第三十七話 VSサンドワーム?
だから戦闘描写は苦手なんだってばぁ(ビタンビタン)
「すごく…大きいです…」
そう呟いた野太い声は一体誰のものだったか。いざ見える範囲まで来たサンドワームは、恐ろしく巨大だった。
高さだけで高層ビル程はあろうかというレベルの巨大な物量の塊が、周囲のmobを轢き飛ばしながら、砂を掻き分け迫って来る。あまりの大きさに、普通のエネミーやプレイヤー達など眼中にないようだ。こんな化け物にちっぽけな人間の攻撃が通用するであろうか?普通のプレイヤーなら、ここで恐怖心や絶望感の一つや二つを抱いたであろう。
だが、ここにいる集団は良くも悪くも普通ではなかった。
「エモノ…エモノダァ…」
「デカイ…デカイゾォ…」
「ホウシュウ…タクサン…タノシミ…」
「あれ?俺の戦った奴より二倍くらい大きい気が…」
周囲を見渡せばギラギラした目つきのプレイヤーばかり、大半はひるんだ様子すらない。何これ怖い。
最後に何か聞こえた気がしたけど、何と言ったのだろうか?
「これ程の巨体なら、外す心配はありませんね」
そして、さっきから詠唱を続けていたピタゴラスさんが呟く。何だか嫌な予感がして身構える。
「最初から飛ばしていきますよ…エリアエクスプロージョン!!」
爆音。
聞いたことの無いレベルのすさまじい爆音が連続で鳴り響き、サンドワームの周囲を砂ごと爆破する。
名前通り全体攻撃のような魔法らしい。彼を敵に回したくないと改めて実感した。
『ギェェァァァァァ!!!』
地形ごと吹き飛ばす威力と範囲の爆発に、さすがのサンドワームも怯んだようだ。
もがくようにその場でジタバタ暴れだす。
「やったか!?」
「おい誰だ今フラグ発言した奴」
誰かのお約束フラグ発言の後、落ち着いたサンドワームがこちらの集団を睨む。周囲にまったく興味を示さなかった砂漠の王者が、すさまじい威圧感と共に戦闘体勢に入った。
「全力で放ったのですが、HPは1ドット程度しか減ってませんね」
「想定の範囲内だ、総員突撃ぃ!!」
「「「ウォォォォォォ!!!」」」
せっかくのレイドボス戦、頑張って楽しもう。
全力で突っ込む前衛組に混じり、私も突撃した。
ここはFWO運営会社の一室。多数のモニターを前に、(何故か)白衣を着た社員と思しき人達が睨みをきかせている。
彼らの仕事はずばり「監視」と「対応」。自分たちでも迷惑行為等を監視しつつ、通報があれば即座に対応するのが彼らの仕事だ。
かなり重要な仕事なのだが、忙しい時は極端に忙しく、何も起きない時は仕事が無い。この日も特に何もなく、彼らは暇を持て余していた。
そんな中、一人の社員が長と思しき男に報告する。
「……何?フォートレスワームに挑戦してるレイドパーティーがいる?」
フォートレスワームは、王都西部にある無限砂漠のレイドボスの一匹。サンドワームの上位互換である。
サンドワーム自体もレイドボスなので、その強さは察せるであろう。
まるで城塞を相手に戦っているようなそのボスは、無論適正レベルは遥か高みにある。まだそのレベルに近づいているプレイヤーはいないはずだ。
そう思いながら、モニターを覗き見る。いつにも増して平和な今、彼らはずばり暇なのだ。
「どれ、どれだけ対抗出来るのか、高みのけん…………」
高みの見物といこうじゃないか。そう言おうとした彼は、言葉を続けられずに硬直した。
何故なら、彼の見たモニターに映っていた光景は……
巨大なフォートレスワームが、宙を舞う姿だったのだから。
「全力火力支援完了!やっちゃえ天災ちゃん!」
「………その呼び名は不満」
魔術師数人の全力支援を一身に受け、随分と軽く感じるようになった双巨剣を構える。
支援内容はズバリSTR強化。目的は、グランディアの装備条件を満たす事。
