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3.激昂。

新作も応援感謝です!

こっちも頑張ります!!








「魔本――そうか。リュードは、そんなものを」



 ボクの話を聞き終えたアンディーンは、どこか昔を思い返すように言う。

 二人がどんな関係だったのかは想像できないが、少なくとも近しい間柄だったのだろう。そうでなければ、今このように話を黙って聞くなんてできないと思った。

 しばらく黙り込むと、水精霊はこう口にする。



「一つの魔法に一生を費やした、か。不器用なアイツらしい」

「不器用……?」

「あぁ、そうだ。魔本にも書いてあったのだろう? リュードもまた、大器晩成の人間だった」

「そう、なんだ……」



 たしかに彼女の言う通り、魔本にはそう記されていた。

 ボクは言葉のままに受け取って深くは考えなかったけれど、もしかしたらアンディーンは違った見方をしたのかもしれない。

 ミレイラから聞いたリュードという人柄も気になる。

 だから、ボクは思い切って踏み込むことにした。



「ねぇ、アンディーン? その――」

「本当に、どうしようもない馬鹿だ」

「え……?」



 だが、それを遮るように。

 少女は大きなため息と共に、リュード国王のことを罵った。



「馬鹿の中の大馬鹿だ。国王という地位以上を手に入れようとしたのか? それとも、それ以外にも欲しいものができたのか……?」

「アン、ディーン……?」

「アイツの語った理想は、本当にその程度の欲望に潰れるものだったのか。こればかりは妾自身も、見る目を養わなければならない――」

「アンディーン!!」

「…………」



 とめどなく出てくる侮蔑の言葉に、ボクは思わず声を上げる。

 そして、彼女の両肩を掴んで問いかけた。



「なにが、あったの……?」

「………………」



 だがしかし、アンディーンは答えることなく。

 悔しげに唇を噛んでいた。その感情は、赤いものになって顎を伝う。



「悪いな、リンク。少しばかり感情的になった」

「アンディーン……」

「一人にさせてくれ。考えたいことがある」

「…………分かった」



 短い会話。

 ボクはアンディーンのもとを離れて、自分に宛がわれた部屋へ。ベッドに身を横たえて、深く息をつくことしかできなかった。







「本当に、どうしようもない奴だ」



 アンディーンは一人残り、外に出て空を見上げる。

 口にするのは、同じ言葉ばかり。



「本当に……」



 ただ、リンクが去った後の彼女の頬には――。




「お前は馬鹿だよ、リュード……」




 一筋の涙が、伝っていた……。




 


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「基礎しかできない錬金術師が最強になる話」新作です。こちらも、よろしくお願い致します。 ツギクルバナー
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