3.激昂。
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「魔本――そうか。リュードは、そんなものを」
ボクの話を聞き終えたアンディーンは、どこか昔を思い返すように言う。
二人がどんな関係だったのかは想像できないが、少なくとも近しい間柄だったのだろう。そうでなければ、今このように話を黙って聞くなんてできないと思った。
しばらく黙り込むと、水精霊はこう口にする。
「一つの魔法に一生を費やした、か。不器用なアイツらしい」
「不器用……?」
「あぁ、そうだ。魔本にも書いてあったのだろう? リュードもまた、大器晩成の人間だった」
「そう、なんだ……」
たしかに彼女の言う通り、魔本にはそう記されていた。
ボクは言葉のままに受け取って深くは考えなかったけれど、もしかしたらアンディーンは違った見方をしたのかもしれない。
ミレイラから聞いたリュードという人柄も気になる。
だから、ボクは思い切って踏み込むことにした。
「ねぇ、アンディーン? その――」
「本当に、どうしようもない馬鹿だ」
「え……?」
だが、それを遮るように。
少女は大きなため息と共に、リュード国王のことを罵った。
「馬鹿の中の大馬鹿だ。国王という地位以上を手に入れようとしたのか? それとも、それ以外にも欲しいものができたのか……?」
「アン、ディーン……?」
「アイツの語った理想は、本当にその程度の欲望に潰れるものだったのか。こればかりは妾自身も、見る目を養わなければならない――」
「アンディーン!!」
「…………」
とめどなく出てくる侮蔑の言葉に、ボクは思わず声を上げる。
そして、彼女の両肩を掴んで問いかけた。
「なにが、あったの……?」
「………………」
だがしかし、アンディーンは答えることなく。
悔しげに唇を噛んでいた。その感情は、赤いものになって顎を伝う。
「悪いな、リンク。少しばかり感情的になった」
「アンディーン……」
「一人にさせてくれ。考えたいことがある」
「…………分かった」
短い会話。
ボクはアンディーンのもとを離れて、自分に宛がわれた部屋へ。ベッドに身を横たえて、深く息をつくことしかできなかった。
◆
「本当に、どうしようもない奴だ」
アンディーンは一人残り、外に出て空を見上げる。
口にするのは、同じ言葉ばかり。
「本当に……」
ただ、リンクが去った後の彼女の頬には――。
「お前は馬鹿だよ、リュード……」
一筋の涙が、伝っていた……。