2.ミレイラの苦手なこと。
ほのぼの、だと……!?
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「いやー、気持ちいいね! お兄ちゃん!」
「せっかく水着持ってきたんだから、早く遊ぼうよー!」
「二人とも、ちゃんと準備運動しないと危ないよ?」
ミィとリィに手を引かれながら。
ひとまず、水着に着替えたボクは湖のほとりへとやってきていた。
妹たちはこのように、テンションが上がりきっており騒がしい。他の三人の優しい視線が、妙に背中に突き刺さってくる。
「元気ですね、ミィさんにリィさん」
「呼び捨てで良いよ! ミレイラお姉ちゃん!」
「まさかお姫様たちとお友達になれるなんて、思わなかったよね!」
「二人とも、頼むから大人しく……!」
困り顔のこちらに話しかけてきたミレイラに、二人が無邪気にそう答えた。
ミレイラは笑顔だったけれど、どう感じているのだろうか。ボクはとにかく無礼がないようにと祈りながら、こう訊ねた。
「そういえば、三人も水着なんだね」
「えぇ、せっかくですし新調しました。いかがですか?」
「あ、そうなんだ。よく似合ってると思うよ」
ミレイラが身に着けているのは、黒を基調とした上下が分かれているもの。腰には半透明の布を巻いており、大胆な印象が和らいでいた。
どこか気品があるようにも見えて、なんとも彼女らしい。
ただ、こういう時に目のやり場に困ってしまうのは正直なところだった。
「それで、マルスとアミナはお揃いの柄なんだね」
「はい。先日一緒に買いに行ったんですけど、これが良いってアミナが――」
「そ、その話は内緒にするって約束でしょう!?」
「あぁ、また甘酸っぱい一ページを」
マルスとアミナは、黄色の花が刺繍されている水着だ。
少年のそれはもちろんパンツタイプである。対してアミナは、フリルのついた可愛らしいものを選んでいた。うちの二人みたいな子供っぽいそれとは、また違う。
何はともあれ、みんな思い思いのものを着ているようだった。
ボクは自然と笑みをこぼして、
「それじゃ、少し遊ぼうか!」
宣言すると、みんなが元気よく返事をする。
そして、それぞれに分かれて行動を開始するのであった。
◆
「ミレイラは泳がないの?」
「え、えぇ。私は基本的に……」
少しだけ妹たちの相手をして、ふと気になって水辺のミレイラに声をかけた。
すると彼女は明らかに動揺した様子で、そう答える。
どうしたのだろうか……?
「それにしても、リンクは泳げるのですね。意外と」
「あぁ、いや。この間までは泳げなかったんだけど……」
今になって泳いでみたら泳げるようになっていた、というか。
おそらく【超速成長】の影響で、身体が勝手に泳ぎを習得してくれたらしい。とはいっても、このことはみんなに内緒だ。
改めて確認するのだが、ボクは変に目立ちたいわけではない。
ミレイラへの協力は別として。
「……しいです」
「え、なにか言った?」
「な、ななななな!? なんでもないです!!」
「どうしたの、そんなに挙動不審になって……」
その時、不意に彼女が何かを言った気がした。
聞き返すと、珍しく素っ頓狂な声を上げるミレイラ。
首を傾げていると、モジモジとしながら――。
「その。もし、ですけど――」
彼女は、こう訊いてきた。
「私がもし、カナヅチだったらおかしいでしょうか……?」――と。
それを聞いて、ボクは察した。
「あ、カナヅチなんだ」
「い、いえ!? そんなことは!! たとえ話です!!」
「そんなに怯えなくてもいいのに」
「うぅ……!」
しかし、特別おかしくも思えなかったのでストレートにそう言う。
するとミレイラは、顔を手で覆ってしまった。
耳まで真っ赤だ。
「うーん、それなら……」
これは、意外な一面を見た気がする。
ボクはそう思いながら、こう提案するのだった。
「ボクと一緒に、練習する?」
「リンクと、ですか……?」
「うん」
恥ずかしげに。上目遣いでこちらを見たミレイラ。
そんな彼女に笑顔で答えると、しばしの沈黙ののちに……。
「お願い、します……!」
そんな返事があった。
ただし、こんな注文付きで。
「でも、みんなの目につかないところで……!」――と。
ボクは思わず吹き出しながら、それに了承した。
今日はもう一話!!!!!