降り立つ悪魔
アレイ達は一晩野営した後、ルべリオに向かうために竜玉谷の麓まで来ていた。天高く、頂上の見えない山の高さにアレイは興奮していた。
「たっけーなー!!」
「竜玉谷は、人大陸に有る山の中でも三番に入る高さを誇ってるらしい。後は山の特徴としては高さによって魔物の種類や特性が変わると言うことだな。平原よりも出会う魔物の種類が圧倒的に多い」
「へーそーなんだなー!」
アレイはブリックの説明を聞きながら、山の天辺を見ていると傍で聞いていたシェイルが話しかける
「後は山の成り立ちだな、伝承としては遥か昔に生きていたと言われる竜の亡骸が山になったという話もある…………というよりもそろそろ行こう。今日には半分くらまいまでは進みたい。」
「亡骸ってこのでかさの生物いんのかよ……すげーな異世界。」
「伝承だよ、詩人の作り話と言われている。」
「ふーん…」
そう言いアレイは改めて山を見ると、やはりとてもじゃないが規格外の大きさ過ぎて現実味が湧かず先を歩く仲間達に置いてかれないよう歩きだす。
夜、アレイは焚き火の前にいた。竜玉谷は二日で抜ける予定で半分ほど来たところで野営をしていた。いくら魔術による感知術式を使ったとしてもやはり例外は有るらしく基本的に魔物の襲撃や、盗賊の出現などを警戒するため街の外で夜を明かすときは見張りを立てる事がこの世界の常識らしい。
そんなこんなで順番の回ってきたアレイは焚き火の前で周囲を警戒しながら考え事をしていた、異世界勇者召喚についてだ。どうやらシェイルに聞くところによると勇者は若い場合が多いらしいそしてこの世界にはない技術や知識を持ち、それを魔術や武術に取り込み無類の強さを誇っていたらしいが気になる点としては勇者の始まりが書かれた書物は残っているが、勇者の終りが書かれた書物は一切残っていないらしい。
なにぶん一番新しい文献でも最後に勇者召喚が行われたのは500年も前らしくそのぐらいになると文献もダメになることがあると言うことらしいがアレイは気になる事があった。
なぜ、勇者は異世界より召喚されるのか?
シェイルに聞くところによると、別の世界より降り立つと言うことは世界と世界の壁を越えると莫大な力を身に宿し召喚されるらしく、手っ取り早く力を持つものが呼び寄せられるかららしいが
だったら、幼きころから勇者として育てた方が常識的にも社会的にも効率が良いと考えるが、アレイはそこで気付いた。
この術は時間を短縮し、更にはそれに掛かるコストでさえ無くし莫大な力を宿した人間を呼び寄せられると。常識や伝などは後から作っていけばよく、力を磨くと言う普通なら短縮できない行程を短縮できると言うことに。
アレイがそこまで考えると突然目の前に魔方陣が表れ光輝いた
とっさにアレイは立ち上がり戦える様に構えると、魔方陣は一切強く光るとアレイは目を瞑る、そして光が収まりアレイが目を開くと目の前にヴェルが居た。
「なんでここにいんだよ!」
アレイは目の前に急に表れたヴェルに聞くと、ヴェルは焚き火の前に腰掛けアレイの問いに答える。
「そりゃーアレイの持ってるイヤリングを座標に設定して空間転移をおこなったからだよ」
まるで当然の様にヴェルが言うと、ヴェルは話し続ける。
「ところでさ、ここどこ?」
ヴェルは周囲を見渡しながらアレイに聞く。
「なんだよ、空間転移って………まあいーや、ここは竜玉谷だよ」
「あーなるほどね、道中の日数短縮か。あれ?そんな事教えたっけ?」
アレイはヴェルと別れてからの事を話した。それをヴェルが聞くとヴェルは真面目な表情で話し出す。
