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第三話 私は知った。

『ハルちゃん、起きてる?』


『はい、大丈夫ですよ』


『もしかして、もしかして何だけど』


『ハルちゃんの名前って新波晴(しんなみはる)、だったりするのかな?』


『何処で、私の名前を?』


『偶然。私と同じ学校だよ!』


『そう、ですか』


『あれ?嬉しくない?』


『いえ、ユズルさんと一緒の学校はすごく嬉しいです。でも、私の名前を知ったということは、学校に行かない理由も』


『うん、ごめんね。偶然でも事情を聞いちゃって本当にごめん。でも考えちゃったんだ。ハルちゃんと一緒に学校生活を遅れたのなら、どれだけ楽しいんだろうなって』


『……ユズルさん。ありがとうございます』


『どうかな?一度学校に行ってみたり』


『すみません。今は、まだ』


『いいのいいの!ハルちゃんが来たくなったらでいいから』


『もしも、もしも来たくなったら言ってね。何が合っても私が助けてあげるよ!』


『ありがとうございます』


「やっぱり、無理だったかぁ」


私はスマートホンを閉じてベッドに倒れこんだ。

そしてこうなるに至った、運命のような出来事を反芻する。




今日も学園祭の準備で図書室に篭っていた。

ふと目に入った本が気になって学校に行ってない人、いわゆる引き籠もりの人が社会に出るまでを描いた本を手に取った。

知らないうちに集中して読んでしまったらしく、いつの間にか入ってきていた図書室担当の先生に肩を叩かれた。


「あら、飯川さん。また新しい本を読んでるのね」


「先生。ちょっと気になる本が見つかって」


「何々、引き籠もりの人の話ねぇ。……そういえばこの学校にも一人いたかしら」


以前のハルちゃんとの会話もあってか、その引き籠もりの人に興味が惹かれた。


「そうなんですか。因みに原因とかって」


「ごめんねぇ、それは言えないのよ」


「そうですよね、すみません」


「うーん、本当は言っちゃ駄目って言われてるんだけど、名前くらいならいいかしら?」


思い出そうとしているのか、それとも言うか言わまいか悩んでいるのか。

顎に手を当てた先生は一息吐いたあと、その名前を口にした。


「その子の名前は新波晴。生徒の間では噂されているかもしれないけど、一応口外はやめてね」


「はい、分かりました」


その名前に、心臓がドクリと跳ねた。

偶然かもしれない。

そんな可能性は零に等しいはずだ。

でもその時、新波晴という名前は確かに私の心に突き刺さったのだ。




「まさか本当にハルちゃんだったなんて」


ハルちゃんを追い詰めてしまったかもしれない罪悪感と、ハルちゃんと同じ学校だった幸福感に板挟みされている。

でも、一つ心に決めたことがある。


「私は、絶対にハルちゃんと楽しい高校生活を送ってみせる」


そのための一歩。まずは、学園祭に来てもらうんだ。

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