1-14.合宿計画と暗躍
久々です。まだ忙しいので、更新頻度めちゃめちゃ遅いですが、ご愛読よろしくお願いいたします!
魔力制御の練習を始めて、2か月が経った。
もうすぐ夏休みである。
みんな地道な訓練に何も言うこともなくなり、毎日コツコツ練習している。
制御できるギリギリを攻めすぎて暴発するルイスやリーンが時々アフロヘアーで学校に来ていた。
暴走するとなかなかの爆発が起きるから、気を付けなさい……
「夏休みになったら、合宿する?」
長期休暇を使って一日中訓練をすることを提案してみた。
「合宿ですか、いいですね!」
マリアが乗り気だ。
あんたは王女でしょーが。
なんでそんなにウキウキなの……
「いいねいいね!合宿ぅ!」
リーンもはしゃいでいる。
「最近はみんな訓練ばっかで冒険者の仕事も全くしてないからね、どこかに合宿で泊まりがてら、そこの冒険者ギルドの依頼をチームじゃなくてクランで受けてみないなって。そうすれば俺がみんなが普段訓練したことの成果を見れるし、どうかな?」
そういえば、クラン名を決めてないじゃん。
クランを組んで、依頼をこなして実戦経験を積んで……
充実した夏休みになりそうだな!
「「「依頼!?依頼受けられる!?」」」
リーン、ロキ、ヨーデルが興奮している。
俺的には魔力制御の練習にため息ついていた肉体派3人が喜ぶと思ったんだけどなぁ……
「でもぉ、大丈夫かなぁ」
ベルが不安そうな声を出した。
「どうしたのであるか?」
クリスがそれに対して尋ねる。
「なんかぁ、うちのお店に泊まりに来たお客さんがぁ、最近ドラゴンが出没するって噂を聞いたらしいのよねぇ」
龍……?竜……?
AⅠクラスの冒険者たちの、しかも数クランで挑んでも勝てるかわからないという世界最強種だったかな?
そんなのに襲われたら堪ったもんじゃない。
「流石にドラゴンは避けて依頼受けようよ」
ユージンがビクビクしながドラゴンこえぇと震えている。
「まぁわざわざドラゴン相手に向かっていく必要はないですからね。」
ロイドも触らぬ神に祟りなり、と頷いている。
「でも、王宮ではドラゴンの目撃情報は聞きませんよ?」
マリアは聞いたことないなぁと言う感じで不思議そうにする。
「流石にその辺の情報は殿下には伝わってないんじゃないですか?」
シェリーが兄殿下なら場合によっては……と考え込む。
確かに王女には伝わらないか。
「ドラゴンなんてそうそう出会わないから考えなくてもいいよー」
ケインが考えても無駄、と話題を変えようとした。
「そういえば、クラスでクラン組むのってどうなったの?」
リーンがクランのことを思い出したかのように聞いてきた。
「クランを組むのはすぐできるけど、問題はクラン名だな」
俺がそう答えると、
「アードが考えてはいかがです?」
とマリアが無茶振りをしてきた。
「!?」
「確かにぃアード君に考えて欲しいかもぉ」
ベルがなんか適当なこと言ってるよ。
みんなのことを見ると、よろしく!という感じで笑っている。
変だなんだって言っても知らないからな。
「……ちょっと待って」
必死に頭を悩ます。
四御、紅蓮、閃光……
「混沌……空隙……うーん……【空隙の大地】……クラン名っぽいかわからないけど、空隙の大地なんてどうかな?」
空隙をカオスと読むことで、すべてのの隙間を塗りつぶす大地になれたら、なんてクサい名前にしてみた。
「大地っていいねぇ。母なる大地、なんていうしねぇ」
ルイスは気に入ってくれているようだ。
「クラン名も決まったし、なんか依頼受けようよ!」
リーンは依頼しか頭にないな、まったく……
「クランで受付してる依頼をダンジョンで受けるか、いっそ近場の初心者向けのダンジョンはいるか、じゃないですか?」
なんだ、シェリーも行きたかったのか。
そういう主張をあまりするタイプではなかったから、ちょっと驚き。
「ダンジョンなんて、いいですね」
ロイドのメガネクイクイが興奮で早くなっている。
いやぁダンジョンもいいんだけど、マリアもいるしあんまり無理したくはないけどなぁ……
でも初心者ダンジョンならそう無理もないか?
でも初依頼の件もあるからなぁ……
不安もあるけど、不安だからやらないっていうのも今後の活動でもするわkにはいかないからな。
「ちなみに、初心者向けダンジョンって一番近いのどこにあるの?」
ダンジョンがどこにあるか調べてなかったな。
「教会の地下にありますよ。正確には教会の地下というわけではなく、入り口が教会の地下にある、ですが」
さすが聖女の神託。
良く調べてる。
それにしても協会の地下っていう情報は初めて聞いたな。
「今週末にしよう。まだ夏休みまで時間もあるし、週末なら学校を休まないで済む。」
それがそういうと、みんなが賛成した。
それにしても、ここ最近いつもこっちを見ている人がいるけど監視でもいてるのか?
* * *
???
