まってよ、すらいむ。
「え、ちょ、すらいむ…さん?」
動揺しすぎて変な日本語になる。
「ドウかされマしたか?しョうたサん?」
とぼけたような顔をするすらいむ(?)。
どうしたのか、とすらいむは寄ってくる。
不覚にもまだまだ幼い息子は反応した。
「まっ、待って、こっち来ちゃっ…あうっ」
そのまま後退すると床に放置してあった絵の具セットにつまづいた。
ガシャン!バサバサ…
絵の具セットは散乱し、体制を立て直そうと手をかけた本棚の漫画も散乱した。
「いてて…」
僕は頭を抱える。
「翔太ー?どうしたのー?」
さすがに母親が上がってきた。
トン、トン、とスリッパが階段を叩く。
「す、すらいむ、とりあえず隠れて!」
トン。
痛い頭をフル回転させる。
トン。
「ド、どコに…?」
トン。
おろおろとしたすらいむも綺麗…じゃなくて。
パタ。
「く、クローゼットだ。」
パタ。
すらいむが隠れたのを見ると、ほっと息をついた。
ガチャ。
扉が開かれた。
母親が目撃したのは散乱した絵の具セット、漫画。
ここまでは良い。
しかし、ズボン越しでも分かる元気な息子の息子とグラビアがある「そういう」漫画。
それらを見てしまった。
彼が叱りつけられたのは言うまでもないし、押し入れに閉じ込められたのも勘のいい人なら察しただろう。
また、な ぜ かその日の分の日記は無く、次の日の朝宝物を捨てられたと親友に話していたそうだ。