表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/56

3.ミレイラのトラウマ。

いつか加筆したい。そう思ったり。

ただ、思いのほか作業が捗りそうです。


応援いただけると幸いです。








「え、暗殺……!?」

「ちょっと、声が大きいですわよ!」

「ご、ごめん! でも――」



 ボクは思わぬ言葉に、声を上げてしまった。

 すると、アミナは慌てて叱責する。かなりデリケートな話題に違いない。軽率に大声を出してしまったことを謝罪しながら、それでも気になることを訊ねた。



「それって、二人のお母さん――亡くなった王妃様のこと、だよね?」



 そうなのだ。

 世間では彼女たちの母親は、病に倒れたことになっている。

 それがいったい、どういうことなのだろう。首を傾げていると、少女は難しい顔をしながらこう言うのだった。



「まだ幼かったので、わたくしも詳しくは知りません。ただ聞きかじった限りでは『見せしめ』だ、と。誰かが口にしていたのを聞いたことがありますわ」

「見せしめ、だって……?」

「はい、そのようです」

「…………」



 そこまで聞いて、ボクの中でピースがハマるような感覚があった。

 もしかしなくてもそれは、先日聞いた派閥に関係することなのではないだろうか。そう考えると、辻褄が合うように思われた。

 つまりその当時すでに水面下で争いがあり、王妃様は見せしめに。しかし世間に内部分裂を覚られないよう、彼女の死は病によるものだとされた。



「そんな……」



 その結論に至って、ボクは眉をひそめる。

 そこへ、さらにアミナは続けた。



「実は――」



 心苦しさを、隠しきれない表情で。



「お姉様はその時に、お母様と一緒にいたそうなのです」――と。









『暗殺が起きた夜、お母様とお姉様は一緒の部屋にいました。そこへ何者かがやってきて、お母様を殺害したようです。幸いお姉様は隠れることに成功し、見つかることはなかったのですが……』



 ――その時のトラウマが、今でも蘇ることがあるようです。



 想像しただけで、寒気がした。

 ミレイラは、目の前で母親を殺されたのだという。

 異変に気付いた兵士が駆け付けた時。そこには王妃様のことを起こそうと必死になって、彼女の血にまみれたミレイラの姿があったらしい。


 アミナの話は、あくまで伝聞だ。

 だから、どこまでが真実なのかは分からない。

 ただたしかなのは、ミレイラの心はその時に深い傷を負ったこと。



「………………」



 それだけでもう、ボクは我慢できなくなった。

 アミナとの話を途中で切り上げていてもたってもいられず、一直線にミレイラの部屋を目指す。そして今、彼女の部屋の前に立ち尽くしていた。


 果たして、ボクに何ができるだろう。


 ここまできて、そう思った。

 だけど、もう迷ってはいられない。だから――。



「ごめん、ミレイラ? 起きてるかな」



 数度、ノックをしてからそう問いかけた。

 すると静かに扉は開かれる。



「リンク……?」

「ごめん。起こしたかな」

「いえ。眠れずにいたところですので」

「そっか……」



 短い会話を交わしてから。

 ボクは、ミレイラにこう訊ねた。



「少しだけ、二人で話せるかな」

「はい。大丈夫です」



 ミレイラはあっさり了承し、警備を務める兵士に一言声をかける。

 彼らは一時的に持ち場を離れることになり、ボクはその後に部屋の中へと通された。アミナとは対照的に、簡素な印象を受ける整った場所だ。

 椅子を用意してもらい、腰掛ける。

 彼女はすぐそばにあるベッドに座って、向かい合う形になった。



「…………」



 そうして、黙り込むミレイラを見る。

 先ほどは落ち着いたように見えたのだが、やはり無理をしていたようだ。

 瞳には光が感じられず、いまにも倒れてしまいそうな印象を受ける。この短時間でここまで衰弱するものなのかと、彼女のトラウマの深さを思い知らされた。



「すみません、リンク」

「え……?」



 そうしていると、不意にミレイラが謝罪を口にする。

 完全に予想外の言葉に、ボクは思わず声を失った。しばしの沈黙があってから、ミレイラはゆっくりとこう話し始める。



「私は貴方を巻き込んでしまった。やはり、駄目なのです。私は口だけで、この程度のことで簡単に心が折れてしまう」

「ミレイラ……」

「世界を、この国を変えると大見得を切ったくせにこの体たらく。幻滅されたことでしょう? こんな女の戯言に付き合って、自分は命を懸けたのか、と」

「………………」



 黙っていると、次第に彼女の声は大きくなっていった。

 そして――。



「本当に情けない。私はこうも弱い、情けない女なのです。なにをやっても空回りをして、理想だけを口にして、その実は自信がなくて、それで――」

「ミレイラ!」

「え……!?」



 彼女が自分を責め始めた時。

 ボクは、とうとう我慢できなくなった。



 気付いた時には、ボクは彼女のことを――。




「リン、ク……?」




 無意識のうちに、強く抱きしめていた。


 


とりあえず、夜の間にせめてもう一話()



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「基礎しかできない錬金術師が最強になる話」新作です。こちらも、よろしくお願い致します。 ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