1.避暑地へ到着。
第7章、バカンス編突入!
しかし、問題が起こらないはずがなく……?
王都を出て少し行くと、大きな湖が広がっている。
デセウス湖というそこには、夏になると多くの貴族たちが訪れるらしい。アミナとミレイラも例に漏れず、公務の合間を縫って休息にやってくるのだ。
どうしてボクがそこの説明をしているのか、というと……。
「さぁ、リンク。着きましたよ」
「うおお、凄く涼しい……!」
これこのように、今年はボクもその休暇に参加することになったためだ。
白のワンピースにサンダル姿のミレイラに手を引かれ、馬車を降りる。そして少し進むだけで分かったのは、ここが王都とは桁違いに涼しいことだった。
なんでも水の精霊様の御加護があるだとかで、年中快適な気温が保たれているということらしい。もっとも噂は噂であって、精霊様の姿を見た者はいなかった。
「ところで、二泊三日だって聞いたけど。どこに泊まるの?」
「あちらにある、王家の別荘ですわ」
「へー……って、デカっ!」
続いて降りてきたアミナが指さした方を見ると、そこにはひと際大きな屋敷。
というか、二つ目の城だと、そう言われても違和感はなかった。
さすがは王族。ここでも、桁違いだ。
「師匠は、ここ初めてなんですよね?」
「そりゃ当然。一般市民は、噂でしか知らないよ」
「ということは、あの子たちもですね」
「あぁ、そうだね」
馬車からの荷下ろしを手伝っていたマルスがそう言うので、彼の視線を追いかけてみる。するとそこには――。
「うわああああああああああああっ!? なに、ここ!!」
「お兄ちゃん、ヤバいよ!! 凄く水が綺麗だよぉ!?」
テンションが上がって、騒ぎまくるミィとリィの姿があった。
鏡合わせのように、栗色の髪をお下げにした妹たち。庶民であることを隠そうともしないで、無心で湖に直進していた。
服が濡れることも気にせず裸足でそこに入る。
そして年相応な無邪気さで、水をかけあって遊んでいた。
「ふふふ。お二人とも、元気ですね」
「まったく、お恥ずかしい……」
「いえいえ」
その様子を見て、ミレイラが優しく微笑む。
ボクが苦笑いすると彼女は、気にしないでください、と一言。
「むしろ、見ていて楽しいので感謝いたします」
「はははは、それは笑われてるのではなくて……?」
ボクがそう答えると、ミレイラは首を左右に振った。
そして、アミナの方を見ながら……。
「アミナも、昔はあんな感じでしたから」
「お、お姉様!?」
流れ弾を飛ばした。
見事に着弾し、赤面するアミナ。
妹様はミレイラへ近づくと、抗議するようにぽかぽかと叩いていた。
「女性陣は、みんな元気ですねぇ」
「そうだね。あ、荷下ろしはもういいの?」
「大丈夫です。手伝いと言っても、基本は使用人さんにお任せなので」
そうしていると、荷下ろしの手伝いを終えたマルスがやってくる。
彼はやはり慣れているのか、取り立てて興奮している様子はなかった。ボクよりも落ち着いていて、テキパキと行動している。
「そっか。それじゃ、みんなを追いかけよう」
「そうですね!」
ボクはそのことに感心しながら、そう声をかけた。
するとマルスも頷き、二人並んで歩きだす。
たまさかの機会によって訪れた湖。
ボクはとりあえず、なにも問題が起こらないことを願うのだった。
今日も、あと2話更新します。
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