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田中家、転生する。  作者: 猪口
辺境の地 パレス
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お茶会。

青い空。


白い雲。


爽やかな風がスチュワート伯爵家の庭に吹く。

第一回目のお茶会は天候にも恵まれガーデンパーティーである。


参加者は思い思いに着飾り、一族の今後の繁栄を期待されながらスチュワート三兄弟の登場を今か今かと待っていた……。


長男ゲオルグは活発で成人する前から狩りに出る剛のもの。


次男ウィリアムは物心ついた頃から稼業を手伝い、勤勉。


長女エマは体が弱く、おとなしい性格で優しい美少女。



これが大半の参加者たちの三兄弟の評価であった。

なぜならスチュワート伯爵家パレス領は辺境の地。

近辺貴族といえど幼い三兄弟を見たことのある者はほぼいなかった。


父レオナルドの親バカフィルターを通して語られる子供達の話でしか情報がなかった。



まさか勉強が嫌いな長男。

虫に夢中の長女。

次男に至っては長女のパシりだとは知る由もない。




「皆様、ようこそスチュワート家のガーデンパーティーへ。どうぞ楽しんで行って下さい」


ありがちな……というよりは投げやりな父レオナルドのおざなりな挨拶から始まり三兄弟が紹介され、使用人たちが一斉に給仕に動き出す。


ゲオルグは慣れない服に、顔をしかめている。

近寄り難いけど、硬派でカッコいいと参加した令嬢が勘違いした。


エマは自分で育てた蚕の絹糸を略式のドレスにしたものを纏い、ぽけっとした表情に見えないように口を結んでいる。

初めてのお茶会に緊張しているんだ。自分が守ってあげないと……と参加した令息の庇護欲をうっかり掻き立てた。


ウィリアムは……可愛い幼女ににっこりしている。

ただただ……美少年がいる。参加した子供達の母親がざわついていた。


三者三様、よく分からない勘違いによって遠巻きに注目される。

そんな中、真っ直ぐ三人に近付いてくる少年が一人。


「ゲオルグ様お久しぶりです!」

唯一三兄弟と交流のあるパレスの豪商の息子ヨシュアだ。濃い茶色の髪と瞳でソバカスがキュートな14歳である。


そこでやっと、ゲオルグに笑顔が戻る。


「久しぶりだなヨシュア!知った顔があると安心するよ!」


そんなゲオルグを可笑しそうにしながらヨシュアは、他の参加者から見れば馴れ馴れしく話し出す。


「なんか面白いことしてるから冷やかしに来たよ」


神妙な顔でゲオルグが応じる。


「誰も母様を止められなかったんだ」


ゲオルグの返事にヨシュアは爆笑した。


「ヨシュアさん!私にスチュワート家の皆さんを紹介して頂けます?」


ヨシュアの後ろからややもっちりした少女が話しかける。


「おっと、これは失礼」


ヨシュアがもっちりした少女を真面目な顔を取り繕いながら紹介する。


「此方は、マレー男爵の御息女ユラリア様です。マレー男爵とはうちの父の仕事の関係で……」


ユラリアと呼ばれた少女がスカートの裾をちょっとつまみ頭を下げ挨拶する。


「ヨシュア…?」


ゲオルグの笑顔が固まる。


「いやぁ可愛いでしょう?ユラリア様!ぜひゲオルグ様の婚約者にと思いましてね!」


ヨシュアの開始3秒の寝返りにゲオルグの笑顔がひきつる。


「あっあとウィリアム様…!此方はガーラント子爵の御息女でキャロライン様です!」


更にウィリアムと同じ年頃の赤毛の少女を紹介する。


「ヨシュア……」


ウィリアムの顔もひきつる。

商人は利益を優先する。豪商の血が流れるヨシュアに友情を期待しては痛い目を見る。

解っているが三兄弟の唯一の同じ年頃の友人なのだ。


「エマ様は僕とお話いたしま……ってあれ?エマ様は?」


エマはいなかった。


さして長くもない紹介に飽きたエマは立食形式のデザートが並ぶ机にケーキを目指しふらふら歩いて行った挙げ句、数人の参加者に囲まれてしまっていた。



「エマさん!僕はモンス伯爵の長男のクリスです!噂どおり可愛い人ですね!」


「エマさん私はジューク侯爵家のグレンです。君!エマさんはおとなしい性格だと聞く、そんな大きな声で話しては驚くだろう?」


ワイワイ、ちょっとしたエマを巡っての牽制すら始まっている。



「すごい……。エマ姉様がモテてる」


「いやいや……なに悠長なこと言ってるんですか!早く助けないと!」


急に余裕をなくしたヨシュアが二人に助けを求める。流石に伯爵家、侯爵家相手にヨシュアが助けに行くわけにはいかない。



「助けにいくって……別に困ってないだろ?エマは?」


「ちゃんと話できてるよ姉様」


ヨシュアが何故かあのエマに淡い恋心を抱いていることを知っている二人だが……さっきの寝返りが効いていて少しいじわるする。



「てかっなんで!エマ様普通に話せてんだよ!いつもなら虫以外の話ガン無視なのに!」


ヨシュアは今日この日のために大量の虫知識を詰め込んで参戦していた。

そしてエマは前世の記憶を思い出したことによりある程度の常識を身に付けていた為、虫以外の会話も普通にできるようになっていた。

ヨシュア、まさかの誤算である。

ゲオルグとウィリアムは初めて見るヨシュアの焦った姿に顔を合わせて笑っている。






普通にできるようになっていた……がエマというか港は困ってはいた。


全員小~中学生や……。


中身は35歳なので子守り気分である。

婚約者として見るにはちょっと微妙な気持ちになる。

さらにはウィリアムが少女と話しているのに一抹の不安を覚える。

ぺぇ太……ロリ好きだったけどあれ大丈夫なのか?


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お巡りさん、コイツです‼︎www
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