番外編2 季節ネタ ホワイトデー編
今回はちょっとアレな表現もあるので、R15とさせていただきます。やり過ぎた、だが後悔はしていない(キリッ)
●ちょっと気が早いけどホワイトデー編(やっぱり本編と時系列が違います)
ホワイトデー。それは男性の一部が多忙になり、一部がめんどくさがり、一部が暇を持て余す日。
ホワイトデー。それは女性の一部が期待を膨らませ、一部がめんどくさがり、一部が友情を深め合い、一部が暇を持て余す日。
私はこの日が好きだ。どれに分類されるかと聞かれれば「暇を持て余す」タイプだと即答できるが、それでもこの日が好きだ。
一体どこが好きかと言うと…
「……名前に「ホワイト」がある事」
「だと思ったよ…」
目の前ではアクトが「知ってた」とでも言いたげな呆れた目で見てくる。解せぬ。
「……ホワイトクリスマスも好き」
「クリスマスに雪降られると困る人結構多いんだぜ…俺も好きだけど」
場所はグランセル王国のとある喫茶店。こいつと雑談する時の定位置になってる気がする。
「…俺はホワイトデーは苦手だなぁ」
「……その理由、言わないほうが良い。殺される」
「うっ…分かってるさ」
周囲から強烈に集まった視線にアクトがたじろぐ。一応モテている自覚はあるらしい。
「…で、ホワイトデーと言えば…バレンタインのお返しじゃん?」
「……うん」
「それなんだがな…」
何か少し疲れた表情になっている。何となく嫌な予感がした。
「ほら、バレンタインの時は手渡したチョコに追加効果が入っただろ?」
「……うん」
「…ホワイトデーに手渡したアイテムにも、そういう効果が付くらしいんだ」
「…………」
…あぁ、うん。何で会った時ボロボロの状態だったか理解した。
「で、他のは碌な効果が無かったからさ…もし嫌なら…」
「……もらう」
「って即答!?」
これでも家族以外の男性にバレンタインチョコを渡したのは、リアルを含めても初めてなのだ。私だって年頃の女性、せっかくだからもらいたい。
それに少し面白そうでもある。
「あー…変な効果でも恨まないでくれよ」
そう言われて、少しぶっきらぼうにラッピングされた袋を渡される。軽くそっぽ向いてるのも含めて照れ隠しだろう。
「……ん、ありがと」
仮想空間でも異性からは初めてのホワイトデーの贈り物(家族はノーカウント)なので、嬉しかったりする。受け取って、早速開ける。
「……白い…クッキー?」
「あぁ、そういうの好きだろ?」
「……うん」
少し頬が緩んでしまう。おっと、まずは一口だ。
「……いただきます」
「あ、あぁ」
アクトは緊張した表情でこちらをうかがってくる。
見られながらは少し食べにくいが、一つパクリと食べる。
口に広がるのは、適度な甘さを持った食べやすい味。
「……ん、おいしい」
「そ、そっか…他に変化は?」
「……特には…っ!?」
特に無い、問題ない。そう言おうとした時、身体に異変が起きた。
身体が言う事を聞かなくなり、ふらりと横に倒れこむ。
「なっ…お、おいハクア!」
驚いたアクトがこちらに駆け寄って来る。これは、何というか…
「……身体が」
「え?」
「……身体が、熱い」
そう言うと、動けない私を抱き起したアクトが少したじろぐ。若干顔が赤い…おい、何を想像した。
「一体何が…」
アクトが慌てているが、原因はなんとなく分かっている。
「……ステータス異常」
「へ?」
「……見て」
「お、おう」
アクトが私の状態を代わりに開く。そして、両者共に凍り付く。
状態異常:高熱(永続) 麻痺(永続) 高揚(永続)
解除法:プレイヤーホームのベッドで一定時間横になる
「…………」
「…………」
「……な、なぁ…これって」
「……言わない」
「いや、でも…」
「……それ以上はダメ」
「ハイ」
これはさすがにアウトだと思います、運営さん。
「……私の家」
「え?」
「……私の家、近い。連れて行って」
「…い、いやでも」
「……自分の家にお持ち帰りする気?」
「謹んで運ばせてもらいます」
