1.苦い記憶。
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あとがきには、例によって次回更新予定時刻とテンプレです()
エビルが初めてミレイラに声をかけたのは、入学して間もなくのこと。
一つ上の学年だった彼女に会うために、まだ幼かった彼は意気揚々と学内を走っていた。そして、たどり着いた教室の前で深呼吸。
中を覗き込むとそこには、窓の外を一人眺めるミレイラがいた。
――美しい。
エビルは素直にそう思った。
そして、いてもたってもいられずに足を踏み入れて。
『ミレイラ様、あの……!』
『………………』
冷ややかな視線にも気づかずに、こう言うのだった。
『だ、大好きです……!』――と。
それがエビルにとって、人生で初めての告白。
しかし、返ってきたのは――。
『消えなさい』
『え……?』
それを微塵に砕く、痛烈な一言だった。
『興味のない人からの干渉ほど、面倒くさいことはないの。だから――』
無表情、無感情に。
『今すぐ消えなさい。私の目の前から』
◆
「…………あぁ、なんて愚かな」
ミレイラはふと、目を覚ましてそう呟いた。
嫌な夢を見たのだ。それは数年前、自暴自棄になっていた頃の自分。周囲に対して当たり散らし、迷惑をかけ続けていた頃の自分の夢だった。
寝汗もひどい。
彼女はベッドから身を起こし、腰掛けた。
「本当に、私は間違えてばかりですね」
そして、そう自責の念を口にする。
いまでこそ多少、他人に興味を持てるようにはなった。
それでもまだミレイラには、どこか心の隅に引っかかりがある。
「…………」
忘れよう、過去は変えられないのだから。
そう自身に言い聞かせるも、簡単にはいかなかった。呪縛となって手足の自由を奪う記憶の数々に、自然とため息が漏れる。
そこでミレイラは、枕元にある水を飲もうと手を伸ばした。
そこで、ふと一枚の紙切れの存在に気付く。
「これは……?」
訝しみながらも、それを手に取った。
寝る前にはなかったもの。魔力の類も感じられないので、本当にただの紙切れのようだった。使用人が片付け忘れたメモかなにか、だろうか。
そう思いつつミレイラは、その紙に書かれた文章を読んだ。
そして――。
「え……?」
背筋が凍る。血の気が引くとは、このことだろうか。
彼女は周囲を確認してから、慌てて立ち上がった。部屋を飛び出して目指すのは、現状で唯一頼れる父のもとだ。
これは、只事ではない。
それに何よりも、彼女は命の危険を感じていた。
自分の身は自分で守れると、そう信じて疑わないミレイラ。だがこれは、大きく事情が異なっていた。
――もしかしたら私は一度、殺されていたかもしれない。
紙切れを見た彼女は、そう感じたのだ。
何故なら――。
『親愛なるミレイラ様へ――』
そこに書いてあったのは、異常な内容だったから。
『今宵は寝顔を拝見して帰りますが、明日こそは是非お話いたしましょう。我が心はいつまでも、貴方様の傍にあります』
深夜の来訪者と、その痕跡。
それは、命の危機を感じるには十分なものだった。
次回更新は、19時にできたらいいなぁ、って。
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