魔王誕生の知らせと、勇者召喚の概要
ザットとの決闘を終えたアレイは宿屋に戻りロアとヴェルと食事をしていた。
「そーいえばアレイ、これからどうすんの?」
ヴェルはアレイが決闘してる間に頼んだのか、リゾットの様なモノを食べながら聞いてきた。
「そーだなー……取り敢えず世界でも見て回ろうかって考えてる。」
アレイはそう答えながら、目の前にある料理を取り食べいていく
「ん?あっそれ僕が食べようとしてたのに……まーいーや。」
ヴェルはアレイが取った料理を恨めしそうに一瞬見ながら、別の料理を食べようとするが、それを今度はロアに取られる。
「ちょっと!…ねえアレイ!使い魔の躾がなってないよ!」
「とるのが遅いんだろ!」
アレイにそう言われると、ヴェルはしょぼんとしてロアを恨めしそうにみてこのわんこめと呟くと追加で料理を頼む。ロアはそれを聞き眉をひそめ残りの料理を取ると、ヴェルは諦めたのかアレイとロアに向け話し始めた。
「アレイとさ、ロアにお願いがある。」
ヴェルが急に真面目になったのを確認するとアレイは耳をかたむける。
「さっき届いた情報なんだけどさ、ここから東に行くと聖王国ルべリオって国があるんだけどさルべリオって知ってる?」
アレイはロアと顔を見合わせ知らないと答える。
「じゃあ説明するね。ルべリオは女神アルティムを信仰しているもの達が集まる宗教大国になる。ああ、そうだ。ちなみに五大国って知ってる?」
ヴェルは二人を見るが案の定知らない顔をしていたので説明を続ける。
「五大国ってのはね、
北の帝都ファムフェイト、中央の王都シャトール、東の聖王国ルべリオ、西の他種族国家アラムネル、南の共和国コーラドを指す」
「ふーん…それ以外に国はないのか?」
「いや?もちろんそれらの下に小国があったり、町や村があるよ
それで話を戻すんだけどね。」
ヴェルはそれだけ前置きを置くと、真剣な顔になり語り出す。
「どうやらルべリオの巫女が魔界で魔王が誕生したと神託があったらしい。それでさその魔王が問題なんだよね。」
「問題?」
アレイは不思議に思いながら聞き返すと、ヴェルは一つ頷き言葉を続ける。
「まず魔王の誕生と同時にルべリオはファムフェイトの皇帝にその旨を伝えて、皇帝はファムフェイトが誇る八英雄を魔王の討伐に向かわせたんだけど…
結果は全滅で終わった。普通、産まれたばかりの魔王のレベルは最低でも5000~7000の間ぐらいなんだけどさ、どうやら今回現れた魔王はレベル9000超えらしいんだよね。それでも八英雄の奴等は死力を尽くしどうにか封魔結界を施し魔王を一時的に封印する事ができたんだけど……」
「レベルが馬鹿みてーに高いのは解ったけど、その八英雄ってのが封印したから安心なんじゃ」
アレイは知らずの内に行われた戦闘に眉をひそめ、ヴェルに聞くがヴェルは相変わらず真剣な表情で話し出す。
「いや、八英雄の奴等のレベルは平均で7000ぐらいだからさー、それに封印術に長けているやついないからその封魔結界ももって2~3年だろーね。魔族の奴等も必死に解除しようとするだろーしさ。そこまで見込んでの2~3年なんだけどルべリオの馬鹿どもが何を思ったのかさ、この世界の人間では今回出現した魔王に勝てないと思ったらしくて。異世界より勇者を呼び出し魔王と戦わせると五大国の王に触れ回ったらしい。まあファムフェイトの八英雄は人族の軍の中でもほぼ最強でそれが全滅したからって理由は解るけどさ……」
ヴェルはそれだけ言い、一端困った様に俯くと顔を上げアレイとロアを見てから頼み込む。
「僕はさ、この世界で人族最強を一応名乗っていて更に言うなら冒険者最強だ。冒険者は緊急時にはその依頼を無条件にこなさねばいけない責務がある。だからこれから僕は各国を回り魔王の復活する時まで各地で活発になる魔物を討伐して回らないといけない。だから僕の変わりに勇者召喚を止めてくれないか?」
