肯定派の従者と反対派の神子
馬車からでたアレイ達が見たものは武器を構えた男たちと、ロナと一緒にいる謎の男だった。アレイとロアは冷静に周囲の様子を伺う。
「おい!ロナ!!どう言うことだ!!!」
シェイルがあからさまに敵対しているロナに声をあらげる。するとロナは男と会話をするのを止めシェイルに対して話しかけた。
「これはこれは、神子様。生きてらっしゃったんですね?」
「どう言うことだ!!」
「どうもこうも、貴方の行動を邪魔だと思う人間もいるのですよ
この度の異世界勇者召喚はこの世界になければいけないのです。」
ロナはそれだけ言うと、ニヤリと笑う。
「なんだと!?……お前もしっているだろう!一緒に過去の文献も閲覧したじゃないか!!勇者は戦争の無い平和な世界より呼び出され、戦いの度に心を病ませると言う事を!」
シェイルは過去の行動を呼び起こし、ロナに問いかけるが。ロナは笑みを深め言った。
「知りませんねぇ……神子様。皆があなたの様に正義感に溢れる訳じゃないんですよ。その証拠に回りを見てください、そこに居るもの達は皆今回の勇者召喚を望んでる人間ですよ」
シェイルはそう言われ辺りを見渡す、沢山の人間が武器を構えていたり魔術を発動する為に魔力を収束していたりと一触即発の雰囲気を出していた。シェイルは状況に対し芳しく無いことを確認し改めてロナに話しかけた。
「なぜ今なんだ!!アレイとロアがくる前にも機会ならいつでもあっただろう!」
シェイルは歯切りしながら聞く。
「簡単な事ですよ、お一人なら神子様はどうとでも対応することができるでしょう?でも今は一人じゃない。お仲間がいらっしゃる。だから神子様のスキルは使えない…………ふふふ、さてもういいでしょう。さようなら、神子様。」
ロナは満足したのか、喋ることを止め男達に声を掛ける。すると
武器を構えていた男達は一斉に攻撃を仕掛け始めた。
「せいぜい楽に死んでください。神子様、大義でしたよ。」
それだけロナが言うとロナは懐から石を取りだし砕いた。石を砕くとロナの足元に魔術式が浮かびロナと男が転移した。
アレイは攻撃を仕掛けられる前に三人を囲む様に魔術障壁を幾重にも展開する。今回は敵に魔術師が居るために物魔障壁を展開した。男達の攻撃が障壁によりふぜがれるのを確認するとアレイはシェイルに話しかける。
「んで、どーするよ。」
アレイは連続的な攻撃や魔術を障壁で防ぎながら確認する。ロアは刀を構え、いつでも攻撃できるように待機していた。シェイルは此方を狙う攻撃を見ながら呟く。
「……仕方ない、なるべく無力化していこう」
「わかった。でもやられそうになったらやるからな」
「解っている。」
そんな会話の後に、アレイはロアに言う。
「聞いたなロア、なるべく殺さずだぞ。」
「解った。」
方向性が決まった後に、アレイは障壁を展開しつつ魔術を発動する。
「術式・斥力強化」
アレイが男達の武器に対し魔術を掛けると男達の手に持つ武器同士が急にくっつき始めた。突然勝手に動く武器達に男達が動揺する隙にアレイは障壁を解き声を掛ける、
「今だ!」
短くアレイが声を掛けると、ロアが走りだし戸惑っている男の首もとに刀を打ち付け気絶させる。そして返す刀で後ろから剣を振りかぶる男の攻撃を止め、それを弾くと男が立ち直すより速く気絶させる。
ロアが飛び込み、一人づつ無力化してる内にシェイルは攻撃を仕掛ける男に対し魔術を発動する。
「魔弾!」
無数の無属性の玉を男にあて気絶させ、飛来してくる魔術を障壁で防ぐ、その間にアレイが魔術を発動する
「魔弾!」
シェイルに攻撃した魔術師を攻撃し気絶させると、アレイは戦況の確認をする。どうやらあらかた倒し終えて残りはあと少しと言う所で目の前の男の一人が話しかけてくる。
「旅人よ、なぜ勇者召喚を止める。この儀式は世の人族を救う為の必要な事だぞ。」
男は一旦戦いの手を止めさせ、アレイに問いかける
「お前らこそ正気かよ、さっきのシェイルの話を聞いてなにも思わないのか?」
アレイは男の言葉を鼻で笑いながら答える
「争いの無い平和な世界か……だが、それとこれとは別だな。力の無いものから見れば勇者召喚は救済であり。この世界の大半の人族には魔物と戦う術を持たない、だから俺らの様な人間や、お前らの様な旅人がいる。」
「あいにくと、旅人じゃなくて冒険者なんでね。お前らが何に属されるかは知らないけど依頼を受けた以上は全力で行う責務があんだよ!」
アレイはそう言うと、話しかけていた男に魔術を放った
「魔弾!」
アレイが発動した魔術はまっすぐ男に向かって行くが、攻撃は男の武器により切り裂かれた。
「魔式破壊使えんのかよ、めんどくせー。」
アレイは魔術が切り裂かれた事を確認し呟く、だが男は既にアレイに攻撃をする為に動き出していた。中々の早さで踏み込む男を見てアレイは指輪に魔力を込め、槍を具現化し男の振りかぶる剣を防ぐ。
