2.不思議な人――ミレイラ。
深夜の執筆、いえい!!(テンション変
書き直しするかもしれませんが、ひとまず予約投稿しておきます!
応援いただけますと幸いです!!
そんなわけで、翌日。
ボクはしばらくぶりに、王城へと足を運んでいた。
当然ながら、案内人としてマルスを忘れない。彼の手引きで城の中に入ると、そこにあったのは庶民がまず見ることのない景色だった。
「うわ、なんだこれぇ」
思わず情けない声が漏れる。
だって、正面入口から入るとエントランスがあるのだけど、それが豪華だのなんだの。貧困な語彙が、なおのこと貧困になってしまうほどだった。
大きな階段と左右に伸びた廊下。
床には真っ赤な絨毯が敷かれていて、これぞ王家といった雰囲気だった。
「師匠、そういえばなんですけど――」
ボンヤリとしていると、マルスがおずおずと訊いてくる。
「その、背負ってる大きな風呂敷はなんですか?」
「…………え? これは、菓子折りだけど」
「え、菓子折り……?」
「え……?」
――その、サイズですか?
マルスは次第に小声になって、どこか申し訳なさそうに視線を泳がせた。
なにか、変なことをしてしまったのだろうか。そんな不安に駆られた。
「まぁ、とりあえず使用人さんに任せましょう」
そう思っていると、マルスは近くにいた使用人に声をかける。
すると数人の使用人が、素早くボクと彼の手荷物を受け取りに来てくれた。手土産だと伝えると、なぜか苦笑いをされたが――これはもう、考えないことにしよう。
そんなこんなで。
ボクとマルスはひとまず、アミナの部屋へと向かった。
「ここです、師匠」
マルスがそう言って、扉を軽くノックする。
するとすぐに、中から少女の声がした。
「いらっしゃいませ、お二人とも」
「こんにちは、アミナ」
「お邪魔します!」
侍女の方が扉を開けてくれて、ようやくアミナと対面。
軽く挨拶をすると、部屋の中に通された。
「お出迎えもできず、申し訳ございません」
「いや、いいよ。それより――」
ボクは駄目だと分かりながらも、ついついアミナの部屋の中を観察してしまう。綺麗に整頓された家具や小物。少女らしい色合い、と言えば良いのだろうか。
アミナの部屋は、どこか柔らかい印象を受けた。
「あぁ、お姉様はご公務で少し遅れますわ」
「そうなんだ。それじゃ、少しゆっくりしようか」
「そうですね」
そんなこんなで、ボクたちは彼女の部屋で談笑する。
そうしていると次第に、話題はミレイラ様のことへとシフトした。
「ところで、だけど。ミレイラ様って、ボクの一つ年上だよね」
「そうですわね。ただ、学年は四つ違いますが――」
「うぐっ……!」
クリティカルヒット……!!
「あ、アミナ! それは!」
「も、申し訳ございません!」
「いや、いいよ。事実だからね……ははは……」
そうだった。
自分でも忘れていたけど、ボクは落第を繰り返しているのだ。
あまりに普通に話していたから、二人が年下だということを失念していた。苦笑いしていると、咳払い一つしてからアミナがこう言う。
「でも、次の進級試験では飛び級するのでは?」
「そうですね。師匠なら、きっとミレイラ様の学年まで一気です!」
「うーん、それはどうなのかな……?」
マルスも同調してそう口にしたが、ボク自身が首を傾げてしまった。
でも、とりあえず今はミレイラ様の話題が優先だろう。
ボクは軌道修正を図った。
「でも、とりあえず。ミレイラ様は取りこぼしなし、だったんだね」――と。
取りこぼしなし。
つまるところ、落第科目なしで順調に進級した、ということ。
それだけで十分凄いことだ。なにせ、魔法学園は卒業することができずに退学になる、そんな人の方が多い場所なのだから。
「たしかに、そうなのですが……」
「ん? どうかしたの?」
そう思っていると、なにやらアミナが難しい顔をした。
ボクが訊くと少女は悩ましい感じで話す。
「わたくしは、お姉様が本気になっているところを見たことがないのです。なので、学園でも本気は出されていないのかな、と」
「えぇ……?」
それは、つまりどういう意図があって……?
話を聞いていると、ミレイラ様という人物がより分からなくなってきた。
「わたくしにも、お姉様は謎多き方ですので。少し気を付けて――」
「あら、ずいぶんな言い様ですね? アミナ」
「ひっ……!」
と、そこまで話したところで。
ついにその人が登場し、アミナが潰れた声を発した。
声のした方を見るとそこには、絶世の美女。
思わず見惚れているボクに、その人は恭しく礼をしながらこう名乗った。
「初めまして、リンク様。私は第一王女のミレイラ、と申します」――と。
13~14時に次回更新です。