1-10.それぞれの初依頼”四御の明星”②
小鬼王子と相対する。
鋭利な突起物の刺さった木の棍棒を持っている。
12歳の体でできることなんて限られてるよなぁ・・・
そう思いつつ、刀を手に取り構える。
小鬼王子が突撃してくる。
力技では体格差もあるので、俺の不利になる。
まともに打ち合わずに叩か合おう。
まずは
「これでも喰らっとけ!」
足止め程度に小さい火球を数発、小鬼王子の足元に放つ。
「グアァァツ」
叫び声をあげる小鬼王子。
・・・足止め程度の魔法なんですが?
「グギギ、貴様・・・」
すでに満身創痍になっている。
(えぇぇぇ・・・)
やっぱり進化したとはいえ小鬼なのか?
「なんだ、その程度か。」
そう言うと、風魔法を応用し推進力を上げて小鬼王子に近づくと、棍棒を持っている右腕を切り落とす。
「これ、貰っとくよ?」
「グギャァァアア!」
右腕を落とされた小鬼王子は塗炭の苦しみに声を上げる。
「向こうが心配だからこれでもう終わりにしよう。」
そう言い放つと、雷魔法の準備をする。
そして、天に手をかざして魔法による雷魔法【裁きの雷】を発生させる。
小鬼王子に直撃をし、落雷の側撃を受けて周りの木々に落雷電流が飛び移る。
そして爆風が巻き起こる。
幸い、自分には被雷しなかった。
あっぶねぇぇぇぇ!
小鬼王子は雷による裂傷と重度の火傷による即死だった。
地に伏した遺骸が砂のように崩れ、大きめの魔石が露出する。
小鬼王子以外の魔石も拾い済ませる。
うん、こんなもんか。
向こうは大丈夫かな??
* * *
「厳しいですね・・・」
マリアが肩で息をしている。
「ユージン、まだ回復しないの!?」
シェリーもボロボロながらに戦っている。
ユージンは背中に大きい傷を負っており、回復魔法で治療中だ。
メイによる広範囲回復魔法を受けながら戦っていたが、メイの魔力量は大きくないので、回復支援ではなく先頭に加わっていた。
弓小鬼のせいで、小鬼剣士と槍小鬼の数がなかなか減らない状態。
そして小鬼魔術師による広範囲攻撃。
討伐は難渋している。
「みんな!待たせた!」
小鬼王子を討伐したアードが追い付く。
「助かりますわ!」
マリアの瞳に安堵の色を滲ませる。
ユージンもシェリーも、安堵の表情を浮かべる。
そんなに切迫した状態だったのか。
「大きい小鬼・・・小鬼王子は倒した!」
そう告げると、
「あとはこの小鬼たちだけなのですね・・・」
チームでその話をしていると、こちらの話を理解しているのか、小鬼たちに動揺が走る。
「あとは俺に任せて休んでて」
マリアにそう言うと、小鬼たちに向かう。
広範囲攻撃にしよう。
マリアたちは疲弊しているから早く終わらせて帰る。
そんなことを考えて魔法を放つ。
「これで終わりだ!」
風と雷の合成魔法で竜巻を巻き起こす。
雷と伴った大型の竜巻【雷竜巻】を小鬼目掛けて巻き起こす。
「ちょっとぉぉぉぉぉぉ!」
ユージンが叫んでる。
「大丈夫だよ!そっちに行かないから~!」
竜巻の轟音と雷鳴が鳴り響いてるので、大声で返す。
「ギョワァァ!」「グギャァァアア!」「ギシャァァァァ!」
と断末魔を上げながら、小鬼たちが竜巻に巻き取られていく。
・・・我ながらえげつない攻撃だな。
使いどころ間違えないようにしないとな。
「「「うわぁ・・・」」」
マリアたちが引いている。
待て待て、俺だってこんな技を好き好んで使ってるわけじゃないって・・・
竜巻が収まると、小鬼たちと思われる残骸が残っていた。
そして砂のように崩れ、魔石が出てくる。
「これで討伐完了!ちょっと時間かかっちゃったね」
終わったことをみんなに伝えると、
「「「・・・うん」」」
と元気のない声。
「どした?」
「いやぁ、アード君がほとんど倒したから何とも言えなくて・・・」
あぁ、そんなこと気にしてたのか。
数が多かったし、予想外のことだったから気にしなくていいのに。
「想定外の数だったし、思ってた依頼内容と違っただけだから、気にしない方が良いよ。初依頼でこれだけのこと経験ができたことに感謝しようよ」
と気が利いてそうなことを言ってみる。
「とりあえず、村長さんに報告に行きましょう」
マリアの言葉に頷き、村へと戻った。
* * *
「いんやぁ、助かたでさ。」
村長がお礼を述べる。
「進化した小鬼がいました。恐らく、その小鬼が指揮していたようです。」
シェリーが村長に説明する。
「とは言っても仕留めたのってアードだけどな」
ユージンがボソッと呟いた。
「っくぅぅぅ・・・///」
シェリーが恥ずかしそうに赤面している。
「まぁまぁ。村長さん、多分ボスらしき小鬼を討伐しましたから今後は襲われる心配もないと思いますよ。」
と村長に伝える。
