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プロローグ 落ちこぼれ、本を見つける。

新作です。

応援していただけると更新速度が上がります。

あとがきに次回の更新予定が書いてあります。








「おい、そこの木偶の坊! 今からちょっとサンドバックになれ!」

「そ、そんな!? どうして――」

「理由なんてねぇよ! お前が弱っちいからに決まってるだろ?」

「そんなの横暴――がはっ!?」



 同い年の上級生が、ボクの腹を殴った。

 力加減なんてない。思い切りだ。一瞬だけ呼吸ができなくなり、目の前がチカチカとする。膝から力が抜けてうずくまり咳き込むと、それを見て彼は笑った。



「ホントに弱いよな、リンク。さすがは落第を繰り返してるだけはあるぜ」

「うぅ……!」



 本当にただの憂さ晴らしだったらしい。

 その上級生はこちらに唾を吐きかけながら、こう続けた。



「いつまでたっても成長しない【大器晩成】なんて、誰も相手にしてくれないよな。それでもオレ様のサンドバックになれるんだから、名誉に思うんだ――な!」

「うわっ!」



 そして、今度はボクの顔面に蹴りを見舞う。

 鼻っ柱が折れた。血が噴き出して、意識が遠くなっていく。



「でも、いまいち耐久性に欠けるよな。そこだけは難点だぜ」



 朦朧とする視界。

 最後に聞こえたのは、人を人として扱わない少年の言葉だった。





 人間の成長速度は、それぞれ異なる。

 いわゆる【早熟】と呼ばれる者もいれば【大器晩成】という者もいるのだ。その二つであれば、評価されるのは圧倒的に前者だった。

 大器晩成の者はどうせ、どこかで気持ちが折れる。


 だから、最初から誰も期待しない。

 この世界では、早熟の即戦力ばかりが持て囃されていた。



「本当にお前は、何年この学年に留まるつもりだ?」

「………………」



 魔法の実践授業中のこと。

 ボクは同級生の前で、教員からそう叱責されていた。

 新学期が始まってからというもの、これがもはや日常となっている。他の学生の前で恥をかかせることで、暗にボクを自主退学させようとしているのだ。



「さっさと消えてほしいのだがな。それを強制できないのが、面倒だ」

「…………すみません」



 その証拠に、教員はハッキリとそう口にする。

 この魔法学園では、生徒を強制的に追い出せない規則になっていた。だからボクが逃げ出すまで、延々と嫌がらせが続く。



「もういい。次の者、基礎の炎魔法を――」



 適当に手で追い払われ、ボクはその場を後にした。

 このように、授業の途中で抜け出しても何も言われない。それもそのはず、ボク――リンク・リーデアスは、誰にも期待されていないのだから。


 ボクを見てくれる人なんて、誰もいなかった。




「はぁ……。もう、キツイよ」



 学園内を歩き回りながら、ボクはそう呟く。

 入学してから、かれこれ三年が経過していた。成績はいつも最下位で、進級試験にすらまともに進めた試しがない。

 落第を繰り返して、いつの間にか『落ちこぼれ』と呼ばれていた。



「……なにか、読むか」



 ふと、図書館の前で足が止まる。

 放課後まで、どうにか時間を潰さなくてはいけなかった。

 だからボクはとくに目的もなく、そこに足を踏み入れる。入ったことはなかったけど、一目で分かった。



「どれだけ、人に使われていないんだろう?」



 埃まみれの棚に、蜘蛛の巣が張っている。

 乱雑に本が重ねられた細道を進むと、椅子とテーブルがあった。



「誰も来ないし、ここで時間を潰そう」



 ボクはそう思って、適当に本を探す。

 すると――。



「ん、なんだろ。この本は……」



 多くの本の中で、ひときわ古ぼけたものがあった。

 埃を払って手に取る。そして、表紙に書かれた題を読んだ。



「えっと――【超速成長】……?」



 なにかの魔法についての本、だろうか。

 その時のボクは、そう思った。



 だけど、この本との出会いがボクの運命を変えることになる。

 そんなこと、知る由もなかった。


 


次回更新は今日の21時頃!



面白かった

続きが気になる

更新がんばれ!


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「基礎しかできない錬金術師が最強になる話」新作です。こちらも、よろしくお願い致します。 ツギクルバナー
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