第二回田中家家族会議。
アーバンが旧友に会いに行っている間に一家はエマの小屋に集まった。第二回田中家家族会議である。
議題はアーバンから投下された王子と姫案件である。
「もう一度、手紙を精査した所、この手紙ではないかと……」
母、メルサがすっと手紙を出す。
仮に王子と姫が関わる手紙なら付いているだろう封蝋はロイヤルマークではなく、パレスから少し離れた侯爵家の家紋が押されていた。
アーバンが使いに会ったと言うキアリー領の隣の領を治めるバレリー侯爵家である。
確か、娘が側室として王家に入っていた。第二王子と王家唯一の姫の母親である。
「手紙を読む限り、王子と姫を思わせる内容は見受けられないね」
二度じっくりと読んでからレオナルドはため息をつく。
ゲオルグ、エマ、ウィリアムの順で手紙に目を通すが同じ意見である。
「お母様がこの手紙の方の参加を断った理由は?」
ゲオルグが質問する。
前回のお茶会では、男爵家や子爵家の参加者もいた。家格順で参加を絞るなら断られようのない侯爵家である。
「第一に、全く親交のないお家だったこと。第二に王都周辺とは違ってこの辺の領は土地が広大だから、出来るだけ馬車で3時間以内で着くお家の方々を優先したこと。第三に文章がちょっと偉そうでイラッとしたことかしら」
第三以外はまともな理由である。
それも、差出人が王族なら偉そうではなく此方が平伏するのが当たり前である。
「このまま無視しちゃったら駄目ですかね?」
ウィリアムが期待を込めて言ってみる。
王家とお近づきになりたい貴族は山ほどいるが、残念なスチュワート家は違った。王家に近付くと言うことはそれだけ面倒事が増えると言うことである。穏便に平和に事なかれ主義をモットーにしている。転生に気付いてからはより強く思うようになった。
父レオナルドが首を振る。
「アーバンの話がなかったら気付かなかったままで良かったけど……」
わざわざ、王子と姫の使いが、今度は是非招待して欲しいと伝えてきたのだ。
王家の頼みは絶対である。
さっさと次のお茶会企画して呼べと言われているのも同然の話なのだ。
「……自分達がわざわざ気付かれないように小細工しといて?」
エマがもやもやした気持ちで文句を言う。
お茶会の利点なんて、ケーキを食べられる事だけでそれ以外に良さは全くない。
知らない人と話すのも猫を被るのもめんどくさい。
「エマ。言いたいことはわかるけどここだけにしときなさい。不敬罪で捕まるわよ」
誰がどこで聞いているかわからない。使用人の中でも王族信者がいれば密告される可能性もある。
「この場合の……正解は?」
ゲオルグがうんざりしたように結論を聞く。
「さっさと次のお茶会企画して招待する。……かな?」
レオナルドが答える。それ以外はなかった。
家族全員が同時にため息をつく。
(めんどくせー)
それはお茶会に乗り気だった母メルサも同様で孫の顔は見たいが気は使いたくないと言う気持ちがあった。
「それなら、他の招待客は王族とお近づきになりたそうなお家をピックアップしようかしら。恩を売れるし、うちの子達に関わる時間も減るでしょ?」
せめてもの意趣返しだと母は悪い顔をしていた。