1.光を浴びない姫
「おはようございます、シーラ姫様。気分はいかがでしょうか?」
「……」
私はジニオン国の国王の娘である。
両親に兄2人。
母は私を産んだ後すぐに他界した。
その後、父が私を城の地下牢に閉じ込めたのは言うまでもない。
女に男と同じような生活を送る資格は無いと。
与えられるのは朝・夜の二食と水が3杯。
着ている服も昔ので小さくボロボロで汚れていた。
私に料理を運ぶメイドは、昔から私に仕えていたものでいつも服を新調して持ってきてくれるのだが父に見つかっては切り刻まれてしまう。
「シーラ姫様。シーラ姫様」
メイドがコソコソっと小声で近くに寄ってきた。
「何?」
「これを。今日、庭師から頂いたんです。新鮮ですから早いところ食べてください」
渡されたのは真っ赤な林檎だった。
「…いいの?」
「勿論です。さぁ、早くしないと見張りが来ます」
メイドに急かされ、林檎を素早く1口食べた。
みずみずしさと、甘さが口いっぱいに広がる。
「美味しい…ありがとう」
「いえ。また貰えたら貰ってきますね。それでは失礼します。くれぐれもお身体には気をつけて」
メイドは深く頭を下げると牢屋から出ていった。
数十分すると荒々しく扉が開く音がし、複数の足音が牢屋の前まで近づいてきた。
「シーラ。生きてるか?」
「はい、お父様」
父と兄2人は決まった時刻に見回りにくる。
あまり力の入らない体を折り曲げ地面に額をつけた。
「今日はお前に朗報だ。あと3日でここから出られる。何故か分かるか?」
「いえ…」
その瞬間、銀が擦れる音がした。
「顔を上げよ。シーラ」
「っ…」
延びてきた剣が私の顎下に触れた。
力強く持ち上げられ、上を向けば父と兄2人。
そして3人が仕える竜3体が私を見ていた。
「お前と結婚をしたいと言う王子がいてな。隣の国のカーク王子だ。3日後に面通りをする。お前に拒否権は無い。以上だ」
剣がスルリと抜かれ脱力し、そのまま頭を床につけた。
「フン。情けない。だから女は弱いのだ」
父はマントを翻すと颯爽と兄と共に牢屋を去っていった。
死ぬまでここにいるか。
家畜のような生活でも日の光を浴びて生活するか。
私の中で答えはもう決まっていた。
心の中で強く誓いながら、そのまま眠りへと落ちていった。