表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
田中家、転生する。  作者: 猪口
スチュワート家と帝国の暗躍
150/198

事前に説明した通り。

誤字、脱字報告に感謝致します。

「あー……うん。事前に説明した通り、参加者には各自が用意した馬車かテントで寝泊まりしてもらう。周りを見れば分かるように結界近くには宿泊施設どころか民家もない。そのために君たちはそれぞれ同行した保護者…………に身の回りの世話や万が一魔物に出くわした時に対応する護衛を付けて来てもらった訳…………なの………だ………が……。あの、えーと……スチュワート伯爵?」


課外授業初日、魔物学(いかつい)と狩人の実技(いかつい)の教師が概要説明をするために生徒、保護者を集めたミーティングを始めたまでは良かったが。

生徒も、同行した保護者もザワザワとしている。

経験豊富な教師でさえも戸惑っていた。


「ん? どうかしましたか? ヴォルフガング先生?」


説明中にいきなり名指しされた、レオナルド・スチュワートは首を傾げる。


「……あの、私の見間違いでなければ、一家総出の参加ですか?」


スチュワート三兄弟の後ろに保護者として控えているのは、どう見ても父親のレオナルド・スチュワート伯爵。

さらに母親のメルサ・スチュワート伯爵夫人。

そして、叔父のアーバン・スチュワート。

であった。


「ほら、叔父様が参加しているから皆驚いてるわ」


アーバン叔父様はとっても優秀な成績で大学を卒業したから王都では有名人なのだろう、とざわざわ、ちらちらとこちらを窺う参加者の様子にエマが叔父に笑いかける。


「……いや、姉様? 違いますよ? 学園では姉様死にかけている説が横行していたので皆……ゾンビでも出たのかと驚いているのですよ?」


ウィリアムが呑気な姉にため息混じりに注意する。


「ん? なんか、他の奴らの保護者……メイドと護衛っぽい格好の人多くないか? 保護者って親じゃなかったんじゃ……」


ゲオルグが周りの顔ぶれと我が家の面々の違いに気付く。


「あら、保護者の定義が違ったかしら? どうしましょう、あなた。注目されてしまってますわ。きっと子供達が言ったどれかが皆さん気になるのね」


目立つのは良くないとメルサが困ったように頬に手をやりレオナルドを見る。


「っ全部です!」


教師がスチュワート家の会話に口を出す。


「「「「「え?」」」」」


「全部です。ええ、ええ、その全部ですよ!? 何故、パレス領に領主代行として着任したはずのアーバン・スチュワート博士がここに? おい、エマ・スチュワート、お前体大丈夫なのか!? 先生心配していたんだぞ? あと、伯爵も夫人も参加って!? メイドは!? 身の回りの世話はどうするのだ!? 令嬢の参加者がいるのにも今年は驚いたというのに伯爵家の夫人がこんな危険な場所へ来るなんて……」


