クリスマスの前に
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ユリの言ったことは正しかった。一日が五分減っても、もう五分減っても、青目が現れること以外、世界に特段変わったことは起きなかった。ネットでは原因も含め、色々と議論が交わされていたが、結論には至ることがなかった。世界が変化に順応しているということだ。
カレンダーが示す日付は、十二月二十五日。一日は、二十三時間三十五分になり、二十一日からの時間のずれを総計すると、一時間五分に達していた。
「巧真さんッ。今日はどこに行きますか?」
布団に潜っていた巧真に容赦なくのしかかりながらユリは言った。
「行くの確定なんだな」
巧真は布団から顔を出し、元気にはしゃぐユリを、子供を見るような目で見る。
「何でも言うこと聞くって言ったじゃないですか」
ユリの青い瞳は青空のようにきらきらと輝いていた。
「内容によるって言っただろ」
「今日はクリスマスですよ、クリスマス」
「知ってるよ」
「それなのに家に引きこもるんですか?」
「毎年そうだったよ。それに、どっかの外国ではクリスマスは家族で過ごすって決まってるんだ。恋人と過ごすなんてやつは野蛮だよ」
「と、自分に言い聞かせていたんですね? でも、もう大丈夫です! 今年は私がいますから」
今年は。その言い方に少し引っ掛かってしまった。
今回のことが解決すれば、ユリが巧真と一緒にいる理由はなくなる。そんなことはわかっていた。しかし、巧真の生活の中にユリがいることがいつの間にか当たり前になっていた。まだ数日しか一緒に暮らしていないのに、おかしな話だった。それでも、巧真にとってユリはかけがえのない存在になっていたのだ。
いっそ、解決しなければいいと思った。解決しなれば、ずっとユリと一緒にいることができる。例えそれが、どれだけの人を巻き込もうとも……。
「ユリが……ね」
巧真はちょっと嫌そうに言ってみる。
「不満ですか?」
ぷうと頬を膨らませて足をばたつかせるユリを巧真は愛おしく感じた。――のはまあいいのだが、腹上で動かれると身体が潰れそうになるのでやめてほしかった。
「不満じゃないけど、とりあえずどいてくれるかな」
「嫌です」
小学生かよ、と巧真は思った。
巧真は無理矢理身体を起こし、足のほうにころころと転がっていくユリを手で押さえる。その時、右手がちょうどユリの胸部に来ていたが、柔らかさは微塵も感じられなかった。
「巧真さん……当たってます」
「何が……?」
次の瞬間、巧真の頭上でお星様が輝いていた。




