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田中家、転生する。  作者: 猪口
スチュワート家と皇国
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王子様にお姫様だっこからの……。

暑いですね。熱中症に気を付けて下さい。

王子様にお姫様だっこ……。


夢見る女子なら憧れのシチュエーションなのだが……。


残念なことに、だっこされている女子ことエマは冷や汗だくだく、後ろに世にも恐ろしいおばあ様がついて来ている。

途中、何度も自分で歩けるから降ろして欲しいとお願いしたが、全く聞き入れてもらえない。


「エマ、まだ痛みはありますか?吐き気や悪寒は?」


心配そうにおばあ様が体調を聞いてくれるが、冷や汗が止まらないだけでいたって健康だ。

最初から痛みなんてないし、そもそも痛いとか一言も言ってないし、吐き気どころか空腹だし、悪寒?寒くはないけど、やらかしてから地味に震えは止まってないがこれはもう条件反射みたいなもんだ。


せっかくのほぼ和食同然の皇国料理をだし巻き卵以外、食べ損ねたことも悲しい。もしかしたら、米も出てきたかもしれない。白米……食べたい。


……いやいやまだだ、諦めたらそこで試合終了だ。


まだ望みはある。


「あの……ご心配なさらないで下さい。本当に、大丈夫です」


あれだけ騒がしたので、晩餐会に戻るのは難しいかもしれないが、せめて、せめてご飯は食べたい。

大分、顔色も良くなったね。少し休んで食べられそうなら、今日の料理を部屋に運んでもらおう…………って言ってくれるのを期待したが、王子は気遣わしげな笑顔をくれるだけだった。


お姫様だっこでいつもより顔が近い位置にあるので、一か八かテレパシーよ届け、と念を込めて王子を見つめてみるが、フイっと目を逸らされてしまう。

テレパシー失敗。目は口ほどにものを言わなかった。


逸らされた王子の顔が少し赤い……。

心なしか心音も大きく聞こえる。まあ、お姫様だっこで密着してたら心臓の音くらい聞こえるか……。


ん?


あれ?


いやいや。


もしかして王子………?


ああっ……!


こんな事に気付かないなんて……。


なんて鈍いんだ私は!


「あのっ王子、やっぱり降ろして下さい。私……重たい……ですよ……ね?」


エマが平均より小柄で細いとはいっても、人ひとりを持ち上げているのだから重くない訳がない。

そりゃ、顔も赤くなるし心拍数だって上がる。

体格のいいお父様ならまだしも、年の近い王子には(エマ)が重い筈だ。


「っ!重くない。むしろ軽いくらいだエマ。もっと食べた方がいい。心配になる」


王子は学園での昼休憩に王城へ帰って仕事をするために、エマが食堂で毎日おかわりして食べることを知らない。

お姫様だっこされただけで心配されるなんてもうこれは、才能だと割りきるしかないのか。人から心配される才能を持って生まれてきてしまったのかもしれない。転生ものってほら、何かしらで残念な能力持ってたりするし。


結局、降りることも出来ず、王子の腕の中に大人しく収まる。

出会ってから一年で王子も随分逞しくなったなーなんて思っていると、王城のメイドが小走りに近づいて来た。


休める部屋の用意ができたと言って、案内してくれるみたいだ。

さすが王城のメイドさん、仕事が……早い。


「あっあのっごめんなさい。こんな忙しい晩餐会の日に仕事を増やしてしまって。ご迷惑をおかけします」


……と先を歩くメイドの背中に向けて思わず謝る。

会社に勤めた記憶があるので、余計に申し訳ない気持ちが込み上げる。非定常作業の日は、いつもより忙しいものだし、トラブルがあればてんやわんやである。

それが、不可抗力とは言え、仮病で世話をかけるなんて、もうほんと心苦しい。


「そんなっ勿体ない御言葉……お気になさらないで下さい」


エマに話しかけられ驚いたのか、メイドが振り向いておろおろと両手を突き出して手を横に振る。かわいい。これは、和む。癒しをありがとうメイドさん。


「こ、こちらのお部屋です。スチュワート伯爵家には使いを王城から出しましたので、安心して下さいね」


リアル生メイドのかわいい仕草に和んで癒されたところに、またまた冷や汗が増加しそうな情報をぶちこまれた。


まさかの、親連絡……。


今日は、おばあ様もいるし問題なんて起こさないわ!っと息巻いて屋敷を出たのが、ほんの一時間半前の出来事なのだ。

舌の根も乾かぬうちにとは、まさにこの事だ……。


ショックやら、情けないやらで、お姫様だっこされていることを忘れて、ぐたーと体の力をついうっかり抜いてしまう。


「あっエマ!大丈夫か?」


「殿下、早くベッドへ運んで下さい!」


しまった。


と思ったがもう遅い。再び体に力を戻す前に、ふかふかのベッドに優しく降ろされる。


「エマ、意識はありますか!?」


「エマ!!」


「エマ様!」


おばあ様と王子とメイドさんが代わる代わる名前を呼んでくれる。

紛らわしいことしてすいません本当に、私、全然、元気なんです。なんで誰も信じてくれないのか……。


「大丈夫です。王子、申し訳ございません、少し力が抜けてしまって……」


重くなかったですか?と聞こうとした言葉を遮られ、王子が叫ぶ。


「いっ医者を、医者を呼べ!!早く!!!」


パタパタとメイドさんが走って部屋を出て行く。


…………。


騒ぎは向こうからやって来るが、もしかしたらエマはそれを何倍も大きくしてしまう天才かもしれない。何をしても何を言っても裏目にしか出ない。



今日、厄日だっけ?





王子の出番を増やそう、王子の格好いいエピソードが欲しい!と思って書いたのですが……ん?これは王子格好いいのか?な展開になっちゃいました……。

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― 新着の感想 ―
後書きですが、第3者の目で見ると格好良いですよ。 小さな淑女の異変に素早く行動に移し、他の者に任せずに自分でやる。 そして、万が一も視野に入れて医者を呼ぶ。 充分に先生の意図の通りに格好良い王子様です…
格好良さより、甲斐甲斐しさが伝わっても良いじゃないですか
[一言] 王子の出番が増えるのはいいですが、王子は残念王子ポジなので恋は実らないで欲しいですww
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