1.リュード国王という人。
遅くなりました、申し訳ない。
「リンク、この手紙って……」
「うん。たぶん、アンディーンに宛てられたものだね」
内容は、恋文というやつだろうか。
ボクはそれらを手に取り、中に目を通しながら思った。
アンディーンは人間が嫌いだと言っていたのに、どうしてこの手紙を大切に残しているのだろうか――と。
「なにか、分かることはある?」
「………………」
「ミレイラ……?」
そう考えながら、もう一人――ミレイラに声をかける。
すると、彼女の様子がおかしいことに気が付いた。
「あの、リンク?」
しばし待つと、ミレイラは少しだけ。
ほんの少しだけ悲しげな表情を浮かべて、こう言うのだった。
「もしかしたら私、この手紙を出した人を知っているかも……」
「え、それって……?」
こちらが驚くと、ミレイラはもう一度だけ手紙を確認して頷く。
「はい。この手紙の主の名は――リュード・ガリア・オルテンルシア」
静かに目を伏せて。
「何世代も前の、国王陛下です」――と。
◆
――リュード・ガリア・オルテンルシア。
ボクはミレイラから、その人物についての話を聞いた。
曰く【悲恋の国王】と呼ばれた彼には、その二つ名の通りに想い人がいたらしい。もっとも、その相手の素性はいまだに謎だとされていたが、最後には恋叶わなかったという。演劇や読み物にも使われている題材であり、その恋の相手は町娘であったり、冒険者の女だということもあった。
その人の名前がここに出てきたということ。
ボクとミレイラは、それだけであることを察してしまった。
「リュード国王は、非常に心優しい方だったと聞いています。すべての者が平等に暮らせる世の中を作らなければならないと志し、しかし最後には疲れ果て、お心を病んでしまわれたとのことでした」
「………………」
そして、弟に王位を譲って死に至るまで。
彼は一度として、妻を迎えなかった。
孤独な死を迎え、可哀想な国王だと噂されたという。
「そんなリュード陛下の手紙を、アンディーンが持っていた」
ボクはそれをもう一度、口に出して確認した。
文面に目を通せばそこには、日々の素晴らしさや自然の美しさがあり、そして何より目立つのは感謝の言葉。日常の何気ないことに感謝を述べ、なにかに想いを馳せている。
そんな印象を受けた。
「リンク、このことは……」
「うん。ボクたちだけの、秘密にした方が良い」
「そう、ですね」
ボクの言葉に、ミレイラも頷く。
あの少女――水の精霊アンディーンが、なにを思っているのかは分からない。
それでも、これはボクたちが安易に触れてはいけないことだ。
そう思わされた。
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