能力創造者と人族最強②
ヴェルが走り出したとアレイが認識した次の瞬間にはヴェルは剣を降り下げようとしていた。アレイはあまりの早さに一瞬止まりそうになるが、無詠唱で魔術障壁を発動する。
「へぇ……それは創ったんだね。んでもおかしいな。」
ヴェルは斬りつけた筈の剣が魔術障壁に防がれているのを見ながら呟くと、うっすらと笑いながらもう片方の剣を薙ぎ払う。障壁が剣を弾いている所にもう一閃ヴェルが払うと、アレイの行使した魔術障壁はかん高い音と共に消滅した。
「なっ!」
アレイは魔術障壁が破られた事に一瞬驚くが直ぐ様、術翅より魔術を発動した。今回使用するものは風属性の初級魔術にした。術翅より魔術が連続的に攻撃を始めるとヴェルは身を少しかかげたり、後ろに少し動いたりと最低限の動きで飛んでくる魔術を回避していった。
「なるほど、魔術の自動迎撃かー……確かにこれは少しめんどくさいね。まあでもさ?それの特長は術者の制御を離れて魔術が魔術を発動するっていう魔術だろ?当然魔力回復はもってるだろーけど、この魔術の弱点はっ」
ヴェルは次々と襲い掛かる魔術を回避しながら、言うと次の瞬間にはアレイの首もとに剣を突き付けているヴェルがいた。
「対象が高速で動いたら、一瞬標準が外れるってさ。戦闘じゃ致命的な隙にならない?」
全く、ただの一瞬も反応できずに生殺与奪をヴェルに握られると
アレイは今度こそ混乱した。そして術翅が再びヴェルに向け魔術行使すると、ヴェルは大きく後ろに下がり回避した
「さてと。どうかな、能力創造者?君は自分の力を知ろうとしないから、今一回死んだよ?」
ヴェルが大げさに大人げなく一言言うと、突如アレイの体から莫大な魔力が沸きだし、背中の術翅が三対になった。
なんだよ、これ。
剣を突き付けられた瞬間、アレイは呆然とした。どこか遠いところから自分を見ているような感覚に陥り、現実感が乖離する。
築き上げた戦闘理論が根本から崩される様な、現状では逆立ちしても勝てない相手に対して沸き上がる恐怖感。様々な心の動きに支配されアレイは本気で混乱しそうになる。が。
そうか。能力創造者か、なら、
心のどこかでそう思うと、今までの混乱は嘘の様に無くなり。アレイは新たな能力を作り出した。
現象付与
魔力増大
多重術式
そしてアレイは新たに造り出した能力により、まず初めに術翅の強化を行う。具体的には一対だった翅を三対にし、より接近されない為の迎撃魔術にする。今まで一対では確かに出し抜かれる事もあった。それを直ぐに直さず放置していたらこうなった。だから此れからは即座に改善していこう。
新たな決意を胸に秘め、アレイはヴェルが後ろに下がった事を生命感知と魔力感知で把握すると術翅の魔術を初級から火属性中級中位の降り注ぐ炎弾に切り替える。単純に一対から三対になった事により魔力も三倍減るのが早くなるが、新たに創った魔力増大と元々ある魔力超速回復により前より常時減っている魔力が少なくなっている感覚になっていた。
降り注ぐ炎弾は空から炎弾を落とし攻撃する魔術だが、ヴェルはどうやら魔術障壁を展開し防御しているらしい。次々と飛来する炎弾を障壁で防ぎきっているのをアレイは確認すると、新たに障壁を撃ち破る為に魔術を行使する。
「術式・死せる爆炎」
アレイは術式を行使すると右手を斜めにかかげた。するとかかげた掌の廻りに無数の魔方陣が次々と浮かび上がる、それを見たヴェルは舌打ちをすると飛来する炎弾の合間に障壁を解除し、剣を構えアレイに向け走り出すが、
「おせーな。吹き飛べ!!」
アレイは走り出したヴェルに向け言うと、無数の魔方陣が周囲に浮かぶ右手を勢いよく薙ぎ払った。
すると、アレイが手を薙ぎ払った範囲の空間の至る所で爆発が起き、その爆発で岩を砕き、木々を吹き飛ばし、大地を抉った。
アレイは初めて使った最上級下位の魔術の威力にびっくりしていたが、突如悪寒を感じ全方位対応の障壁を複数展開する。障壁を展開しおえた瞬間にあらゆる方面から障壁に斬りかかる音が聞こえ次々と障壁が破られていく。
おいおい、複数展開した筈の障壁がもう二重でしか残ってねぇじゃん……
若干の呆れを覚えながらも剣撃により障壁が一枚になるとアレイは一端、術翅の魔術を切り替え、魔力操作を補助する属性魔術。魔の導きを使用させて更に術式魔術を発動する。
「術式・氷華」
アレイが術式を発動するとアレイの周囲の気温が急激に下り次の瞬間には氷で作られた針無数に地面から出現した。ヴェルはそれを魔術の発動と同時に飛び上がり回避し、降り立つ瞬間に二刀の剣を振り払い切り崩した。
「いやぁ……恐ろしいね、まさかてこ入れした後直ぐに攻撃の質がここまであがるなんてさ、さすが出鱈目なスキルを持つ身ではある。」
ヴェルはしみじみとした雰囲気で言うと、アレイは新たに魔力を収束させ直ぐ様魔術を撃てるよう待機させてから答える。
「あんたが言うことは解った。ただまだ合格じゃないんだよな?」
アレイは確認の為にそう告げると、ヴェルは少し首を傾け答える
「そーだねー……殆どAランク級の状況判断と戦闘能力が有ることは解ったからなー……」
「なんだよ、じゃあもーいーのか?」
アレイが肩透かしを食らったかの様な表情を浮かべると、ヴェルは首を横に振り言う
「いやいや、最後に一つだけ。今君が使える技で一番威力のあるものを僕に使って?」
「一番威力があるって……わかった。」
アレイは少し疲れたように了承すると、自らの持つ最大威力の魔術を発動する為に術翅の魔術を切り、変わりに自らの魔術行使を補助する様に切り替える。そしてアレイは身に備わる莫大な魔力を解放する。
「あー……これは中々密度が高いね」
ヴェルは感心したように言うと、アレイはありったけの魔力を収束し、更に術翅に魔力操作をさせ目の前に魔力をどんどん集めていく。
しばらく収束し続け、アレイが扱いきれる最大の魔力を集めると
その魔力を魔術に変換する。
「術式・魔祓いの一矢」
魔術を発動させるキーとなる言葉を言うと、収束している魔力は破壊の力を撒き散らす為に、その力を魔術えてと変えていく。途中変化し続ける魔力に更に術翅より魔力を注ぎ込むことによってそれは更に強悪な力へとなっていった。
そして魔術行使における全ての工程を終らせると、アレイは一瞬だけ魔力枯渇により虚脱感に襲われるが、それを気合いで我慢し
ヴェルに向け言う。
「これが今の俺の限界になる。でも直ぐに質をあげてやる!」
それを言われヴェルは一瞬呆けるが、直ぐに不敵に笑いだしその言葉に答えた。
「あー。まぁ威力だけならSクラスかな?、合格合格。君の冒険者ランクはAランクね?。あとその密度の魔術は街の外でもあまり使わないでね。場所によっては地形変わるからさ。」
ヴェルは合格と言うと剣を構え、アレイに告げる。
「さあ。いつまでも待機させるのはしんどいだろ?
その魔術をつかっておいで?」
その言葉と同時にアレイは魔術を発動した。正面に固まった力の塊は真っ直ぐヴェルに向け射出された。




