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第五話 学園祭で。

やってきました、学園祭。


午前中は図書室の展示コーナーに付きっきりで、何かあれば説明を行うことになっている。

午後は先生が受け持ってくれるので、ありがたい限り。あれ、今思ったんだけど、一人で展示作るっておかしいんじゃないだろうか。


……まあいいか、と誰もいないのを見計らってスマートホンを見る。


「ハルちゃんからのチャットは無し、か」


私は希望を捨てずにいることにした。

今日ハルちゃんに会うことが出来たのなら、どんな話をしようかなんてことも考えている。

オススメの本コーナーにはこれまでハルちゃんと話したことのない本を揃えている。

これまで話した内容よりは、今まで話さなかった物の方がいいかと思って。


この学校の図書室は最上階の四階にある。しかもご丁寧に廊下の端っこ。

そんな立地条件にも関わらず、意外と多くの生徒や親御さん方が来られた。

やはり本は皆が読めるものでなくては。あまり好きではないという人も来ていたが、私の本は素晴らしいぞトークによって興味を持ってくれたりした。

その時にいた周りの人は何だか私から距離を取っていたけど、どうしてだろう?

そしてハルちゃんからの連絡はないまま、時間は刻々と過ぎていく。


そしてお昼になり、先生とバトンタッチした私は様々な展示や出店を見て回っていた。

沢山のポスターが貼られている廊下には沢山の人がひしめきあっている。

休憩所になっている教室でフランクフルトや焼きそばを食べていると何やら周りが騒がしい。


「ねぇ、大丈夫かなあの人」


「さっきのってあいつだよね、長瀬。あいつ怒らせたらやばいよ」


「話しかけられてた人も制服着てたけど見たことないよね?」


「あ、俺見たことあるぜ。去年長瀬に虐められてたやつだ」


「そうそう、なんだっけな。……そうそう、新波晴って名前だ」


私はなり振り構わず走りだした。

食べかけの焼きそばも置いたまま、騒ぎの中心であろう校門付近へと。

あまり運動は得意じゃないけど、今私は最速スピードを更新してるんじゃないだろうか。

息切れも激しく校門付近についたが、それらしき影は見当たらない。

代わりにさっきの話で出ていた長瀬を見つけた。彼は学校でも有名な悪、私でも知っているくらいだ。


「はぁ、はぁ、な、長瀬くんだよね?」


「あ?なんだお前」


「ごめんごめん、私は同じ二年の飯川由鶴。さっきハルちゃん、新波さんと話してたって聞いたんだけど」


「ハルちゃん?お前あいつの知り合いなのかよ」


「ええ、友達よ」


「……そうか。あいつなら校舎の方に逃げてったよ。あーあ、折角チャンスだったのに」


「くっ、入れ違いになっちゃったか。で、チャンスって何よ?ハルちゃんを虐めるなんて言うなら私が相手になるわよ」


「お前が?いや、どうみても闘えなさそうなんだが」


「物量で勝負よ」


私は背中のリュックを降ろして中身を取り出し、臨戦態勢に。ハードカバーの本だ、それも太め。もしも攻撃に使ったらごめんなさい。


「おっかねえなぁ。……別にあいつを虐めようなんて思ってねえよ」


「なら何がチャンスなのよ」


「……ろうと」


「何?聞こえないわよ」


私の言葉に苛ついたのか、長瀬くんは髪を掻いた後、校舎の壁沿いに私を連行し周りに聞こえないくらいの音量で語った。


「あいつに、謝ろうと思ってたんだよ、悪いか?」


あれ?こいつ、反省してるの?


「何意外そうな顔してんだよ。あいつには、悪いことしちまったから」


どうも、嘘ではなさそう。嘘だったら私にこんなことを伝えなくてもいいし、何より彼の力なら私も一緒に虐めることが可能だろう。

どうやら私が思っていたほど深刻では無いらしい。だけどそれなら何故ハルちゃんは逃げたのだろう?


「俺のせいだからな、怯えられちまったよ」


私が聞くと素直にそう返してくれた。そのまま長瀬くんは人混みへと消えていったけど、また今度ハルちゃんの分の仕返しでも考えてあげよう。

さて、ハルちゃんは校舎に逃げたって言ってたし、探そう。

まずはチャットを送ろう、と思ってアプリを開くと一つのメッセージが。


『ごめん、学校まで来たんだけど、帰るね』


メッセージは今着たばかりみたいだし、まだ学校にいるはず。


でも思えば顔も知らない相手をどうやって見つければいいんだろう。


困ったと顔を上げた私には、壁に貼られた一つのポスターが目に入った。


これがきっと、私がハルちゃんに出来る最後の事かもしれない。















『ハルちゃん、帰る前に一度だけでいいから、体育館に来て』

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