「先ほどお伝えした小鬼完全討伐の依頼の件、また何かあった時にそのようにそのように依頼をかけるといいですよ?」
マリアも補足する。
「いんやぁ、みんなおっ死んじまったとおもたでなぁ」
何気にひでぇなこの村長・・・
「では、私たちはこれで依頼達成ということで、ギルドに戻りましょう」
* * *
「えぇ!進化した小鬼ですかぁ!?」
ユリアナが驚愕の声をあげている。
「いやぁ、ほんと死ぬかと思いましたよ。」
ユージンが疲れたように説明した。
「確かに、アード君のギルドカードに討伐履歴も残ってますし、この魔石も・・・でもおかしいですねぇ。そんなに小鬼たちが出現しているなんて報告聞かなかったんですけどねぇ?」
ユリアナが指を口に当てながら考え込む。
「確かに、王城でも近衛騎士たちも王宮騎士たちもそのようなことは言ってませんでしたね」
マリアも確かに・・・と考える。
「なにか異常なことが起こってるとか?」
ユージンはお気楽だ。
「何かあったら他の冒険者も気付くでしょうが!」
ポカっとシェリーがユージンの頭を叩く。
「なにがともあれ、[四御の明星]のみなさんが無事でよかったです。はい、報酬銅貨20枚です。」
あんな苦労をして、銅貨20枚・・・
割りに合わねぇ!
「一応、魔物の動きに注意するように言うのと、異変があったら即座に報告するように伝達するようにいたしますね!」
冒険者ギルドとしても冒険者たちに死なれても困るだろうからな。
まぁ、調査をしてもらっておけば、事前に依頼の難易度もわかるから塩っかりお願いしたいところだ。
「さて、今日はもう帰ろう!」
予定外のことがあり今日はすぐ解散することにした。
* * *
「ご主人様」
「どうした。メイ?」
「申し訳ございませんでした。」
深々と頭を下げて謝ってきた。
「急にどうした?」
「私が奴隷として盾となるべきでしたのに、お役に立てず・・・」
おっぱいがプルプルしてる・・・
・・・って違う違う。
「なんだそんな事か。気にしなくていいよ」
別に気にしなくてもいいのだ。
メイには戦闘をすることを求めてないし、疲れた俺を癒して貰いたいだけ。
・・・何でとは言わないケド。
「しかしながら・・・」
メイはだいぶ気にしているようだ。
「だからいいんだって。メイには戦闘は求めてないし。回復と鍛治とか求めてるとこは別のことだから」
購入したときの条件を思いだしてもらうように諭す。
「・・・では、そういたしましたら今よりももっと回復や他のことでお役に立てるよう、魔力量を鍛えたり戦闘の技術をご教授いただきたいのです。」だから、メイにはそのおっぱ・・・じゃなくて、癒しを求めてるんだって。
「回復することに対して魔力量を鍛えることはわかるけどさ、なんで戦闘技術まで?」
純粋に疑問だ。
「ご主人様のお役に立ちたいのです!」
切実な願いだろう。
メイが気持ちを全面に出してきた。
「・・・わかった。今日は勘弁してくれ。明日からにしてくれ」
「わかりました・・・よろしくお願いいたします・・・」
メイも今日の戦闘で思うところがあったようだ。
別に今日のは気にしなくていいのに。
あの程度で塞ぎ込んでいたら今後、あれ以上のことがあったら対処できなくなる。
みんなも考えすぎてないといいけど・・・・
* * *
「なぁシェリー」
「・・・なに?」
「アードに任せっきりになっちゃったな」
・・・自分の力不足が情けない。
そんな顔をしているのにシェリーは気づいた。
「・・・もっと強くなりたいね。」
シェリーも力不足に情けなく思っていた。
「これからもっと鍛えないとな」
「うん・・・」
* * *
「はぁ・・・」
「ご主人様、大丈夫でしょうか?」
ヘルメスがマリアの背中にガウンをかける。
「・・・ありがとうございますヘルメス。アードがいなかったら私たちは全滅していました。それが悔しかったのです。」
「お力になれず、申し訳ありませんでした。」
へルメスが頭を下げた。
「いいのです。私も小鬼に手間取りましたから。でもアードは小鬼のボスを時間もかけずに討伐しました。力の差を・・・感じました。」
涙目になりながら、マリアが話す。
「もっと強くなってアードの力になりたいです。」
「私もご主人様、アーマルド様のお力になれるよう精進いたしたく思います。」
ヘルメスも思うところはあったようだ。
自分の主人をアードの奴隷に守らせてしまった、というところが悔しかったのだろう。
「明日から訓練です。」
「はっ、お供いたします。」
膝をつき、胸に手を当て頭を下げる。
思い思いに夜は更けていく。
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