「この悪魔の角笛を差し上げましょう。」
冷たく体の芯が震えるほど低い声が響き渡る。
暗い場所で密談している者がいる。
パテーティコ公爵が歪な形をした角笛を受け取る。
相手はシルエットしか確認できないが、やせ細っており、背が高い。
公爵は相手の雰囲気に慄きながらも確認する。
「これを使えば、代償なく……」
「可能でございますよ」
ニヤッと笑う。
笑ったことにより歯が見えるが鋭利な歯が多い気がした。
「ただし、吾輩は……でございます故、さすがにこれを差し上げるのに」
手を揉みながら、愛想笑いを浮かべる。
「何を望むのだ」
公爵は恐る恐る聞いた。
「いや、そんな臆すことはございませんよ。少しばかしの報酬ですよ。」
揉んでいた手を広げ、意気揚々と話し続ける。
「貴方の令息との交渉もさせていただきたいのですよ。公爵家との交流を広げるのも、親からではなく、子供からも広げられますから。」
「……」
公爵は対照的に無言を貫いている。
子供との交渉。
子供の知恵では付け入る隙を与え、損が生まれるかもしれない。
しかし、相手の持つアイテムや力はそれらを捨て去っても得られる利が大きいのは事実だと、先ほど受け取ったアイテムが物語っている。
「いかがでしょうかねぇ。今後の付き合いもあることですし、ご決断されては?」
「……」
公爵は天を仰ぎ、頭を抱える。
あの子もこのようなアイテムを渡されれば嬉々として受け取ることだろう。
しかし、子供の差し出せる報酬は?
問題がないことはない。
問題の大きさがわからないことが一番の大きさである。
しかし……
「どういたします?今回はご縁がなかったということで、そちらもお預かりして今回の取引を考えさせていただいても……」
そう言いかけたところで
「わかった、わかった。息子との交渉の件を認めよう。ただし、今ではない。後日改めてだ!」
そう強く言い放った。
相手はにっこり笑い、
「良いお話ができたようで何よりでございます。では後日改めて貴方に訪ねますので。」
後日来ると言葉を残し、陰に消え去った。
良い話ができた……か。
公爵はそう思ってはいなかった。
だが、このアイテムを息子に渡せば効力を息子が判断し、どのように息子がアレと交渉していくかは、息子次第。
王女を公爵家に取り込み、公爵家の地位向上を図りたい。
公爵の考えと、純粋に王女という立場のものを娶りたいという公爵家令息の考え。
さらには、力を借りることが今後もできれば、利益も生み出せ私腹を肥やせる。
報酬を差し出せれば、いいことしかない。
賭博性の高いことだが、まずはこのアイテムの効力を試させねば。
「おい!スタマーレを呼べ!」
使用人に息子を呼ぶよう命じた。
* * *
冒険者ギルドへ到着して、初心者ダンジョンについて一応確認しておいた。
それから、ダンジョンへ行くことを念のためユリアナさんへ報告だ。
「準備はできましたか?」
マリアが聞いてきた。
「うん、俺は前回と同じ装備で問題ないかな。あとさ、このダンジョンって初心者向けで通ってるなら攻略はされてるんだよね?」
準備が完了していることを伝え、ダンジョンについて確認した。
「確か、9割方攻略されていると言われてますね」
後ろからロイドが答えてきた。
「9割……?」
10割じゃないんだ……
「はい、ダンジョンで身に見える通路はすべて攻略されています。それが9割です。」
マリアも知っているようだった。
そういえば冒険者マニアだったわ……
「目に見える通路ってことは……」
「残りの1割は隠し通路の可能性、だろうねぇ」
ルイスも準備が完了したようで話に参加してきた。
「隠し通路か……初心者ダンジョンにそんなのあるのかな?」
と、ヨーデル。
「隠し通路!絶対あるよ!」
リーンの目が金貨になってないか……?
「初心者ダンジョンに隠し通路なんてあるのであるか?」
ナイスクリス。俺もそれ聞きたかった。
「ダンジョンにはぁ必ず隠し通路があるっていわれてるのよぉ」
ベルが胸を揺らしながらきた。
「でもさ、初心者ダンジョンってぐらいなんだから探索能力に長けている人が周回しててもよくないか?」
探索能力なんて誰かしら持ってるでしょ。
「探索能力なんて神託で狩人になった人しか身に付かないですよ?」
シェリーが答えた。
……え?
そうなの?
「魔力を持った人ならだれでもできると思ってた……」
現に俺はできるし。
それで怪しそうな人間がこっちを見ていることに気付いたのだから。
「そんなこと……アード殿ならあり得そうだから何も言いません」
ロイド、それはひどいぞ。
「今回の初心者ダンジョンは奴隷同伴不可ですけど大丈夫ですか?」
ユリアナさんが声をかけてきた。
「だからクランで行くって感じなんですよ。」
シェリーが答えた。
「でも、初心者ダンジョンだからって気を抜いたらダメですよ?最近初心者ダンジョンなのに魔物の出現率が高くなっているようですから。」
とユリアナさんが注意喚起をしてきた。
「その方が訓練の成果を出せるのである!」
クリスがムキっと上腕二頭筋をアピールしながらニカっと笑った。
「それでも、です!」
両手を腰に手を当て、プリプリした。
可愛い。
「アードがいるからある程度は大丈夫ですよ」
マリアは俺を当てにしている。
そんなに頼られても……
「まぁそれはそうですけどね、殿下。慢心は死を招きますから、これでもかというくらいは注意しなければならないのです。それが初心者ダンジョンだとしても、です。」
ユリアナさんは優しさでここまでアドバイスをくれるのだろう。
受付嬢だから、依頼を受けて戻らなかった冒険者を多く見てきたのだろう。
でも王女が行くというのだから、ここまで言うのかな。
ありがたく聞いておかないとな。
「ではこれから向かいます。」
初めてのクランでの活動を迎えるのであった。
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