「反対派と肯定派ねぇ……それに神子か。後は人式術……んーこれはまずいなー予定が大幅に短縮されてるし、何よりルべリオのやり方じゃあ、ないな。」
ヴェルは幾つかキーワードを呟き、思案する。そしてしばらくしてから口を開いた。
「少し、予定を変えようか。人式術まで使って魔力を集めてるならもっと予定が早まるかもしれない。後はそうだなアレイに空間転移を教える。それでルべリオまで一気に進んで。」
そういうや否やヴェルは何もない空間に手をつっこむ、そして空間転移の術式が刻まれた石を取り出した。
「そんなぞんざいな異空庫の開き方初めて見た」
「どうひらこーと取れれば良いんだよ」
アレイが言うがヴェルは即座に否定し、取りだした石を渡す。
渡された石を見てアレイは術式を解読する。むろん複雑に組み立てられた術式を解読するのに新しくスキルを造ったのは割愛。
そして術式を読み取り終ると、試しに空間転移を使い空間を跳躍した。無事に魔術が発動し移動できた事を確認するとヴェルに向き直る。
「おーさすが。やっぱ反則的なスキルを持つだけの事はあるね。」
ヴェルは大袈裟に手を叩き祝福すると、突然真面目な表情になり武器を抜き放ちアレイの前に立つ。そしてヴェルは即座に野営と二人を囲む様に物魔障壁を展開する、そして次の瞬間辺りに巨大な炎弾が続々と降り注いで来た。
ヴェルの展開した物魔障壁の範囲以外は焼かれ、辺りは一気に火の海になった。そして炎弾が降り注ぐのが終わった後、ヴェルは声をあげる。
「出てこい、さっきからいたんだろ」
「おやおや、気づいてましたか」
アレイは声の聞こえた方向ーーー空を見上げると、そこには翼を生やした美青年が一体いた。
「当たり前だろ。お前ら悪魔族の気配を読み違える筈もないし、
それに魔術をこのレベルで使える種族お前ら以外にいてたまるか。」
そう言いながら、ヴェルは警戒した様に口を開く。
「おや?同胞とあった事がおありで?ん?」
喋っている途中で、青年ーーー悪魔は眉をひそめながらその特徴的な白髪金眼のその容姿を見る。
「お前はまさか!」
ヴェルの容姿を見た瞬間、悪魔は焦ったかの様に喋りだす
「その髪色もその眼の色も見覚えがあるぞ!」
焦りの色を見せていた悪魔は後ろにいるアレイに眼を向けその表情を喜色の色に染める
「何て日なんだ。これは、素晴らしい!」
悪魔はそう言いながら魔術を唱える
「術式・配下召喚」
悪魔が魔術を唱えると、空中に巨大な禍々しい扉が召喚され徐々に開いていく。
「っ!、やめろ!」
ヴェルは悪魔の狙いに気付いたのか、アレイに守るように立っていたが即座に移動し悪魔に攻撃を仕掛ける。あまりに素早く動き出したため悪魔が自らの腕が無くなった事に気付いたのは血が吹き出てからだった
自らの両腕が無くなった事に気付いた悪魔は切り飛ばされた腕など眼もくれずにヴェルを凝視し笑いかけながら話す
「さすがですね、人族最強。まさか私が血が出るまで腕が無くなった事に気付かないとは……でも、終りです。」
悪魔はそう言うと、禍々しい扉が一気に開かれ中から狂った笑い声と共に大量の小悪魔が現れる。
ヴェルはそれを見ながら舌打ちをし悪魔をそのまま切り刻もうとするが、ヴェルは一旦空中でどういう原理か後ろに下がる。すると先程までヴェルがいた場所に高速でなにかが飛来する。
余裕をもって回避したヴェルを見て悪魔は笑う
「流石ですね、だが。場は整いました」
そう悪魔が言うと、無くなった筈の腕が一瞬で再生する。そしてその手には二本の剣が握られていた。
「悪魔風情が僕に武術で勝負する気?」
ヴェルは真顔で武器を構えながら問いかける
「ええ。私も貴方達の研鑽する剣術を嗜んでましてね」
そういいながら悪魔はヴェルに斬りかかる




