2.食堂での悶着。
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追記:次回ざまぁ回。
「本当に、大丈夫ですか?」
「うん、気にしないで。きっと気のせいだからさ」
「師匠がそう言うなら……」
昼休憩になり、マルスがそう声をかけてくる。
だけどボクは少し考えてから、彼には秘密にすることにした。ミレイラが気にしていたのは、こういうこと、というのもあるのだろう。
マルスは決して能力が高い方ではない。
何故にボクなのかは置いておいて、これ以上誰かを巻き込むのは駄目だ。
そんなわけで、ボクは至って平静を装いながら過ごすことにする。
ただ、少しだけ周囲に警戒しながら、だけども。
「ところで、今日は食堂なんですね」
「あぁ、そうなんだ。母さんが珍しく寝坊したからさ」
ボクとマルスは、学園にある食堂を目指していた。
そこには基本的に庶民出身の学生が多く集まっており、なかなかに賑わっている。味も申し分なく、安価であるために、まさしく学生の味方という場所だった。
だから、そこに彼女がいるとは思いもしなかったわけで。
「あら、こんにちは。リンクにマルス」
「…………なぜに?」
ミレイラ王女が、日替わり定食をつついていた。
「どうしました?」
「逆に、どうしました?」
その似つかわしくない姿に、ボクは思わずそう問い返す。
すると、彼女は首を傾げてしまうのだった。
◆
「意外でしたか?」
「えぇ、それはとても……」
ひとまず定食を注文して同じテーブルに着く。
そして話を聞いてみると、どうやらミレイラはかなりの庶民派のようだった。というか、食の好みがそちらより、という感じか。
ボクは何度も目をこすりながら、苦笑いを消すことができなかった。
「ふむ、なるほど。私の世間的イメージは、そちらでしたか」
そんな反応を察して、ミレイラは考え込む。
だがすぐに気持ちを切り替えたのか、こう話しかけてきた。
「しかし、たまには友人と食事、というのも良いですね」――と。
とても、柔らかな笑みを浮かべながら。
その言葉を聞いて、ボクはある話を思い出した。
たしか、ミレイラは人を避けている節がある、ということ。
興味を持った相手としか口を聞くことはないのだと、アミナとマルスが言っていた。それを直接訊ねるのは気が引けたが、これを機にというのも良いかもしれない。
そう思って、ボクは話題を切り出そうとした。
その時だ。
「ふん、リンクの分際で生意気だな」
「え……?」
一人の男子学生が、そう話しかけてきたのは。
振り返るとそこにいたのは――。
「あ、お前は……!」
「よお、校舎裏でやり合った時以来だな?」
同い年の上級生であり、ボクを執拗にイジメてきた男子だった。
ちなみに、名前をエビル・アークレスという。
「どうしたって、言うんだ……?」
ボクはあの日のことを思い出し、自然と身構えた。
するとエビルは鼻で笑って、こう口にする。
「どうしたも、こうしたもねぇよ。どうして庶民で雑魚なお前が――」
あからさまな敵意をむき出しにして。
「ミレイラ王女と、一緒に食事なんかしてやがるんだ……!」――と。
周囲がそれに気付いてざわつき始めた。
だが、彼はそんなことを気にする素振りもなく続ける。
「分不相応だと思わないのか? 自分ごときが王族といる、なんてよ」
「そ、それは……」
大声で。それはもしかしたら、あえて周囲に聞こえるように。
エビルはボクを、あるいは笑いものにしようとしていたのかもしれない。
「本当に、面の皮が厚いぜ。いくら積んだんだ? ――答えろよ」
「そんな! お金なんて、これっぽっちも……!」
そして、彼は濡れ衣を着せようとしてきた。
まるでボクが、金でいまの場所を手に入れたというように。そのことに、ボクはさすがに苛立った。これはボクだけではなく、マルスやミレイラへの侮辱。
だから思わず、手が出そうになった。
「はん! 本当に卑しい奴だな!」
「いい加減に――」
「その醜い言葉を撤回しなさい、下郎」
「…………え?」
でも、その直前。
大きく声を上げたのは――。
「ミレイラ……?」
他でもない、王女本人だった。
次の更新は、深夜のうちに一回!