激突!タイニーウルフ!
アレイは一先ず洞窟を出るのを中断し、延術・二重を唱えた。そして背中に術翅が産み出されるのを確認すると現存唱えられる中で一番手数の多い無属性初級下位、魔弾を術式待機させ、術翅に使用する魔術をセットする。
今回援護で使うものは闇属性初級下位魔術にした。本来は初級魔術とは応用性が高く威力や範囲を弄り易いが、術翅で使う場合は細かくは設定できない。なので一番難易度の低くかつ実用性の高い闇属性初級下位魔術、闇槍。この魔術は中空より闇属性の槍を出現させ対象を貫く属性魔術になる。
さて、準備はできたな、
アレイは自らの準備が整うと今一度タイニーウルフを見る。するとタイニーウルフは既に臨戦態勢に入っており腰を落とし火属性初級下位の炎弾を産みだし待機していた。
そして、アレイは洞窟の外に飛び出すと同時に術翅を発動し自らも待機させている魔術を唱える。
「魔弾!!」
アレイが魔術を唱えると、タイニーウルフも一声吠え魔術を飛ばしてきた。中空に待機させていた炎弾の数はゆうに50を越えていたが、それをアレイは自らの魔弾により全て相殺する。
追い討ちを描けるように術翅より闇槍で攻撃するがタイニーウルフはそれを紙一重に全てを避けていく。それを見てアレイはすかさず魔術を使用する。
「術式・土の踊り《アラジエイト》」
使用する魔術は術式魔術の土属性中級下位の魔術だった。効果としては対象周囲の地面より土の槍を出現させ貫く魔術だ、アレイは同一系統の魔術を使い追い込もうとするが、タイニーウルフは土の槍が当たる瞬間に魔闘技を発動し身体全体の強化を行い魔術を防いだ。
魔闘技とは魔力を用いて身体能力を大幅に向上させるスキルであり、近距離戦闘を生業とする冒険者が持っている事の多いスキルであった。
そして魔闘技を纏ったタイニーウルフは土の槍を防ぐと、次々と産み出される闇槍を置き去りにしながらアレイに向け一気に走り出し一瞬でたどり着き鋭い爪で引き裂こうとするが、アレイはタイニーウルフが魔闘技をつかった瞬間に物理障壁を展開していた。
甲高い音と共に幾重にも張った障壁が引き裂かれるのを確認するとアレイはほぼゼロ距離にいるタイニーウルフの頭に手を向け、超至近距離より魔術を発動する。
「爆炎!!」
超至近距離より発動する属性魔術上級下位の爆炎はタイニーウルフに直撃し、アレイはその巨体をふっとばす事に成功した。木々を薙ぎ倒しながら飛んでいくタイニーウルフを見ながらアレイは連続で魔術を使用する
「術式・虐風刃!!」
追い討ちとして使用する魔術は対象の周囲に100を越える風の刃を出現させ、切り刻む術式魔術だった。タイニーウルフはそれをくらい身体中から血を流すが、スキル自己再生により目に見える早さで回復していく。だが、自己再生中は他の自己再生持ちの魔物と同じらしく、止まっていないとその化け物染みた回復力は継続しないようだった。アレイは完全に止めを指すために、術翅に魔力を注ぎ込み、闇槍の出現スピードを早くし自らも魔術を唱えようした。
自己再生をして、闇槍に貫かれる事を繰り返しているとタイニーウルフは突然吠えだした。
アレイは仲間を呼ぼうとしていると思い、止めの魔術を使おうとして魔力を収束させ唱えようとするとタイニーウルフが今度はか細い声で鳴き出した。
流石に怪訝に思いアレイは一旦、攻撃から拘束に切り替えて魔術を発動する。
「術式・氷鎖」
大気中の水分を凍らせ対象の行動を束縛する魔術によりタイニーウルフを拘束すると、アレイは術翅を一旦止めて能力創造により万能言語を作りタイニーウルフに話し掛ける。
「急になんだよ、お前俺を殺そうとしただろ?」
アレイは思ったままにタイニーウルフに話し掛けた。
「確かに我は貴方に勝負を挑んだが、もう敗北した。
できたら我を配下にしてしてほしい。」
アレイは今まで戦っていた魔物にそんな事を言われ、戸惑い返答を考えているとタイニーウルフは続けて話し出した。
「我は、魔物でありながら意識を持つ。それは我のもつ王の証による恩恵だと知っている.....我は生まれてからこのかた敗北をしたことがない。だが今回初めて完膚無きまでに敗北して思ったのが、自分より強いものに対する憧れだった。だから我を仲間にしてくれないか?」
アレイはやはり目の前にいる神々しい雰囲気をもつ狼を睨み付けながら考える、そして話しかけた。
「でもお前をここで仲間にしても、傷が癒えて魔力が回復したら復讐するだろ。」
アレイは的を得た様に言うと、タイニーウルフは首を横に強く降り話し出した。
「その心配はいらない、我の知識の中に魔物を服従させる魔術がある。それを使い我を汝の配下にしてくれ。」
そう言うとタイニーウルフは術式の説明をアレイにした。アレイはタイニーウルフの語った術式を確認すると確かにこの術式は唱えると、魔物が受け入れている場合のみ魔物をその術者の配下にする魔術だった。
それをアレイは確認すると、ため息を付きタイニーウルフに話しかけた。
「……わかった。じゃあお前を配下にするよ。」
「ありがたい!よろしく頼む!」
アレイが言った瞬間にタイニーウルフは尻尾を降りながら、待機していた。それを見てもう一度アレイはため息を着くと術式を発動する。
「術式・異変同化」
術式を発動するとタイニーウルフの足元に魔方陣が出現し、魔方陣がだんだんタイニーウルフに溶けていくように吸収されていくと、最後に目映い光を放った。
目映い光がおさまると、そこにはタイニーウルフの姿は無く代わりに黒髪で後ろ髪が腰までありアレイより頭1つ分背の高い男が黒色の着物を着て腰に刀を差し立っていた。
「……ん?」
アレイは目を細めながら目の前の男を確認すると、男はにやっと笑い話しかけてきた。
「これで術式は完了した。主よ名を授けてくれないか?」
男はしてやったりの表情を浮かべアレイに聞いた。それを聞きアレイはタイニーウルフが人間の姿になったと言うことが解ると驚愕の表情を浮かべた
「はあ!?なんで狼がそうなんだよ!……意味わかんねー」
アレイは目の前の謎現象に驚きながらも、名前を考える。どうやら契約した場合に名前を決めるのはこの世界では一般的らしい。
「あー……じゃあ、ロアな。」
アレイが名前を提案すると男はまた笑いながら頷く、そしてアレイに自分のステータスを見るように言うと、アレイはステータスを確認した。
ーーー
ロア
LV 1650
ユニークスキル
王の証
従属
アクティブスキル
魔闘技LV 800
下位属性魔術LV 265
└火・水・風・土
刀術 LV 1
パッシブスキル
身体強化 LV 450
危機察知LV 550
索敵LV 800
ーーー
アレイはステータスを見て、スキルのレベルが見えるようになったことと、新しいスキル2つ増えてる事を確認した。
「主よ、従属とは名つきと主のいる魔物と言う意味になるそして、刀術は人間の姿で爪や噛みつきをするわけにいかないから取得したスキルだ。」
ロアはそれだけ言うと、目を閉じ周囲を伺う。どうやらこれだけ派手に戦闘したからか魔物がちらほら近づいてきているらしい。
なのでロアはアレイに声を描け、その場を離れる。