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第二十二話 解散後の小話

今回は、お兄さんが何故二つもフラッシュダイブを入手して主人公に送り付けてきたのか、その真の理由が分かります!…え?どうでもいい?


実はこの話、一度データが消えたトラブルにより作者の心が折れかけました(白目)

『どうした?こんな所に一人で』


『……兄さん』


『違う、「お兄ちゃん」だ!言い直せ!』


『……やだ』


『くぅ、次のゲームは絶対負かせて呼び名を「お兄ちゃん」にしてやるからな!!』


『…………』


『…やっぱ今日は不満だったか。そりゃそうだよな、せっかく海に来たのにすぐ日陰で休まなきゃいけなかったしな』


『……私が最初に無理したから』


『…そっか。あーあ、早くVRゲームが出来ればなぁ』


『……VR?』


『そうだ、簡単に言うと、ゲームの世界をまるで現実のように遊べる体験型ゲームさ』


『……そこなら、私も皆と同じように遊べる?』


『あぁ、でも研究自体は進んでるけど実現は遠そうなんだよな…しかも高価そうだし…』


『……そうなんだ』


『あー、そうがっかりするな我が妹よ。もし売り出されたら、お兄ちゃんが全力で買ってきてやるよ!』


『……ありがとう、兄さん』


『…やっぱお兄ちゃんって呼んでくれないのな』


『……当然』


『とほほ…』









「ん?まだいたのか?」

「………アクト」


昔を思い出しながらぼーっと座っていたら、後ろから声をかけられた。場所は浜辺、時間は夕方(この世界の)だ。


「一体何を見て…おぉ、これは綺麗だな」

「………うん」


私が見ていたのは海だ。夕日が海面を照らして、神秘的な光景を演出している。

…ここまで頑張った運営さん生きてるだろうか?過労死してないだろうか?


「………楽しかった」

「だな」

「………現実では、こんなに遊べないから」

「……」


こういった風景を見てると、口が軽くなるのも仕方ない。勝手に動く口を止めようとは思わなかった。


「………遊んでも、すぐ休まないといけなくなる」

「体が弱いのか?」

「………ううん、体力がないだけ、絶望的に」


家族で旅行に行っても、友達と遊びに行っても、いつもすぐにばてて休憩を挟まないと倒れてしまう。


「………私が、皆のペースを崩してしまう。心配もかけるし、迷惑もかける」

「…それは」

「………皆がそう思わなくても、私が嫌だ」


若いとぶっ続けで遊びたくなるものだ。なのに私がいると、その皆の望むペースを崩してしまう。無理に合せても、倒れて遊びどころの騒ぎじゃなくなる。

そんな自分が嫌で、誘いを断るようになった。人との関わりも減らしていった。友人も自然と減っていった。


「………だから、今日は楽しかった」

「……」

「………こうやって皆と遊べたのが、楽しかった」

「……そっか」


こんな愚痴染みた話をちゃんと聞いてくれるこいつは、やっぱりこんな場面では気が利くのだろう。さすがは主人公タイプだ。


「…ここはVRとはいえ、所詮ネトゲだけどさ」

「………?」

「こうやって一緒に遊ぶ事くらいは出来る。皆も同じだ。だから、えっと…」


不器用ながら励ましてくれてるのだろう。そしてこういう奴に限って…


「…また一緒に遊ぼうぜ!!」

「……………」


欲しい言葉・嬉しい言葉をここぞと言わんばかりに放ってくるのだ。こうやって数々の女の子を虜にしてきたのだろう。私も今、危うく落ちるところだった気がする。


「……えっと、何か言ってくれませんかね?」

「………うん、また遊ぼう」

「おう!……ほー、珍しいな、パシャリっと」


珍しい?私がこうやって愚痴るのがだろうか?


「………珍しい?」

「あぁ、そうやって表情がはっきり笑顔に変わるのは初めて見た気がするからさ」


…笑顔?私が?


「………私、笑えてる?」

「あぁ、今までで一番良い笑顔だぜ」


頬に手を当ててみる。本当だ、緩んでいるのがわかる。

人付き合いが減って、友人も減って、固まってしまった表情が、だ。


「………本当だ、笑えてる」

「あぁ」

「………笑えてる、まだ笑えるんだ、私」

「…良かったな」

「……うん、良かった、嬉しい、すごくうれ……!」


…あれ、視界が滲んでいる。


「ちょ、おい何で泣くんだ!?」

「……だって、笑うのは数年ぶりで、嬉しくて…!」

「そ、そんなになのか!?そして嬉し泣き!?ちょ、こんな所見られたら誤解されるって…!」

「……う、うぅぅ………」


あぁ、泣くのも何年ぶりだろうか、もう思い出せない。しかもこんなくだらない事に泣けているのだ、私は。


「だ、大丈夫か…?」

「…ん、大丈夫、大丈夫だから…」

「そ、そっか、なら泣き止んでくれると嬉しいな」

「…うん、でも止まらなくて…ぐすっ」

「あーもう、こうなったら思い切り泣いちまえ!胸は貸してやる!!」


アクトが抱きしめてくる。普段ならアッパーカットで空の彼方まで飛ばすのだが、今回は素直に借りよう。


「う、うううぅぅぅぅ……」

「はいはい、よしよし…」









「…大丈夫か?」

「うん、大丈夫…もう平気」


長く使っていなかった感情の止め方が分からず、年甲斐もなく泣いてしまった…冷静になると、今すごく恥ずかしい状態かもしれない。


「大丈夫だから、そろそろ放してくれると嬉しい」

「あ、す、すまん!」


抱きしめたままだと、見られたらあらぬ誤解をされかねない。こいつの性質的に、油断は出来ない。でも…


「嬉しかった」

「…へ?」

「ありがとう」

「…あ、あぁ、役に立ったか分からないが、どういたしまして」


お礼は忘れない。でもこうやって女の子を落としてきたのだと思うと、何かむかつく。


「…で、何でアクトの前にいるハクアに涙の跡があるのかしら?」

「げぇ、シャロ!?こ、これには深いわけが…」

「げぇって何よ、げぇって!!問答無用!!」

「ぎ、ぎゃあああああ!?!?」


…気づいたら恒例?のおいかけっこが始まっていた。先ほど泣いていたのは見られていないようだが…何となく手助けはしない。


「………ぐっどらっく」

「お、おのれハクアぁ!!覚えてろよぉ!!ぎゃぁぁぁ!?」

「まちなさぁぁぁい!!!」


あぁ、何だか今日はいつもよりぐっすり眠れそうだ。必死な形相で逃げているアクトを見ながら、そう思えた。

昔はこの子も無表情かつ無口では無かったのですよ…あ、口調は素です。



それにしても、夕日に照らされた浜辺で、いつも無表情な美少女が目の前で涙目かつ満面の笑顔で「ありがとう」って言ってくれている様子を想像すると…ホワァァァァ!!!(大破


ふ、ふふ…あ、でもアクトは爆ぜろ又はそこ変われ(切実)

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