かん高い音ともに互いの武器が鍔迫り合いをお越し、アレイは一筋縄でいかない相手だと思い気を引き締める。そしてちらりと周囲を伺うとロアとシェイルが残りの二人と戦いだしていた。
「余所見とは、余裕だな」
アレイが一瞬よそ見をした事を見ると、男はそのまま剣で押しきろうとする。
「っぐ!?」
アレイが腕力的にギリギリで鍔迫り合いしていたものを、男は更に力を加える事で負荷が掛かりアレイは苦い声をだす。
「やはり魔術師だな、近距離に入るとなにもできん。」
そう言い男は力任せにアレイの体勢を崩し、止めとなる一撃を振り降ろす。降り下ろした剣がアレイにぶつかる瞬間、男の剣は魔術障壁により止められる。
「悪あがきだな、こんなものはすぐに壊せる」
そう言い男は剣に魔力を通し障壁を切り裂こうとするが、アレイは障壁が壊されるより速く魔術を発動した。
「爆炎!」
体勢を直し、槍を横に振り払いながら魔術を発動する。すると振り払った軌跡をなぞる範囲に炎による爆発が起きた。
「むっ!」
男はとっさに後ろに下がるが、魔術による爆炎はそのまま男に襲い掛かった。炎により森が燃えだし、目の前が炎に染まるとアレイは更に魔術を発動する。
「氷水瀑布!」
水属性上級中位魔術であるこれは、空から氷の槍を降らせ、更に莫大な水で押し流す魔術だった。辺りで燃え盛る炎は莫大な水により鎮火し、水の届かぬ高さの炎は空から産み出され落ちてくる氷の槍により消えていった。
そしてすっかり炎が消え、焼け焦げた木々が姿を表すと同時に男の姿も表れた。男は所々から血を流しながら剣を杖変わりにし生きていた。
アレイはそれを見て、槍に魔力を注ぎ込み魔術を発動する。
「術式・闇支」
アレイが魔術を使用すると、槍の先端から闇が無数に飛び出し男を拘束する。初めて使った拘束系統の魔術にアレイは、どうせなら女の子が良かった、とどうでも良いことを一瞬考えてから辺りを見渡す。どうやらロアとシェイルも無事に戦い終わったらしい他の二人の相手は完全に倒していた。
それを見てからアレイは男に近づき槍を首もとに突き付け話しかける。
「なにか言い残す事は?」
淡々と事務的にアレイが問いかけると、男は顔をあげアレイに言う。
「何を言った所でなにも変わらんだろう。俺の意思は変わらんし
なにより負けたんだ、はやく殺れ。」
男はそれだけ言うと、目を瞑る。アレイは一思いに終わらせようと槍を振り上げ、降り下ろそうとする。
「アレイ!待ってくれ!思い出した!!」
止めをさそうとしたアレイにシェイルは制止の声をあげる。そしてアレイは槍を一旦止め、シェイルに話しかける。
「思い出した?」
「ああ!そいつは金色傭兵団の長のブレック・ウェンスタント、一度俺の守護を依頼されて任についた事ある!」
そういいシェイルは、男ーーブレックに近より話しかける。
「……なんの様だ、神子よ。」
ブレックはばつが悪そうに話しかける
「なんの様だと!?お前こそなにをやっている!どちらかと言えばお前は反対派だと思っていたのに!」
シェイルはブレックの問いに怒りを露にしながら聞く。するとブレックはぽつぽつと語り始めた。
「……まあもう長く無いからな、話そうか。」
そう言いブレックが語りだしたのは聖王国ルべリオの現状だった、
「騎士団は勿論、民の一部までその事実を知っており肯定的だ。王城は本来協会があるため一階は解放されているが、この間賊が入り立ち入りが禁止され厳重に警備されている。勇者召喚はこのまま行けば間違いなく行われ異世界より呼び出されるだろう。」
「なっ!俺がルべリオを発つ時は民の者達には知られていなかったのに、そこまで表面上に浮き上がっているのか!」
「そうだな、あそこの司教が神のお告げと言いながらその事実を懺悔に来た民に伝え、それを広める様に言ってるらしい」
そこまでブレックは話すと、口から血を吐き出し、朦朧としていた。アレイは話を聞きながら疑問に思った事を聞く
「てかなんでお前さんはそんな喋るんだ?」
「……仲間の力の無いものが人質に取られてな、そもそもこの仕事は断る予定だったが。それがあってやっていただけだからだ。」
アレイはその事実に驚愕する。そしてシェイルはアレイに聞く
「なあ、ブレックの傷を癒してくれないか?俺は回復系統の魔術が得意じゃないんだ」
「解ってる。すぐに治療する」
「術式・女神の窮愛」
アレイが術式を発動するとブレックの下に魔術式が表れ、傷を癒していく。
「複数系統の魔術をなんなく使うのか。本来はどれかの系統に片寄るんだがな」
ブレックは驚きの声を上げながら言う、そして傷が完全に癒えると魔術は終了した。
「一先ず礼を言おう、そして戦いを仕掛けないと誓う。詫びと言ってはなんだが神子達は龍玉谷を越えてくのだろう?」
「そうだ、そのルートがルべリオまで最短だからな」
シェイルはそう答える
「ならば俺が案内をしよう。幸いなのか解らんが龍玉谷はよく通るからな。」
そうしてブレックがルべリオまでのルートの案内を申し出てアレイ達はそれを了承し、一先ず夜が開けるまで野営をしてから出発することにした。




