4.残された謎。
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「師匠にアミナ、昨日は二人とも休んでましたよね。どうされたんです?」
「あぁ、いや。こっちはちょっと体調崩してね」
「わたくしは、少し用事が……」
「へぇ……」
翌日、普通に登校して。
ボクとアミナは、マルスにそう嘘をついた。王城での出来事は秘匿されることになり、エビルは行方不明として扱われることになったのである。
ひとまず少年が納得したところで、ボクは昨日のことを思い出した。
◆
「優しいのですね、リンクは」
「………………」
王城の一角に、小さな墓を作って祈りを捧げる。
そんなボクにミレイラが声をかけてきた。なにも、返事はできない。
いや、するべきではないと思った。エビルがこうなった理由は分からないけれど、優しさを肯定することは、彼への侮辱であるようにも思えたから。
エビルが最期に残した言葉が、耳に張り付いて離れなかった。
彼はもしかしたら、ただ彼女が好きだっただけなのかもしれない。
「しかし、目的は何だったのでしょう。それにいったい――」
ミレイラは考え込んでいる。
ボクは彼女に、エビルの言葉を伝えてはいなかった。
彼のやったことは許されるべきではない。それに、もしかしたらあの言葉は、ミレイラにとって大きな負担になるかもしれない、そう思ったから。
だからボクは、エビルの遺言を墓場まで持っていくことにした。
「ところで、なにか分かった?」
そこまで考えてから、気持ちを切り替える。
残されたボクたちにできるのは、この事件の原因究明だ。
これはあくまで予想の範疇を超えないのだけれど、エビルの裏には何者かがいるような気がした。だって、そうでなければあのような終わりはあり得ないだろう。
「朽ち果てたあの少年の肉体――そこから採取した魔力の痕跡を、いま分析しているところです。ただ、どうにも構造が滅茶苦茶で……」
「結局、何も分からず、か」
「しかし、絶対に謎を突き止めます」
「そうだね」
祈りを捧げ終えて、ボクは立ち上がった。
真剣な表情のミレイラに笑いかけて、こう伝える。
「でも、まずはキミが無事でよかった」
すると彼女もまた、小さく微笑むのだった。
「えぇ、貴方こそ。無事でよかった」
そう言って、踵を返す。
後を追うようにボクも歩き出して、しかし一度だけエビルの墓を振り返った。
「………………」
言葉はない。
ただ、静かに拳を握りしめてからボクはその場を後にした。
本日、あと二回更新。