「………リミットブレイク」
そこから防御を捨てた攻撃体勢に入る。火力の底上げも完了。
「………目覚めて、グランディア」
更に双巨剣の効果を両方発動。これで、一回だけチャージ攻撃の威力が4倍となる。
「………チャージインパクト、チャージ開始」
支援と自身の効果を受けた双巨剣から、ド派手なチャージエフェクトが現れる。前と違って女神の支援が無いので、遠くからバッサリは出来ないようだ。
近づく必要がある。だが、今の状態では一撃受ければ死亡確定だ。
「………というわけで、よろしく」
「任せな嬢ちゃん、肉壁の有用さを見せてやるぜ!」
「この筋肉にかかれば奴の攻撃など!」
「ピーガガガ、ニンムリョウカイ」
肉壁役を買って出てくれた全身鎧の男性と全裸ボディビルダーと謎ロボットに一礼する。面子の濃さを気にしてはいけない。
「………行くよ」
4人同時に走り出す。目指すは周囲を薙ぎ払うように暴れまわっているサンドワーム。
見境なく暴れまわっているせいで、近づくのも一苦労だ。今も振るわれた巨体が近くに迫る。
「どりゃぁぁぁぁ!!」
「筋肉ぅぅぅぅぅ!!」
「ピピッガガガガ……」
3人の仕事は、ここでサンドワームの攻撃を全力で受け止める事。要塞の如き巨体が人間モドキ達に動きを止められる様は恐ろしい。
そして相手には攻撃を止められた影響で硬直が発生する。この隙に、全力の一撃を叩き込む!
「よっしゃ来たな、飛べ妹よ!!」
「………っ!!」
所定の位置で戦っていたクロトが拳を合わせ中腰になり構える。私は飛び上がり、その拳の上に足を乗せる。
「おりゃぁぁぁぁぁ!!」
同時にクロトは拳を振り上げ、私を上に飛び上げさせる。飛んだ先にあるのは、サンドワームの弱点と思われる頭部、その顎部分。
チャージは完了している。あとは勢いに乗って振り上げるだけ…!
「………全力、全壊っ…チャージインパクト!!!」
ゴウッ!!
ド派手なエフェクトの双巨剣を叩き上げるようにぶつける。空気を裂く轟音と共に、巨体が一瞬宙に浮いた気がした。
この隙に、他のプレイヤー達が一斉攻撃を畳みかける。
「これでも喰らいやがれぇ!!」
ある者はロケットランチャーをぶっ放し(ここはファンタジー世界である)…
「オラオラオラオラァ!!」
ある者は目にも留まらぬ連撃を放ち…
「詠唱完了…全砲門、穿て!」
後ろからは大量の攻撃魔法が降り注ぐ。
『ギャァァァァァ!!』
サンドワームが悲鳴のような叫びをあげる。ほぼ全員が全力攻撃をしているせいか、相当効いているようだ。だがまだ足りない。
…リミットブレイクのおかげで攻撃後の硬直は回復している、つまりまだ攻撃出来る。畳みかけるなら今だ。
「………天元無双っ…!!」
今まで一度も使ったことの無い、恐らく奥の手と思われる技を宣言する。そしてシステムアシストが発生、両手が動き…ブレた。
「………っ…!?」
一発、二発、四発、八発、十六発………
余りの早さに頭がついて行けていない。自分でもどうやって剣を振るっているか分かっていない。正直想定外の速さだ。だが本能は動きをコントロールしている、問題ない。
「………まだ、いけるっ…!」
三十二発、四十八発、六十四発………
格闘ゲーム顔負けのコンボを放つ。心なしかサンドワームの巨体が浮いて来ている気がする。
「………これでっ……仕上げっ…!」
最後に体を横向きにし、勢いよく回転して斬り上げを放つ。
八十発、九十六発、九十九発………
――――百発
「………せいやっ…!!」
最後の一撃を勢いよく放った時……
サンドワームの巨体が、宙に浮いた。
またやり過ぎた主人公、実は通常状態でも一発喰らえば死んじゃう。これでも極振りではないとは本人談。




