2.そうそう、悪目立ちしないように……。
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「あれは、いったい何だったんだ?」
なにが起きたのか分からないまま、ボクは大急ぎで家に帰ってきた。
一応、ケガ人が倒れている――とだけ、他の生徒に言って。
「防御魔法が、発動したのかな? でも、あれはどちらかというと……」
反射していた、ように思える。
でも、それはおかしい。何故なら反射魔法は防御魔法の上位互換だから。ボク程度の生徒が扱えるような、簡単な魔法ではなかった。
それでも彼の【ファイア】を跳ね返したのは、事実。
「もしかして、これが――【超速成長】?」
そうなってくると、心当たりはそれだけだった。
滅多に成功しない防御魔法が反射魔法に成長した、ということなのだろうか。もしそうなら、ボクはとんでもない能力を手にしてしまったのでは……?
「いいや、調子に乗るな。きっと偶然……だと思う」
自信なく、自分に言い聞かせる。
ここで調子に乗って、悪目立ちはしたくはない。
「あくまで謙虚に、堅実にやっていこう」
そう決意を固めて、ボクは拳を握りしめるのだった。
◆
――翌日。
今日も今日とて、実践授業。
教員は授業の開始と同時にボクを指名し、全員の前に立たせた。
「まだいたのか、劣等生。いい加減、目障りなんだがな」
「………………」
腕を組んだ彼は、鼻で笑った後にそう言う。
すると年下のクラスメイト――とりわけ、早熟だと言われている子たちが同調して笑った。笑わないのは、大器晩成と呼ばれている生徒たち。
空気に呑まれてはいけない。
ボクは深呼吸を一つ、気持ちを落ち着けた。
「……まぁ、いい。では昨日できなかった炎魔法を使ってみろ」
「分かりました」
そうしていると、教員が指示を出してくる。
昨日できなかったこと。どうせできないと踏んでのことだった。
だけど、ボクは昨日までのボクではない。それを最低限の力で示そうと考えた。悪目立ちはしたくないけど、このまま笑われるのは癪だったのだ。
「いきます……!」
だから、ゆっくりと慎重に魔力を高める。
身体の芯の部分が熱くなった。それを指先に。
そして腕を前へと突き出し、目の前に設置されたハリボテへと放った。
「【ファイア】――!!」
――ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
「なっ……!?」
「え、嘘……!」
「信じられない!!」
すると、ボクの手から出てきたのは龍のような火炎。
一瞬にしてハリボテを呑み込んだそれは、空へと向かって昇っていく。轟音を上げて、灼熱を撒き散らしながら。最後には空中で霧散した。
ボクは小声で、こう口にする。
「しまった。やりすぎた……?」
これでは完全に悪目立ちだ。
ボクは誤魔化すように苦笑いしつつ、教員の方へと目をやった。
すると、そこには放心状態になってるその人がいて……。
「に、逃げよう……!」
その隙に、ボクはすたこらさっさ。
実戦訓練場を抜け出す。
他の生徒たちのざわめきを背中に受けつつ、冷や汗が止まらなかった。
◆
「すごい……」
そんなリンクの後姿を見送る、一人の少年がいた。
彼はこの時、心に決めるのだ。
「僕の師匠は、あの人に決まりだ……!」
無邪気に瞳を輝かせて。
少年は、リンクへと憧憬を抱くのだった。
次回の更新は明日の12時~13時頃。
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