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田中家、転生する。  作者: 猪口
スチュワート家と皇国
96/198

大騒ぎ。

皆様、新年明けましておめでとうございます。

今年も、田中家、転生する。をよろしくお願いいたします。


新年早々、虫回となっております。

虫の苦手な方はご注意下さい。

週明けの早朝。

学園に令嬢の悲鳴が響き渡った。


狙われたのは、エマが唯一兄弟と離れる刺繍の授業に向かう道。

兄弟とヨシュアは、狩人の実技の授業。


男子必須科目のために、男女できれいに別れた道の先で一人歩くエマに向かってそれは落とされた。


黒っぽい体躯。

体に対して不自然な程にながい足。

蜘蛛に似て非なるもの。

この世界に存在してはいけないレベルの地球外生命体的フォルム。


緑の多い学園の木に登って待ち伏せていたロバートとブライアンは、エマが真下に来るのを見計らって、それがぎっしり詰まった箱をひっくり返した。


ボトッ。


ボトッ。


ボトッボトッボトッボトッボトッボトッボトッボトッボトッボトッボトッボトッボトッボトッボトッボトッボトッボトッボトッボトッボトッボトッボトッボトッボトッボトッボトッボトッボトッボトッボトッボトッボトッボトッボトッボトッボトッボトッボトッボトッボトッボトッボトッボトッ…………。



「ひっいいぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぉぁ!」



最初に悲鳴を上げたのは、運悪くエマの後ろを歩いていた令嬢だった。

エマの頭に初めの一匹が落ちたとき、葉っぱかしらとよく目を凝らしたのがいけなかった。


そのフォルムを、しっかりと目で捉えた直後に大量に降ってきたのだから。


令嬢の悲鳴を合図に、刺繍の授業に向かう令嬢達が皆振り向き、それを目撃することになった。


「ひいういぃぃぃぃいいぃぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


「ぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃゃあぁぁぁぁぁぁ!!!」


「いぃぃぃぃぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!」



大パニックが起きた。


一斉に散り散りに逃げ惑う貴族令嬢達。

中にはその場で気絶し、その気絶した令嬢に躓き倒れる令嬢。

その倒れた令嬢を踏み、逃げる令嬢、倒れる令嬢。

逃げる令嬢と事態の飲み込めない令嬢がぶつかり、また倒れる。

その倒れた令嬢をも踏み倒し、逃げる令嬢、倒れる令嬢。


パニックがパニックを呼び、大勢の令嬢の阿鼻叫喚が学園中に伝染してゆく。

一瞬で学園は地獄と化した。


ロバートやブライアンが想定していない大騒ぎになってしまった。


「ろっロバートさまっこれは、ヤバイですよ!?」


「さっ作戦は、だっ大成功だブライアン…………逃げるぞ!!ざざざざまーみろエマ・スチュワート!!!」


一番の被害者エマを見れば、逃げ惑う令嬢達の中、地面にうずくまり、腰が抜けて歩けないのか、もがいている。


そそくさと逃げる二人以外に、男子生徒は誰もいなかった。

ここは、刺繍の授業へ向かう道なのだから。




「何が起きたんだ!?」


いつも遅刻ギリギリで、授業に来るマリオンが教室に勢いよく入り、いつもの席のいつものメンバーに詰め寄る。

マリオンが例の道を通る頃には、気を失った令嬢が救護室へ運ばれていたり、錯乱した令嬢が叫び続けていたり、躓いて転んだ令嬢が傷の手当てを受けていたり、固まって震えながら泣いている令嬢がいたりする中、異変を察知した王城の騎士が急遽出動し、それの介抱にあたっていた。



騎士に尋ねても首を振るばかりで答えてくれない。

騎士にも何が起きたのかわかっていないようだった。


「ととととととんでもなく、ききき気持ち悪いなっ何かが、いたの」


エマよりほんの10メートルほど遅れて歩いていたフランチェスカが涙目で震えながら答える。


「エ、エマさまの周りに、まるで、エマさまを狙ったように、その何かがエマさまのまっ周りに…………」


思い出すだけで、吐き気が込み上げてくるのかフランチェスカはずっとハンカチを口元に当て、カチカチ歯が鳴るほどに震えている。


「フランチェスカ様、大丈夫ですか?」


マリオンがフランチェスカの肩を抱きしめて尚、止まらない震えに不安を覚える。

一体、何を見たのか。


「私達が来たときにはずっとこんな状態だったのよねケイトリン」


「私達が来たときにはずっとこんな状態だったわキャサリン」


双子も心配そうにフランチェスカの背中を擦っている。


「わっわっわたくし…………え、えエマさまをお助けしししなければ、い、いけなかったのににににに逃げてしししまいまししした。なななんて酷い、わ、わたくしあんなに、え、エマさまによよよよ良くしていいいただいていたのにににに。だ、誰もえ、エマさま、たたたすけてあげられれれれずに…………」


ぽろぽろと大粒の涙を流し、フランチェスカはエマを見捨ててしまったと嘆く。

一目見ただけで、震え上がる大量の何かに囲まれ、エマは蹲っていた。

助けなければと、頭は思うのに、体が、本能がそれに背き、全力で逃げてきてしまった。


「私が見たときには、エマ様はいませんでした。……キャサリン様、ケイトリン様、少しフランチェスカ様をお願いします。救護室へ行ってみます。もしかしたらエマ様が運ばれているかもしれません」


と、マリオンが席を立とうとした時、刺繍の授業の教師ではない男性の教師が入って来た。


「今日の授業は、中止だ。それぞれの家に連絡はしてある。迎えが来たら各自、自宅待機してくれ。寮生は今から私が寮まで送る。学園から事情を聞きに人をやるのでその時は協力してくれ」


寮生のキャサリンとケイトリンが教師に呼ばれる。


「「マリオン様、申し訳ございません。フランチェスカ様をお迎えまでお願い致します」」


この状態のフランチェスカを一人に出来ず、マリオンも了承するしかなかった。


この学園に一体、何が起きたのか。

エマ様は無事なのか。


騎士まで、出動する騒ぎは学園創設以来初めてのことだった。



思いの外、学園大パニックになりました(汗)

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― 新着の感想 ―
エマ以外にこの被害…ロバート…終わったな…
[一言] フランチェスカが不憫すぎる。ロバートおめぇ首洗って待ってろ
[一言] 黒っぽい体躯。 体に対して不自然な程にながい足。 蜘蛛に似て非なるもの。 この世界に存在してはいけないレベルの地球外生命体的フォルム。 なんだ、タタリガミか…とりあえず皇国からアシタカとヤ…
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