2.試合開始。
やったねあざね! 予定時間に投稿したよ!
というわけで、応援いただけると更新速度が上がります。
頑張ります。
「いよいよ、か……」
舞台に上がると、そこは下から見るのとは全く違っていた。
まさしく別世界といって良い。
「広いなぁ……。それに、意外と客席が遠く見える」
ボクは貴族の人たちの顔色が分からないことに、内心ホッとした。
他人の目を気にしていたら、まともに戦えるはずがない。そう思っていると、反対側からアミナが上がってきた。の、だけど――。
「へ……?」
思わず目を疑った。
何故なら、アミナが背負っていたのは……。
「いかがなさいましたか?」
「いや、ずいぶんと大きな剣を使うんだね」
「そうでしょうか。わたくしには、ちょうど良いのですが」
「………………」
いやいやいやいやいや!?
どう考えても、身の丈以上あるでしょ!!
アミナの背負ってきた――というか担いできたのは、いわゆるグレートソード、というものだった。大人の身の丈ほどある剣のことだが、小柄な彼女が持つと色々と感覚が狂う。ボクの言葉に首を傾げている様子にも、多大な違和感があった。
「それでは、改めて。今日はよろしくお願いいたします」
「う、うん……よろしくね」
丁寧な礼をされたので、ボクもそれに倣う。
しかし身体中から冷や汗が止まらず、顔に苦笑いが張り付いて取れなかった。
「それでは両者、武器を構えて」
そうしていると、立会人がやってきてそう言う。
ボクは使い古しの剣を引き抜いて構えた。対してアミナは――。
「ふんっ!」
――ブオンッ!!
大きな風を起こしながら、グレートソードを上段に。
様になってるのがまたおかしい。
「では、始め――!」
そう思っていると、試合開始の合図があった。
その瞬間に、アミナが一気に距離を詰めてくる。そして――。
「うわっ!?」
「はああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
思い切り、ボクへ剣を振り下ろしてきた!
とっさに横へ転がって回避したけれど、直撃すれば大ケガだ。いいや、それどころの話ではないのかもしれない。
ひとまず身体強化の魔法はかけてある。
加えて試合前に、結界魔法でダメージの軽減も図られていた。
「それにしたって、滅茶苦茶だろ!?」
それでも、何度も言うがケガでは済まない。
ボクはアミナから距離を取りつつ、相手の出方をうかがった。すると――。
「あれ、消え――」
「こちらですわ、リンクさん?」
「ひえっ!?」
一陣の風が吹いたと思えば、少女の姿は掻き消える。
そして次には背後から、彼女の囁く声がした。
「覚悟……!」
「うおおおお!?」
思い切り剣を薙ぐアミナ。
ボクはとっさに、剣を盾代わりにしたのだけど……。
「うわぁ! いきなり折れたぁ!?」
吹き飛びながら、自分の剣が折れたのを見た。
ひとまず身代わりになってくれたそれに感謝しつつも、空中で体勢を整える。転がるように受け身を取って、アミナの姿を確認した。
彼女はボクの得物が壊れたのを認めて、少しだけ遠慮している様子。
「大丈夫ですか?」
「え、あ、うん。大丈夫」
「そうですか」
そしてそう訊いてきたから、ボクはとっさに答えた。
いや、全然大丈夫じゃないです……。
「では、続けましょうか」
「…………ははは」
苦笑いしかできない。
ボクは折れた剣を構えて、少しだけ考えた。
どうすればいい?
こうなったら、普通は降参するのが筋なんだけど……。
「でも、負けたくないな」
何故か、そう思ってしまった。
プライドとかではなくて、応援してくれるマルスのために。
「だったら昔、本で読んだアレを試すしかないか」
そう考えて、ボクは体内の魔力を高めるのだった。
◆
アミナは少し拍子抜けしていた。
マルスが師と仰ぐ人物がいかほどのものか、興味はあった。
しかし、いざ手合わせしてみれば平均的な人物。むしろ、少し弱いほど。
「これなら、早々に決着を――」
そして、マルスは自分のものになる。
そう思った。
「え、なんですの?」
その直後、だった。
急速な魔力の高まりを感じたのは。
魔力の渦の中心にいるのは、間違いなく――リンク。
「なにを、するつもりですの……?」
アミナは剣を構えて、彼の様子をうかがった。
そして、次の瞬間に――。
「そ、そんな!?」
彼女は、目を疑うことになった。
何故ならそこには――。
「あ、上手くいった。よかったぁ」
燃え盛る炎の剣を手に、安堵する少年の姿があったのだから。
次は16~17時かな。たぶんね。