ヴェルは辛そうに、申し訳無さそうに頼む。
「異世界より来た君に頼みこむのは心苦しい。なによりこれは僕らの問題で君らの問題じゃない。でも頼める人間は今ファムフェイトに緊急召集され、これから活発化する魔族と戦わなければいけない。だからさ頼むよ。」
アレイはそこまで聞いて、一つ思った事を告げる。
「その戦いは勝てるのか?」
ヴェルはそれを聞くと一言。言った。
「じゃなければ、人族は滅ぶだけだ。」
アレイはそれを聞き、眼を瞑る。内心では突拍子もないこの事態に叫びたい気持ちだが、異世界勇者召喚と聞くと他人事では無い気がして、なにより無関係でいられないと思い。
「……解った。やってみる。」
アレイがそう言うと、ヴェルは申し訳無さそうに、言った。
「ここからルべリオまで最短で一月掛かる。そして勇者召喚は二月後に行われる。理由は異世界より人間を召喚する魔術は莫大な魔力が必要でルべリオはその魔力を魔素と呼ばれる大気中に存在する魔力を集めるのと、大地を巡る霊脈から確保するだろう。それで大体二ヶ月掛かるだろうから、ルべリオに辿り着いたらまずは街の様子を探ってほしい。」
「街の様子?」
アレイはすぐにでも止めれば良いと思ったが、
「そうだよ。君なら魔素を集める術式に介入して止めることも、霊脈から魔力を抜き取る術式も止めることも出来るだろうけどさ。あの国は魔素と霊脈を元に魔物が立ち入れない様にする結界を展開しているから、そこを崩すと結界じたいが壊れてしまうかもしれない。だから召喚前に乗り込み勇者召喚の術式のみを破壊して欲しいんだ。」
「難しそうだな……」
「ゴメンね。ほんとは僕が直接行って阻止したいんだけどさ。緊急召集もあって行けないからアレイにお願いする。あとは、」
ヴェルはそう言い懐から金貨五枚と、掌ぐらいの黒く光る球体をとりだし机の上に置いた。
「これは旅賃と、武具代ね。ロアはともかくアレイは武器と防具を買ってこの世界のかっこをして、この球体は売れば金になるからもしもの時ようにとっといてほしい。」
それだけ言うとヴェルは立ち上がり、会計を済ませると最後に
アレイに言う。
「この事はまだ僕らの様な人間しか知らないから伏せておいてほしい。それと宿をとっといたから今日は休んで明日から動き出してね。僕はこれから協会に行って、細かい打ち合わせをしてそのまま魔物討伐をすると思うから………っそうだ!」
ヴェルは出口から一端戻ってきて、二つのイヤリングを置く。
「これをつけていれば念話によって会話ができるから、身につけておいてほしい。おりを見て僕から連絡するし、なんかあったら連絡してきて?それじゃ急で悪いけど頼む!」
それだけ言い、ヴェルは宿屋を出ていった。協会に向かったのだろう。
アレイは机の上に置かれたイヤリングを耳につけ、ロアと話す。
「なーロア。」
「どうした、主よ?」
ロアもアレイにならい耳にイヤリングをつける。
「魔王とか勇者とか、わかんねーけどさ。」
「ふむ。確かにな。」
「なんか止めなきゃいけないって思ったから引き受けた。」
「ふむ。」
ロアはアレイの語りかけに耳をかたむける。
「なんかさ、他人事に思えないんだよな、俺さ最初は断ろうと思ったんだけど異世界からの勇者召喚って聞いてさ、他人事の感じが無くなったんだよ、なんでだろーな。」
「主の記憶と関係してるか?」
「わかんねー……取り敢えずそんだけだ。もー寝るか。
明日準備して、ルべリオに向かわねーと。」
「主よ」
言いながら立ち上がったアレイにロアは声をかけ引き留める。
そして振り向いたアレイに一言言った。
「我は常に味方だ。」
アレイは言われると、一瞬きょとんとしてすぐに笑いだす。
そしてひとしきり笑った後に一言言った。
「当たり前だろ」
そう言うとロアも笑い、今度こそ明日に備え二人は眠った。




