第十五話 打ち上げ
「では、俺達の勝利を祝って…かんぱーい!!!!」
「「「かんぱーい!!!!」」」
現在、とある酒場の一角を占領してわいわい騒いでいる。あの後、お兄ちゃんを瞬殺した私も手伝いに行き、2vs6で圧殺した。まだ始まったばかりのゲームでレベル差が小さかったのもあるが、この子達思っていたより結構強いのだ。実力で均衡して数で勝ればそりゃ勝てる。
「えーと…私のせいでこうなってしまい、申し訳ありません」
「わ、私たちはただ、シャロちゃんが居なくなって欲しくなかっただけで…」
今回の事件の根幹というか被害者と言うか、金髪の女性、シャルロッテさん…シャロさんか、彼女が頭を下げる。申し訳なく思っているのか、話に聞いた高飛車な雰囲気は今は見られない。
それに反論?するのは、緑髪のおさげでメガネな女性 (たしかミリアさん)…本当に、ここの人たちは属性盛りまくってる。
「おいおいシャロ、お前も被害者なんだしさ…そこは謝罪じゃなくて、別のだろ?」
「アクト…そうね、訂正するわ。皆ありがとう!!」
アクトがそんな言葉をかけると、シャロさんは明るめな笑顔になり、皆に感謝を述べた。もちろん私も含まれているだろう。…なんだか小恥ずかしい。
「ハクアもありがとな!お前のおかげだ!!」
「………別に」
こういう感情を持った時に話しかけてくるこいつは天性なのだろう、恥ずかしさが増してしまった…なんかむかつく。
「………てい」
「あだっ!?な、なにすんだ!?」
つい勢いで殴ってしまった。反省も後悔もしていない。恨みがましい視線を寄越して来ているが、他の女性たちにあっという間にかこまれていった。人気者だねぇ。
「…あの、ハクアさん、ですよね」
「………?」
そんな騒がしい様子を眺めていると、シャロさんが話しかけてきた。何の話かは、まぁ予想がつくだろう。
「今回は本当にありがとうございました。私たちが勝てたのはあなたのおかげです。」
「………私だけじゃない、皆も頑張ってた。」
「ええ、ですので一人一人感謝を述べてきているんです。」
「………ん、ならどういたしまして」
律儀で礼儀正しい…高飛車だって聞いて警戒していたけど、アクトの情報はあてにならない。
こういう感謝は双方にとって貰っておいても損は無い。そんな事を考えていると、シャロさんがクスクス笑いだした。
「………?」
「いえ、アクトから話は聞いていましたが…やっぱり可愛いですね」
随分恥ずかしい事をのたまってきた。これほど表情に出ない事に感謝した日は無い…と思う。
「………シャロさんは、高飛車だって聞いた」
「…アクト、後でお仕置きね」
仕返しに性格について触れると、相当怖い顔をして物騒な事を呟いていた。アクトめ、ざまあみろ。
「私だって、そんな会った初日から礼儀を崩すような真似はしませんわ。あと、ハクアさん…」
「………ハクアで良い」
「え?」
「………敬語もいらない」
こうやって礼儀正しく接してくれている彼女だが、良い人だという事は分かっている。やっぱ素で話してもらった方が、こっちも楽だ。
「そう、なら遠慮なく。ハクアも私の事はシャロって呼んで良いわ」
「………ん、了解」
「ふふ…では本題に入ろうかしら」
こっちも敬語は得意でなかったりするので助かる。すると、シャロさ…シャロは、真面目な雰囲気になって、本題に入った。
「私たちのパーティーに、入ってくれないかしら?」
そうだろうとは思った。パーティーの最大人数は6人で、アクトのよく一緒に活動してるパーティーは4人だ。固定パーティーの方が、連携も取りやすくて何かと便利だから、良い人と分かっている人に入ってほしいのは当然と言えば当然だろう。もう一人の助っ人にも声をかけたに違いない。
固定パーティーの人選というのは、人間関係という点においても結構大事だ。っここはネトゲ、良くも悪くも色んな人がいる。恐らく中心人物となっているアクトが推薦する人物だから、十分に信頼に値するというのが一番の理由だろう。でも…
「………今は、遠慮する」
「…理由を聞かせてもらっても?」
「………何となく」
「そ、そう…」
自分は本能最優先で動いている。その本能が、何となく今は参加したくないと言っているのだ。
でもここの皆が良い人で、自分が入っても溶け込めるのは分かる。だから…
「………もし、私の気が変わった時に、まだ空いていたら…その時はお邪魔するかも」
「…そう、でも早く決めないとすぐ埋まっちゃうわよ?何せあのアクトがリーダーのパーティーですものね」
「………その時は、その時」
アクトの事だ、どんどん仲がいい人(特に女の子)が増えて行くことだろう。そんな時が来たときに、まず空きがある可能性は皆無だろう。だが、何となく…それに近い事が将来起きる気がするのだ。何が起きるかは大体予想は付いているけど。
「シャ、シャロさん達…しゅ、主役なんですから、隅で話すよりこっちで話した方が…」
「二人とも、こっち来る」
「はいはい、わかったわよもう…」
シャロさんがやれやれといった様子で騒ぎの中心に向かう。私も呼ばれたが、あの中には入る自信がない…馬鹿騒ぎはキャラじゃないから…
「おいハクアも何やってんだ、こっち来いよ」
「………え、や、やめ…」
そんな事お構いなしと、女たらしハーレム野郎に哀れ連れ去られる。ちょ、もっと女性は丁重にだね…
「あっくとー!!」
「へ?どわぁ!?」
「………!?」
騒ぎの方へ連れ去られるのにささやかな抵抗をしていると、うさ耳の弓使いさんがアクトに突進した…ゲームで酔う事はさすがに無いから雰囲気酔いと言う奴だろうか?
というか今アクトは私と引っ張り合ってるわけで、そんな事したら私まで巻き込まれて…
ドササササッ
言わんこっちゃない、押し倒された。まったく、主人公属性というかラッキースケベ属性と言うか、こんな星の下に生まれた友人を持つと碌なことが起きない。
周りがシーンと静まり返っている。ああもう、間違いなく注目浴びてる。早く私の上からどいて欲しい。でないと…
「……あっ」
「………」
―――唇にある独特な感触と、さっきからうるさく鳴ってるハラスメント警告から現実逃避出来ないじゃないの。
「「「「きゃあああああああああ!?!?!?!?」」」」
悲報 主人公のファースト●スが奪われる。
おかしい、ラブコメ臭がする…




