1.事件の始まり。
第4章、開幕!
サスペンス?風にしてみました。
最後は犯人ざまぁですので、お楽しみに!
――少年は、憧れを抱いていた。
王族はすべての国民から、尊敬と畏怖を集める存在である。
この少年もその例外ではなく、当初は純粋な気持ちを持って彼らを見ていた。しかしあるきっかけを境に、その感情はドロドロと濁ったものへと変貌する。
その発端は恋だった。
少年は三年前に、魔法学園へと入学することが決まる。
最初は喜んだ。何故ならそこには、憧れの対象である王族――ミレイラ王女も通っていたのだから。憧れの存在に近付けた、そう思って彼は彼女のいる教室へと向かった。
だが、そこで思いは打ち砕かれる。
恋に落ちると同時に、現実を突き付けられたのだった。
◆
「結局、昨日のアレはなんだったんだろ?」
ミレイラとの歓談翌日。
ボクは早めの登校をして暇していた。
なので、昨日の帰りしなに言われたことを思い返す。彼女曰く、学園で危険な動きがありボクが狙われている、とのことだった。
「なんで、ボク……?」
誰もいない教室で、そう呟く。
考えれば考えるほど疑問は大きくなった。
それこそミレイラのように、立場のある人間が狙われるなら分かる。だがボクはそれから対極の人間だった。
家は平凡な商家だし、成績は最近上向きだけど平凡だし。
とても目立った人材ではない、そう自負していた。
「うーん、とりあえず外の空気でも吸うか」
やはり考えても分からない。
なので、ボクは気分転換に教室の空気を入れ替えようと窓を開いた。
そして頭を出して、風を顔に浴びる。春から夏に移っていく最中のそれは、温もりがよく感じられて心地よかった。
そう、思った瞬間。
「師匠、危ない! 下がって!!」
「へ――て、うわっ!?」
ちょうど登校してきたマルスが、ボクにそう声をかけた。
そして――ガシャンっ!
「え、えぇ……!?」
弟子(仮)の声に従って顔を引くと、鼻先に何かが通過。
その何かが割れる音がして、ボクは改めて階下を覗き込んだ。すると――。
「あ、ぶない……!!」
そこには、花瓶だったものが散乱していた。
ボクの教室は二階にあるのだが、どうやらさらに上の階から落ちてきたらしい。偶然に登校してきたマルスが声をかけてくれなければ、どうなっていたことか……。
「師匠、大丈夫ですか!?」
「あ、うん……ありがとう。マルス」
息を切らして教室に飛び込んできた少年に、ボクはひとまず礼を言う。
すると彼は、それどころではないとこう叫ぶのだった。
「事故じゃないです! ハッキリ見ました!」
緊張した面持ちで。
「師匠が顔を出した瞬間に、誰かが上の階から花瓶を……!」――と。
――貴方が狙われている。
マルスの言葉を聞いた瞬間。
ボクの脳裏にはミレイラの言葉がよみがえり、背筋には砂が流れた。
「え、嘘でしょ……?」
だが、まだにわかに信じられない。
それでも、この出来事を皮切りに信じざるを得なくなるのだった。
次は23時くらいかな。
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