かって飛び込んだ。

 それを逃すまいと、大蛇はぐいんと伸びて、男にばくりと喰らいついた。

 その瞬間、大雨で緩んでいた大蛇の足元は、その重みのせいで崖崩れを起こした。


「ぐあああああぁぁぁ!!!」


 恐ろしい唸り声と共に、大蛇は暗い谷底へと消えていった。



 大蛇が谷の底へ消えてしばらくすると、谷の淵から男が青い顔をしてよじ登って来た。

 男はどうっと倒れ込んで仰向けに寝転がり、荒れた呼吸を整えた。


 大蛇に喰われたのは、男の姿に変身した護符だったのだ。

 男自身は崖の裏側にしがみついて、大蛇をやり過ごしたのだ。



 男は無事に人里に出ると、宿を取り、森の中で大蛇に襲われた話をした。

 男は村人に、その大蛇は「ユークラストの水災」と呼ばれる、ユークラスト地方で悪さをしているサーペントではないかと言われた。


 知恵も巧みに「ユークラストの水災」を退治したその男は、村で英雄と呼ばれるようになった。




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