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第十八話 下準備

「アクトちゃーん!!」

「ぬわぁー!?」


イベントエリアに来て最初に待っていたのは、ないすばでぃなエルフによる熱い抱擁だった。…近くでハルカちゃんが唖然としてるけど、私は特に反応しない。いつもの事だから。

アクトに飛びついてきたエルフはアクトの姉のカリンさんである。防具を作ってもらってから何度か会ったが、大抵最初にアクトに飛びつくのでもう慣れた。


にしてもこいつは女性に抱き付かれる回数が多すぎじゃないだろうか…


「もふぅ…あら、その子は?」

「は、はい!先ほど仲間にもらいました、ハルカです!」

「そんな他人行儀に敬語使わなくてもいいわよ、もっと気楽にね?」

「う…敬語は素ですので…」


なんと礼儀正しい子だろうか。周りの変わり者達にも見習ってほしいものだ。


「…何で俺を見る?」

「………別に」


何でそんなすぐに視線に気づくんだ…





「あなたたちには水着の材料になる、海岸に居る「色クラゲ」の素材を取ってきてほしいのよ」


水着を作るには、欲しい色ごとにその色クラゲっていうエネミーの素材が必要らしい。青が欲しければ青い色クラゲ、赤が欲しければ赤い色クラゲといった感じだ。


「あとデザインに関しては今から一人ずつ希望を聞こうと思うわ。なければ…私が勝手に作っちゃいましょう」

「うーん、俺は特には…」

「………ギリギリのブーメラン」

「絶対嫌だぞ!?」


えー、絶対腹筋崩壊するからおすすめなのに…


「えと、本当に私の分まで作ってもらっても良いんですか?」

「いいのよ遠慮しない!今更一人分増えたくらいどうってことは無いわよ」

「ありがとうございます…うぅ、今日は感謝してばかりです」


こうやって小さな子(私じゃない)が喜んでくれると心が温まる。あとカリンさん、本音が口から液体として出てきてるよ。


「じゅるり…さて、シャロちゃん達はもう先に取りに行ってるし、さっさと話し合っちゃいましょう!」


…うん、希望は出しておこう。任せると嫌な予感しかしない。





「黒いの見っけた!そらぁ!!」

「………白発見、てい」


必要な色のクラゲを乱獲している。海岸がカラフルなクラゲで溢れているのは中々見物だけど、水着の犠牲になってもらおう。それにしても…


「付術士がいると、思ったより結構楽になるな」

「………だね」

「えへへ、支援はお任せください!」


攻撃力および防御力が目に見えて上がったのが分かる。簡単な回復も出来るようになるらしい。レベルが低くてもこれだと、高いレベル帯のボス戦では大活躍しそうだ。代わりに自衛力を犠牲にしてるので、あまり数は多くなさそうだが…


「盾がいつもより心強く感じるぜ!おっと、ハイスラッシュ!」


クラゲ自体もそこまで強くない。レベルの低い人でも楽しめるようにした結果だろう。まぁ油断して当たれば…


「あ、アクトさん後ろに!」

「え?ぬわぁ!?しししししびれれれれ……」


…ああやって高確率で麻痺をくらう羽目になる。幸い毒は無い。近くのクラゲを倒した後に近づく。


「たたたたすけけけ…や、やめろろろぉぉ」

「………つんつん」


痺れている足を突っつく。脚が痺れた時に突かれた時のアレに似た感覚が残るらしいので、遠慮なくつつく、楽しい。


「は、ハクアさんそろそろやめてあげた方が…」

「………状態異常回復」

「あ、すみません!キュア!」


無意識に回復を忘れていたこの子は将来有望だ。愉悦の味を知る日も近い。


「た、助かった…ハクアお前ぇ!!」

「………べー」


舌を出して挑発したら更にウガーってなってクラゲに八つ当たりしだした。ハルカちゃんがアワアワしてるけどすぐに慣れるだろう。この様子ならすぐに素材が集まりそうだ。

水着作ったら泳げるんだ…リアルでは海に行っても体力の問題でたくさん遊べないので、楽しみだ。


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