魔物学教師、ヴォルフガング・ガリアーノは参加者全員が思っていたことを一気に発露する。


「ん? ああ、夏休みに帰って来ると思っていた可愛い姪が帰って来なかったから………来ちゃった!」


てへっと姪狂いのアーバンが頭を掻く。

夜中に突然、一人暮らしの彼氏のアパートにやってくる彼女かよ……僕はそんな経験一度もしたことないけどねっとウィリアムは心の中で悲しい突っ込みをする。


「親戚が集まった時に話し合って(誰がエマに会いに行くか大喧嘩の末)、パレスは父の従兄弟に(押し付けた)任せてありますのでご心配なく」


領主代行代行がしっかり辺境を守っていますとアーバンはグッと親指を立てる。


「先生! 私、元気ですわ!」


はいはーいと手を挙げてエマが教師に元気アピールする。

勢いづいて、足元の小石に躓くもアーバンがスマートな仕草でしっかりと支える。


「エマ大丈夫?」


「叔父様、ありがとう」


姪と叔父の何気ない仕草だったが、それを見た参加者達はぐぅっと喉を詰まらせる。


エマ様はもう長くない。

その事実は変わらない。

辺境にいる筈のアーバン博士が駆けつけるほど病状は悪化の一途をたどっている。

だが、辺境の領主の子供であるゲオルグとウィリアムが課外授業に参加しないわけにはいかない。

それならば、残りの少ない時間を家族で過ごすためにエマ様は病んだ体に鞭打って課外授業に参加を決意したと……。


駄目だ、我々が泣いては気丈に振る舞うエマ様や家族の努力に水を差してしまう……。


参加者達は膨れ上がる想像と込み上げる涙を堪え、必死で鼻を啜る。


「? 皆さん花粉症かしら? この時期に珍しいですわね」


周りの様子にエマがハンカチをお配りした方がいいかしらと思案する。


「………な……るほど。ですが、あの。一人のメイドも付けないのはどうかと……」


スチュワート家の残り二人の保護者は格好から見ても狩人だろう。

一人は大きな弓を持ち、もう一人は長槍を持っている。

そうなると身の回りの食事やら洗濯などの世話をする者が見当たらない。

特に今回は夫人もエマ嬢もいるのだ。

課外授業用に動きやすいドレスを着ているが、脱ぎ着の支度もあるのに……。


「自分の世話くらい自分でできま……あっ! ……ごほんっ……えーと何とかなりますから」


メルサが不自然に言葉を濁す。

何でもできるが何でもできては貴族として当たり前ではないことに気づいたのだ。


「何とかって……大丈夫なのですか?」


まさか何も考えていないとか? 狩人の教師が訝しげにスチュワート家メンバーを見る。


「あ、あの先生? メイドは私達の連れてきた者に手伝わせますから」


「そ、そうなのです! 私や、キャサリン様、ケイトリン様の護衛は魔物なんて相手にしたことがないので、えーと、代わりにスチュワート家の腕利きの狩人さんには私達の護衛も気にかけてもらうというお約束をしておりますの」


教師から突っ込まれれば突っ込まれるほどに墓穴を掘りそうなスチュワート家をマリオンとフランチェスカがフォローする。

エマと半年以上も同じ授業を受けていれば自然と身に付いてしまう悲しい能力だった。


「シモンズ領では絶対魔物なんて見れないものね? ケイトリン」


「シモンズ領では絶対魔物なんて見れないわ、キャサリン」


双子は早く魔物見たいわねと頷き合っている。


「えぇ! もごぉ……(ヒソ)レオナルド様、俺らも魔物なんて見たことないんですけど……」


弓と長槍を持っていた二人が令嬢のフォローを聞いて声を上げたところをレオナルドに口を塞がれて、声を落として訴える。

彼らはレオナルドが王都でパレスの狩人にとスカウトしていた二人だった。

丁度良いので、魔物を前にしてどれだけ動けるかを見てみようと連れて来たのだ。


「(ヒソ)こら、今、なんとか収まりそうなんだから黙ってろ。私とアーバンとゲオルグの側に居ればまず死にはしないから……多分」


「(ヒソ)多分って!」


「(ヒソ)そこは百パーセント大丈夫って言ってくださいよぉ!」


「まあ、魔物の種類によるからな。ドラゴンとか出たら諦めろ。飛ぶ系は結構アレだからな……」


「と、父様!」


ウィリアムがコソコソ喋っているレオナルドをつつく。

教師がじーっと疑いの目で静かに様子を見守っていた。


「だっ大丈夫ですからー! にひっ」


にひひひひっとレオナルドに合わせて家族全員が胡散臭い笑みを教師に送る。


「はぁーー。もうすぐ国王陛下が到着されます。今日から十日間、皆気を引き締めること。ここは安全を保証された王都ではなく、辺境の魔物の出る領であることを肝に銘じて行動するように。では、食事や寝床の準備にかかってくれ」


絶対に何か隠しているのは明確だが、国王の到着も迫っている。

これ以上、慣れない野宿の準備時間を削る訳にはいかないと教師は追及を諦めた。

知らない方が良い事が世の中にはたくさんあるのだ。


「おーいアーバンにゲオルグ、テント立てるからオワタで作った支柱運ぶぞぉ」


ん? オワタ?


「あら、テント用に作ったエマシルク(ヴァイオレット混紡の防水仕様)、どっちの馬車に入れたかしら?」


エマ……シルクをテントに!?


「ふふふ、今日のために作った飯盒はんごうでお米が炊けるわ。やっぱりキャンプといえばカレーよね。ウィリアムー?私、火をおこすから頃合いの枯れ枝拾って来てー?」


死にかけの伯爵家の令嬢がナチュラルに火おこし!?


知らない方が良い事が世の中にはたくさんあるのだ。

見てはいけない……と教師達は本気で目を逸らした。







シリアス「プグハァ! なんじゃあこりゃあー! ゲホっ!」

ピンチ「シリアス、しっかりしろぉー! 虫の息じゃないか!?」

シリアス「もう、俺は……だ…め…だ。ガクゥ……」

ピンチ「シリアス? おい、嘘だろ? シリアス? シリアスぅーー! たった一話で何があったんだ!?」


コメディ「ぷっはぁーー! たまに働くと酒が美味ぇなこりゃ!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=oncont_access.php?citi_cont_id=412279493&s
― 新着の感想 ―
お、他にもあと一人を気にしている人がいた。 一枠空いていたら間違いなくヨシュアがハマりにくると思っていたけど思いの外息を潜めてるな。 一旦別行動でヒューと諜報活動してるのかな?
保護者は1人につき2人… つまり6人までOK… 感想欄でも誰も気にしてないけど、あと1人は?
[一言] コメディ「オラオラァ、ピンチお前も飲め飲め!」 ピンチ「エブッ、グゴゴゴゴ。ゲフッゴパッ、くっ、ここまで・・・か。ガクッ」
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