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菓子折りの行方。

ギャグにもならなかった、軽い補足話。

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よろしくお願いいたします!








 これは、リンクの持ってきた菓子折りがどうなったのか。

 本筋には関係のない、ちょっとした補足話。





「先輩。あの子からいただいた、この菓子折りどうしましょう?」

「そうねぇ。国王陛下にお出しするには、少し品がないかも」

「でも、アタシたちが食べるわけにはいきませんよ?」



 使用人たちは、頭を悩ませていた。

 その理由というのも、リンクが持ってきた大量の菓子にある。

 彼が持ってきたのは下町で流行している、庶民の口に合うそればかり。使用人たちは、これを王族の皆様に差し入れて良いものか、本気で悩んでいた。



「そもそも、毒が含まれているかも」

「おバカ。姫様のご友人だよ? そんなのないでしょ!」



 王族の口に入る品。

 それには、数多くの関門があった。

 毒もそうだが、衛生面などについても配慮しなければならない。事が起きてからでは遅いのであり、仕事の中でも最も注意を払うことの一つだった。



「でも、せっかくこんなに……」

「だから困っているのです。あの子、あんなに目を輝かせて……」

「とても無邪気でしたよねぇ」



 三人の使用人は、リンクの笑顔を思い出す。

 そうすると尚のこと、この菓子折りを無下に扱うこともできなかった。



「誰か、意見を下さればいいのだけれど」



 そのため、その中でも年長の使用人であるニアは深くため息をつく。

 その時だった。



「どうされたのですか、みなさん」

「ミ、ミレイラ姫様!?」



 なんとその場に、ミレイラが姿を現したのは。

 彼女はキョロキョロと、使用人の控室の内部を見回す。


 そして、こう訊ねてきた。



「リンクが菓子折りを持ってきたと話していましたが、どこです?」――と。



 にっこりと、柔らかな笑みを浮かべて。

 使用人たちの間に、緊張が走った。



 果たして、ここで菓子を開示しても良いものか――と。



 ここはひとまず、隠すべきだと使用人の一人がジェスチャーを送った。

 しかし、ニアは首を左右に振る。



 なぜなら、相手はあのミレイラ王女だからだ。

 慧眼の持ち主と呼ばれ、とかく鋭い観察力、洞察力を持つ人物。

 そんな彼女相手に、隠し事を貫き通すことができるだろうか。そう考えて――。



「ひ、姫様……?」

「ん、どうしましたか?」



 ニアは、覚悟を決めた。

 そしておずおずと、大量の菓子折りを差し出す。



「こちら、です」



 するとミレイラは首を傾げた。

 まじまじと菓子を見つめて、観察している。



 そして、数秒後のことだった。





「はむっ」

「ひ、ひひひ姫様!?」




 ほとんど躊躇なく、彼女が菓子の一つを口に運んだのは。

 使用人たちはみな絶句。心臓の一時的な停止。

 血の気が引く、とはまさしくこれ。


 だがしかし。

 硬直して動けなくなった使用人たちをよそに、ミレイラはこう言った。




「おいしいです!」――と。




 そして、もう一口頬張るのだ。

 満面の笑みで。



「これは、城のみんなで食べることにしましょう。よろしいですか?」



 で、あっさりと決断。

 ニアが不器用に頷くと、ミレイラは笑顔で去っていった。




「………………はぁ~っ!」




 直後、使用人の三人はその場に崩れ落ちる。

 その中で、ニアは切実に思った。




 頼むから、親切心もほどほどにしてほしい――と。




 使用人は気苦労が絶えない。

 これは、そんな人々のちょっとしたお話。



 続編があるかは、まだ謎である……。



 


次回更新は、19~20時? 少しずれるかも。



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