菓子折りの行方。
ギャグにもならなかった、軽い補足話。
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これは、リンクの持ってきた菓子折りがどうなったのか。
本筋には関係のない、ちょっとした補足話。
◆
「先輩。あの子からいただいた、この菓子折りどうしましょう?」
「そうねぇ。国王陛下にお出しするには、少し品がないかも」
「でも、アタシたちが食べるわけにはいきませんよ?」
使用人たちは、頭を悩ませていた。
その理由というのも、リンクが持ってきた大量の菓子にある。
彼が持ってきたのは下町で流行している、庶民の口に合うそればかり。使用人たちは、これを王族の皆様に差し入れて良いものか、本気で悩んでいた。
「そもそも、毒が含まれているかも」
「おバカ。姫様のご友人だよ? そんなのないでしょ!」
王族の口に入る品。
それには、数多くの関門があった。
毒もそうだが、衛生面などについても配慮しなければならない。事が起きてからでは遅いのであり、仕事の中でも最も注意を払うことの一つだった。
「でも、せっかくこんなに……」
「だから困っているのです。あの子、あんなに目を輝かせて……」
「とても無邪気でしたよねぇ」
三人の使用人は、リンクの笑顔を思い出す。
そうすると尚のこと、この菓子折りを無下に扱うこともできなかった。
「誰か、意見を下さればいいのだけれど」
そのため、その中でも年長の使用人であるニアは深くため息をつく。
その時だった。
「どうされたのですか、みなさん」
「ミ、ミレイラ姫様!?」
なんとその場に、ミレイラが姿を現したのは。
彼女はキョロキョロと、使用人の控室の内部を見回す。
そして、こう訊ねてきた。
「リンクが菓子折りを持ってきたと話していましたが、どこです?」――と。
にっこりと、柔らかな笑みを浮かべて。
使用人たちの間に、緊張が走った。
果たして、ここで菓子を開示しても良いものか――と。
ここはひとまず、隠すべきだと使用人の一人がジェスチャーを送った。
しかし、ニアは首を左右に振る。
なぜなら、相手はあのミレイラ王女だからだ。
慧眼の持ち主と呼ばれ、とかく鋭い観察力、洞察力を持つ人物。
そんな彼女相手に、隠し事を貫き通すことができるだろうか。そう考えて――。
「ひ、姫様……?」
「ん、どうしましたか?」
ニアは、覚悟を決めた。
そしておずおずと、大量の菓子折りを差し出す。
「こちら、です」
するとミレイラは首を傾げた。
まじまじと菓子を見つめて、観察している。
そして、数秒後のことだった。
「はむっ」
「ひ、ひひひ姫様!?」
ほとんど躊躇なく、彼女が菓子の一つを口に運んだのは。
使用人たちはみな絶句。心臓の一時的な停止。
血の気が引く、とはまさしくこれ。
だがしかし。
硬直して動けなくなった使用人たちをよそに、ミレイラはこう言った。
「おいしいです!」――と。
そして、もう一口頬張るのだ。
満面の笑みで。
「これは、城のみんなで食べることにしましょう。よろしいですか?」
で、あっさりと決断。
ニアが不器用に頷くと、ミレイラは笑顔で去っていった。
「………………はぁ~っ!」
直後、使用人の三人はその場に崩れ落ちる。
その中で、ニアは切実に思った。
頼むから、親切心もほどほどにしてほしい――と。
使用人は気苦労が絶えない。
これは、そんな人々のちょっとしたお話。
続編があるかは、まだ謎である……。
次回更新は、19~20時? 少しずれるかも。
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