こうして何事も無いアクトに抱えられ、自宅に無事帰り着いたのであった。視線が痛かったのは言うまでもない。
視点変更 sideアクト
「……そこの部屋、ベッドある」
「お、おう…」
周囲の目線に耐えながら、ハクアのプレイヤーホームにたどり着く。今日は何度もひどい目に合ったが、1,2を争う緊張感に襲われている。
い、いやだって、たとえ仮想空間とはいえ俺は思春期の高校生。こういう事に反応するなと言う方が無理な話だ。
寝室と思われる場所に入り、ハクアをベッドに寝かせる。内装は、全体的に白の目立つ簡素な部屋だ。ちらほら飾ってある動物のデフォルメ人形が姉さんの趣味と被る。きっと姉さんがあげた物だろう。
「……ありがと」
「い、いや、元は俺の渡したクッキーのせいだからな…」
とりあえず動けるようになるまで待つことにした。ベッドのそばに椅子があったので、そこに座る。
「…………」
「…………」
き、気まずい。何か話しかけようとしてハクアの方を向いたが、目に飛び込んできた光景に後悔した。
少し息を荒げたハクアが、いつも無表情な顔を少し赤らめながらベッドに寝ている。しかも僅かに服がはだけた状態で。
ハクアは戦闘法上、軽量防具を好む。つまり薄着だ。しかも今は麻痺で動けず、はだけた部分を戻すことも出来ない様子。
…状態異常のせいなのは分かっているが、非常にアレな光景に注視してしまう。
そして…軽く潤んだ目と目が合ってしまった。
「……アクト?」
「へ?あ、いや…」
つい言いよどむと、息の荒い自分に気付く。おいちょっとまて、何やってるんだ俺!?何で息荒げてる!?そこまで欲求不満だったのか!?
そんなアホな事を考えるうちに、少し違和感を感じる。
(…あれ?これってまさか……)
嫌な予感と共に、自分のステータスを開く。
状態異常・高熱(永続)高揚(永続)
解除法・プレイヤーホームのベッドで一定時間横になる
「…………」
お、俺もかよぉぉぉ!?
つい心の中で絶叫する。まさか渡した側にも影響が来るとは予想外にも程がある。しかも条件のたちが悪い…
「……どうしたの」
「いや、なんでもない…」
心配そうな雰囲気でこちらを見てくるハクアをはぐらかす。だからその目で見るなって!いつもとのギャップのせいで破壊力が!
「…………」
「…えっと、何だ?」
それでも視線を逸らそうとしないハクア。ふと何かに気付いたような雰囲気になる。
麻痺が治りかけているのか腕を上げる事が出来た彼女は…自分の横をポンと叩いた。
「……どうぞ」
「へ?」
「……状態異常、ついてる」
こいつ、こんな時に的確に勘づきやがった…!?
「い、いやけど…さすがに一緒にってのは…」
「……効率、悪い」
「さすがにまずいような…」
「……ここゲーム、何も出来ない」
「うっ…」
結局逆らえず、一緒に横になる。いや、こんな場面見られたら…
「――さん―――アさん!」
突如、部屋の外をドタドタと走る音と共に声が聞こえて来る。え、ちょ、やばいっ…!?
「――ハクアさんここですか!?アクトさんに気を付けてください、ホワイトデーの…おか……え……し…………」
バタンと激しく寝室のドアが開かれ、入ってきたのはハルカちゃん。
そして今の状況は、一緒のベッドにいる俺とハクア(服が乱れてる)、そして両者とも顔が赤く息が荒い。
…あ、オワタ。
「………オ、オタノシミデシタカー、オジャマシマシター…ア、アハハ……」
片言なセリフとともに扉を「そっ閉じ」される。どこからそんな言葉仕入れてきた!?
「ち、違う!!誤解だぁぁぁぁ!!!」
「こ、来ないでくださぁぁぁい!!!」
とにかく広まる前に、誤解を解かなければならない。全力で立ち上がり、逃げるハルカを追うのだった。
この日、とある掲示板に大きな騒ぎを生む書き込みが行われた。
『ホワイトデーに天災ちゃんがお持ち帰りされていた事案発生』
「………置いてけぼり」
アクトはこれの他にもいろんな気苦労を一日で受けました…うらやまゲフンうらやましい!




